ようやくお休み取れたので、日本に向かいます。
誰にもきちんと連絡してません。着いたら連絡します。
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フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会
(Chiesa di Santa Maria Novella)のドメニコ会に
パリから信じられないリクエストが届いたと
話題になっています。
パリにあるマイロル美術館(Musee Maillol)は
1944年に他界した
フランスの彫刻家アリスティデ・マイロル
(Aristide Maillol)の作品を収蔵する美術館ですが
常設展以外に各種の特別展を企画し
今回は「死に関するイコノグラフィー展」を
開催するに当たり
サンタ・マリア・ノヴェッラ教会に保存される
マザッチョ(Masaccio)の
フレスコ画「三位一体(Trinita')」の一部である
メメント・モリ(Memento Mori)の骸骨部分だけを
貸し出してくれといってきています。
マザッチョの「三位一体」はルネッサンス絵画で
遠近法を確立した作品で、
早逝した画家の傑作のひとつで
教会の壁にあたかも
奥行きのある礼拝堂があるように描かれたもの。
ヴァザーリも列伝の中で
「あたかも壁がくりぬかれたようだ」と記しています。
父なる神と、神の子イエス
そして精霊を表す白いハトが描かれ
イエスが架けられた十字架の足元には
聖母マリアとサン・ジョヴァンニ、
そしてその空間の最端には
このフレスコ画の依頼主である
Berto di Bartolomeo(ベルト・ディ・バルトロメオ)と
その妻Sandra(サンドラ)の祈る姿が描かれています。
そのすぐしたには当時取り外し可能な
掛け棚が据えられていたと考えられ、
それによってフレスコ画は祭壇画としての役割を
十分に果たしていたと考えられます。
そしてまさにこのフレスコ画の前で、
依頼主の葬儀が行われ、ミサが執り行われました。
フレスコ画の前の床面には
今もこの依頼主が永眠っています。
このフレスコ画の下に描かれている横たわる骸骨像は
カルヴァリオ(Calvario)に葬られたと伝えられる
アダムを暗示し、
またその丘で十字架にかけられるイエスの受難、
そして復活は人としての死を超えたものであるという
カトリック的な概念を包括しています。
上部の三位一体のメインに対して
下方の骸骨像は、観客から注目されることもなく、
だからこそ、展覧会に展示することによって
光を当てるべきというのが
フランス側の言い分ですが、
イタリア側はこの作品の一部貸し出しについては
非常に否定的です。
まずこのメメント・モリはひとつの単独作品ではなく
より大きな作品の一部であるため
切り離すことはできないというのが理由。
また骸骨像が表しているのは死そのものではなく
復活の「力」と「意義」であるので、
展覧会のテーマとは微妙に異なる上、
今回の展覧会はマザッチョのモノグラフィーでもなく
あえて貸し出す必要がないというのも理由のひとつ。
非常にもろいフレスコ画であり、壁から取り外して
移送するのは物理的に不可能であるというのも
貸し出し反対の理由。
1565年にヴァザーリによって塗りこめられ、
忘れ去られていたフレスコ画は
1800年代半ばに上層部のみ再発見されると壁から外され
同教会のファサード裏面を飾り、
ようやく1952年に下層部のメメント・モリが見つかり
1954年にひとつの作品として再びまとめられ
オリジナルの場所(現行の収蔵場所)に飾られますが、
1966年には洪水の被害も受けています。
技術的には不可能ではない貸し出しですが、
実現はなさそうな気がします。