山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

よいお天気の草鞋がかろい

2009-09-04 23:13:33 | 文化・芸術
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―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、10月26日の稿に
10月26日、晴、行程4里、都濃町、さつま屋

ほんとうに秋空一碧だ、万物のうつくしさはどうだ、秋、秋、秋のよさが身心に徹する。

8時から11時まで高鍋町本通り行乞、そして行乞しながら歩く、今日の道は松並木つづき、見遙かす山なみもよかつた、4時過ぎて都濃町の此宿に草鞋をぬぐ、教へられた屋号は「かごしまや」だつたが、招牌には「さつまや」とあつた、隣は湯屋、前は酒屋、その湯にはいつて、その酒屋へ寄つて新聞を読ませて貰つた。-略-

米の安さ、野菜の安さはどうだ、米一升18銭では敷島一個ぢやないか、見事な大根一本が5厘にも値しない、菜葉一把が1厘か2厘だ、私なども困るが-修業者はとてもやつてゆけまい-農村のみじめさは見てゐられない。-略-

早く寝たが、蚤がなかなか寝せない、虱はまだゐないらしい、寝られないままに、同宿の人々の話を聞く、競馬の話だ、賭博本能が飲酒本能と同様に人生そのものに根ざしてゐることを知る-勿論、色、食の二本能以外に-。

※表題句の外、「まつたく雲がない笠をぬぎ」など9句を記す


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