山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

いちじくの実や、やつとおちついた

2011-09-02 23:47:35 | 文化・芸術
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―四方のたより― 異常台風

台風12号の上陸もまぢかというのにずいぶんと蒸し暑い。
それにしても異常な進路、うろうろ、のろのろと、今年の台風は従来型からほど遠いのは、どうにも気にかかるが、そういった問題については、気象庁なども情報が乏しい。

<日暦詩句>
台風の所為で海上は荒れに荒れ、強風と豪雨が列島を広範囲に襲っているというのに、あろうことか今夜は、茨木のり子の「四海波静」を挙げる。

  四海波静 -茨木のり子

戦争責任を問われて
その人は言つた
  そういう言葉のアヤについて
  文学方面はあまり研究していないので
  お答えできかねます
思わず笑いが込みあげて
どす黒い笑い吐血のように
噴きあげては 止り また噴きあげる

三歳の童子だって笑い出すだろう
文学研究果さねば あばばばばとも言えないとしたら
四つの島
笑-エラ-ぎに笑-エラ-ぎて
三十年に一つのとてつもないブラック・ユーモア

野ざらしのどくろさん
カタカタカタと笑ったのに
笑殺どころか
頼朝級の野次ひとつ飛ばず
どこへ行ったか散じたか落首狂歌のスピリット
四海波静かにて
黙々の薄気味わるい群衆と
後白河以来の帝王学
無音のままに貼りついて
ことしも耳すます除夜の鐘

  -詩集「自分の感受性くらい」所収-S52-、初出S50.11「ユリイカ」


―山頭火の一句― 行乞記再び-昭和7年-236

9月2日、おだやかな雨、ことに昨夜は熟睡したので、のびのびとした気分であつた。
4時に起きて5時に食べ6時には勤行もすました、この調子で其中庵生活は営まれなければならない。
発熱倦怠、身心が痛む、ぢつとしてゐると、ついうとうとする、甘酸つぱいやうな、痛痒いやうな気分である、考へるでもなく考へないでもなく、生死の問題が去来する、‥‥因縁時節はどうすることも出来ない、生死去来は生死去来だ、死ぬる時は死ぬる、助かる時は助かる。‥‥
事実を活かす、飛躍よりも漸進、そして持続。
快い苦しみ、苦しい快さ-今日一日の気分はかうだつた-。
夕方、樹明さんに招かれて、学校の宿直室で11銭のお弁当をよばれる、特に鶏卵が二つ添へてある、飯盒を貰つて戻る、御飯蒸器では-飯釜を持たないから-どうも御飯の出来栄がよろしくないので。
ごろりと横になつて、襖の文字を読む、―一関越来二処三処、難関再来一関覚悟、
此家の主人が若うして不治の疾にとりつかれたとき書きつけたのださうな。

※表題句の外、1句を記す

09021
Photo/北の旅-2000㎞から―大沼湖-’11.07.24


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