あまねのにっきずぶろぐ

1981年生
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

Bite Marks

2017-08-23 12:52:58 | 随筆(小説)
かれはパンクスの脚を押しひらき、古いテレビ・アンテナのようにあれこれ調整し、尻がなんとなく箱の形に見えるようにする。

デニス・クーパー「クローサー」P20より

こんなにイメージしがたい小説を読むのは初めてかもしれない。
一体どうやれば尻を箱の形に見えるようにできるのか?
パンクスの尻をこのジョンは四角くできるのやろか。
小説というのは別に空間、景色、映像的なイメージが出来なければ駄作というわけでは決してないから別にイメージできなくてもええんだし、このデニス・クーパーという人の小説はあまりにもイメージできなさが才能のように感じる。
ぜんぜんと言っていいほど映像的なイメージが浮かんでこないのである。
しかし面白い。ゆっくりと読んではいるが。
そういえば俺の書くもんは空間的だと前に言われたことがある。
とても嬉しかった。そんなこと、言われたことがなかったから。
しかしそんな嬉しいことを言ってくれた彼とも俺はおさらばしてしまった。
俺はいつもそうやって、苦しみと悲しみが限界値に来れば簡単に人との関わりを断つ人間だからだ。
何人もの人たちと俺はネット上で同時に関わっていたが、すべての人間との関わりを辞めた。
そして俺はブログだけの空間に戻ってきたというわけだ。
後悔はしていないが、心残りは多い。
何故なら、俺が彼らを失うとはすなわち、俺が彼らによってでしか知れなかった自分を失うということだからだ。
これは彼らも同じだ。
彼らも俺と関わることでしか発見できなかった自分を永遠に失った。
俺らは、自分をこうして、亡くした。
亡くし続けているようなもんだ。
だからその悲しみはとてつもなく深い。
でも俺はもう、戻らないだろう。
戻れば俺は、ますます狂って行くしかない。
俺の背中にはもう、痛みが限界に来た歯形の痕が残されたんだ。
彼らによって。
彼ら全員が、俺の背中に永久に残る歯形の痕を残していった。
今でもズキズキと痛んでしかたがない。
そして俺も、彼らの背中ひとつひとつにいつまでも残る歯型の痕を残したはずだ。
俺はほんとうに彼らひとりひとりの背中を思い切り噛んだからね。
まるで自分の背中を噛んでいるような痛みだったよ。
俺はそれをやらないと、駄目な人間なんだ。
誰と関わっても、最後には痛々しい歯型の痕を残して別れる。
まるで俺のことを忘れてほしくてなくて、そんなことをやっている気分にもなる。
俺は俺のことを忘れてほしくないのかもしれない。
俺という悲しみが、存在していたということを。
俺は俺を忘れてもらって構わない。
でも俺の悲しみだけは、忘れてもらいたくないんだよ。
俺の悲しみは、俺だけのものじゃないんだ。
俺の悲しみは、おまえらのものなんだ。
それをわかってほしくて、俺はいつも彼らの背中に歯型の痕を残すんだ。
痛いから逃げる人間は大勢いる。
俺だって嫌になって逃げるよ。
噛むほうだって痛いし、噛みながらも噛まれているからね。
歯形を残せたなら、俺はなんとかほっとするんだ。
もうこれ以上は残す必要はないだろう。
ちゃんと残り続ける歯形を俺は残せたはずだ。
そう確信した瞬間に、俺は彼らとの関わりを一切断つのかもしれない。
俺は案外思い切りのいい竹を真っ二つに割ったような人間でもあるからね。
これ以上は不必要だ。そう確信したら、もうそれ以上は何もやらない。
俺は永久に、俺を喪い続ける。
彼らも永久に、彼らを喪い続ける。
その悲しみは、いつまでも残り続けるだろう。
それでいいんだよ。
俺はそれを望んでいるんだ。
いや、それしか本当は、望んじゃないのかもな。
知らねえけどよ。












「痕をつけてくれ」
「いつまでも残るようなやつを」

血が垂れているのさえいくつかあり、長く細い流れはかれにキラキラ光る安っぽい糸を漠然と思いおこさせた。

「クローサー」P19








Bite Marks - Atlas Sound






Bite marks
Trying to fill a hole in
My head my body
White marks

歯形
なんとか穴を埋めようとしているんだ
ボクの頭の ボクの身体の
白い痕