あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第五十四章

2020-06-16 06:27:20 | 随筆(小説)
神を知る者、神を喪いし。愛を知る者、愛を喪いし。私を知る者、私を喪いし。死を知る者、死を喪いし。そう出口の真ん中で、入口を永遠に喪う神、エホバ。
わたしは彼を、夜の海へ、誘う。
彼は、水辺に横たわっており、白い布に、包まれている。
わたしは彼の足元に立ち、彼を見下ろしている。
今、波は枯れ、水もない。
わたしは彼の白い皮を、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、剥がしてゆく。
両手で、彼の白い身を、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、剥がしてゆく。
そこに存在しているのは骨ではなく、一本の、巨大な白い骨髄。
くねくねとのた打つ蠢く滑らかでやわらかい一本の、白いコード(Cord)。
これは死体ではなかったのだ。
これは死体では…
これが、彼の、インティアリィアル(Interior)。
これが、本当の彼の姿。
一本の白い巨大なコードは、大体直径約一メートル。
長さは、まったくわからない。
何故ならその白い巨大なコードは自身を、縺れさせまくりながらのたうち回り続けて、常に動き続ける生きた白いコード。
わたしは彼の、末端と末端を、繋げなかった。
わたしの前には片方だけの、彼の末端が、わたしを見つめている。
彼のもう片方の末端は、口(女性器、Alpha)。
わたしの前に在る彼の末端は、ケツ(尻)の穴、即ちAnus(肛門)、(男性器、Omega)。
わたしは迷うことなく、その閉じた穴を、両手で抉じ開けながら、頭から減り込ませてゆく。
ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと、わたしは身をくねらせながら、彼のなかへ、入ってゆく。
ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと、わたしはわたしがわたしであったことを、喪失してゆく。
彼の中は、ぬるぬるとした粘液状の液体がわたしの身体を潤滑油として中に入って行きやすいようになっていて、わたしはこの穴から入ったことが正しかったことを確信する。
わたしはとうとう、全身を彼のなかへ挿れ、爪先までぬるっと入ったその瞬間、彼の肛門は閉じる。
中は、何も見えない。
わたしはくねくねくねくねと、身をくねらせて先へ進む以外はない。
息苦しくなって来る。
酸素が…酸素が足りない…
でも後戻りは、できない。
何故なら彼の内側があまりにも強く、わたしを抱き締めるように締め続けていて、わたしは後ろを振り向くことすら最早できない。
わたしは、苦しい…(わたしとは…?)
苦しい上に、悲しくなって来て、涙が止まらなくなってくる。
わたしは…わたしは…わたしはただ…彼の内側と、わたしの内側で。
本当の彼と、本当のわたしで、本当のセックスがしたかった。
出口の存在しない、そのなかで。















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