折り畳み傘を、探していた。
それは新しいやつだ。
ひどく、使いづらかったからだ。
今持っているものがね。
それに黒々としていて、あまりに黒かったんだ。
質感も、わたしは好きではなかった。
その肌触り、水を吸う男のように、それは水を吸う男のようでわたしは好きではなかった。
それを好きになることは、もしかしたら容易なことだったかもしれない。
開いたとき、わたしは必ず憂鬱となった。
見られたくはなかったし、見せたくもなかった。
これを差しているわたしの姿、顔の見えない、その半身を。
その闇のなかに飛んでいる鳥を知っているかい。
そこかららとごを抜いてご覧。
わたしはあれから、不眠なんだ。
夢を見れば、彼は必ず泣いている。
愛憎の心でわたしを見て、その想いを燃やした火で、彼は肺を温める。
そこには浮き輪が浮かんでいる。削られた芯を喪った浮き輪が。
気持ちが良いと、彼は言う。ここにはなんでもあると。
死のうとして、でもまだ生きている人たちとばかり接しているからね。
ここにはなんでもある。
すべてがないから。
すべて、失くした後だから。
彼はフレヴォを吸った後、ちいさな名もなき花に向かってニコチンを吐き、微笑みかける。
半分死に、半分生きた腐りかけのくさやの魚のような女に向かって。