リベラルくずれの繰り言

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少女像:職員への過剰な抗議はパワハラだ

2019-08-03 | 政治
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」で展示されている慰安婦を表わす少女像について、主催者への抗議の電話が相次いで「対応する職員が精神的に疲弊している」という(朝日新聞2018-8-3)。開幕した1日で約200件の電話があり、テロ予告や脅迫ととれるもの、職員の名前を聞き出してネットに書き込むといった事例があるという。
テロ予告や脅迫は明らかに犯罪だし、職員の名前をネットに書き込むことも許されることではないと思う。そこまでいかなくても、しつこかったり、語気を強めたりする事例が多いのではないかと想像する。テロ予告のような犯罪まで行かなくても、以前扱った「客によるパワハラ」と同様の問題がある。抗議をしてくる一般の人は「客」とは違うとはいえ、電話に応対しなければならない末端の職員は弱い立場にあるといえ、そうした職員をつるし上げるのはパワハラ以外の何物でもない。
県知事に抗議文を提出した名古屋市長の河村たかし氏は、抗議の電話が殺到していることについて、「それこそ表現の自由じゃないですか。自分の思ったことを堂々と言えばいい」と述べたというが、一般論として、電話に応対する職員に暴言を吐くことまでは表現の自由に含まれないと思う。抗議の電話そのものを否定することはできないが、抗議は節度をもって行なうべきだ。

トリエンナーレの芸術監督は「内容の変更も含めた対処を考えている」というが、その一番の理由は抗議電話が殺到したことによる職員の精神的な疲弊だ。これでは窓口の職員をいじめて疲弊させることで気に入らない展示は中止させる、という戦術を認めるようなものではないか。上記の客によるパワハラについて、産業別労組「UAゼンセン」は悪質クレームガイドラインをまとめているが、そこにもあるように、窓口の電話内容は録音するのが重要だ。そしてテロ予告や脅迫といった明らかな犯罪行為については警察への通報も含めて対応するべきだろう。(最近どこに電話しても事前に「この通話は録音しております」といった案内が流れるが、それも抑止効果になる。)

私だって各地に少女像が作られていることは面白くない。韓国の日本大使館前もそうだが、アメリカの各地に少女像が作られていることに至っては外交的に日本が負けているようで不愉快だ。だが今回は「表現の不自由展」という企画で、その企画展を見ようと思った観覧者だけが見るものだ。それに抗議するということは、「表現の不自由展」という企画そのものを否定することになる。「少女像」そのものについての意見とは別に、こうした企画展をつぶしてしまっては、日本はますます息苦しくなる。菅義偉官房長官は文化庁の助成金を交付しない可能性も言及したが、交付決定権をかさに展示内容に口出しするようなことも慎むべきだ。

追記:結局、「表現の不自由展」はテロ予告や脅迫などのため中止に追い込まれた(朝日新聞2019-8-4)。津田芸術監督もいうように、「電話による攻撃で文化事業をつぶせてしまうあしき事例を作ってしまった」ことになり、識者も「反対派の思うつぼ」と指摘する(同2面)。また、国の補助金は事業の後に支払われる仕組みになっているそうだが、記事も識者も指摘するように、補助金交付にあたって展示内容が「精査」されることは検閲そのもので、まさに「表現の不自由」につながるのではないか。
ある程度の抗議がくることは予想されていたのだから、少なくとも電話の録音は取っていると思うのだがどうだろうか。抗議そのものは「表現の自由」であっても、テロ予告や脅迫については警察に通報して厳正に対処するべきだ。

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