リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

原発処理水は韓国の理解を得て海洋放出せよ

2021-04-20 | 政治
福島の事故原発では原子炉内で溶けて固まった燃料が熱を放出し続けるので、それを冷やすために使う大量の水に放射性物質が混入し汚染水となる。建屋が壊れているためそこに地下水が流入するのでその量はさらに増える。放射性物質を除去する処理をした汚染水(処理水)でもトリチウムという水によく似た放射性物質は分離できずに残るので軽々に捨てるわけにもいかず、タンクに貯蔵することになるのだが、処理水は毎日約170トンたまるので、容量1000トンのタンクも1週間で満杯になってしまう(西日本新聞)。福島第一原発の敷地内には今やそんなタンクが1000基を超える(asahi.comの写真参照)が、それでも2022年秋には満杯になってしまう。これまで真摯な議論を避けてきた政府もいよいよ追い込まれて先ごろ海洋放出を決めた。
増え続ける処理水のために永遠にタンクを作り続けるわけにもいかないとなれば、やはりどこかで十分に薄めて海に捨てるしかない。(asahi.comの試算では、海洋放出してもタンクの増設は避けられないほどだというからなおさらだ。)2019年に原田環境相が「海に放出するしかない」と言った(BBC)のは批判を浴びて引っ込められたが、経産省の小委員会も2020年2月に有力視していた(上掲asahi.com)。やはり常識的には海洋放出しかないだろう。現にトリチウムが残る処理水の放出は世界各地の原発で普通に行なわれている。
だが原発事故を起こした東電に対する不信感は根強く、政府も公文書の隠蔽・改竄を反省しようともしない。そうした東電・政府に任せたら十分に処理されていない水が海洋放出されることにはならないか、安心できないのも無理はない。現に地元漁業関係者はもとより、国内でも韓国、中国、ロシアでも反発の声が上がっている。
ところがここにきて韓国外相が「国際原子力機関(IAEA)の基準に合う手順に従うなら、あえて反対しない」と海洋放出に理解を示した(朝日新聞2021-4-20)。その前提として、(1)日本政府が十分な科学的根拠を提示する、(2)韓国政府と十分に事前協議する、(3)IAEAの検証過程に韓国専門家が参加することが条件になる。
ここは韓国の協力を得て海洋放出を進めるべきだろう。私も以前からこれしかないとは思いつつ、東電・政府の手による海洋放出には大っぴらに賛成できずにいた。韓国が協議や検証に加わってくれるのは大歓迎だ。もちろん、韓国世論の目があるだろうから軽々にさあどうぞとはいかないだろうが、韓国の専門家が納得せざるを得なくなるくらい科学的に安全である根拠を固め、公開するべきだ。それくらいの覚悟がなければ海洋放出を許す気には私としてもなれない。韓国で政権交代があった場合にちゃぶ台返しをくらわないかなど、検討すべきことはあるが、ここは韓国外相の表明を受け入れるべきだろう。

追記:中国外務省によると、IAEAは、海洋放出問題を担当する作業グループに中国の専門家を招く方針だという(Newsweek 2021-4-26)。韓国はともかく中国となると、これまでの経験上、政治的な理由などで意地悪をしてくる可能性が高い。だから上記を書いたときにはあえて中国には触れなかったのだが、やはりこれもやむをえない。国内でさえ反対が根強いことを考えれば、IAEAの枠組みの中で、中国の専門家も納得させられるくらいの安全性の根拠を示し、公開する覚悟で臨むべきだろう。(ただ、最近中国がチャイナマネーにものを言わせて国際機関での存在感を高めていると聞く。IAEAそのものが中国に牛耳られいないかどうか、確認はしておいてほしい。)

追記2:「地元理解なき海洋放出」と題する記事があった(朝日新聞2021-5-31)。政府や東電に対する不信感から海洋放出に対する地元の理解が得られないのはたしかに問題なのだが、安全ではなく安心がかかっている以上、地元の反対がなくなることはないだろう。ここはやはり、生半可なことではゴーサインを出さないと思われる韓国と中国の理解が得られればOKということにしたほうがいい(政府も東電も、両国を納得させるよう本気で取り組むべきだ)。
それにしても、政府と東電は2015年8月に、関係者の理解なしには処理水を処分しない、と文書で県漁連に伝えていたそうだ。オリンピックもワクチンもそうなのだが、具体的な根拠に基づかずに願望で安易な約束をする為政者のもとでは信頼も何もあったものではない。

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