※前回の徳島の記事はこちら(36節・岡山戦、1-0)
※前回の町田の記事はこちら(35節・山口戦、0-1)
<前節からの変更>
徳島=アンダー代表に参加していた藤尾が帰還。それに伴いセンターフォワードを一美→藤尾へ代えたが、この1人だけの変更。出場停止明けの新井はベンチに留め置き、以上に伴いベンチメンバーも石尾、坪井、オリオラ・サンデーから微調整、長谷川雄や浜下が入る。
町田=4バック(4-4-2)へと変更。前節前半のうちに交代となった山口・中島をはじめ高橋・翁長と4人を代え、新たに奥山・太田宏介・安井(出場停止明け)・ドゥドゥが入る。2トップはドゥドゥと長谷川アーリアジャスールで、2センターバックは岡野・菅沼。ベンチには、警告4度×2で2試合サスペンドから明けた深津が戻ってきた。
押し迫ってきたシーズン閉幕、それに伴い人事面のニュースも慌ただしくなり。
町田も例外では無く、3年目の指揮を終えようとしているランコ・ポポヴィッチ監督の今季限りでの退任が発表される事となりました。
32節以降未勝利という現状の町田、通算成績も敗戦が先行(14勝9分15敗)し始めたとあり、昇格を目指す機運は尻すぼみとなっており。
それに拍車を掛けるか、ないしは「男気」という目に見えない効果が表れて反転攻勢に転じるのか。
いずれにせよ、残り試合がまだある状況で歩みを止める訳にはいかないクラブ。
逆に尻上がりの歩みで、そんな町田を順位で上回った徳島も、決して立ち止まる事を許されない立場にあり。
先日J2新記録となる引き分け数を達成という、他者から後ろ指をさされかねないニュースを作ってしまった中でも、可能性のあるプレーオフ圏に向かっていかなければならない。
様々な感情が交錯しかねない所ですが、その副作用である敗戦・失点の驚異的な少なさを盾とし、「我々のやっているサッカーは正しい」という信念が揺らぐ懸念は無いのが救いとなるでしょうか。
しかし残り4戦で、求められるのは結果のみというシーズンの状況。
立ち上がりこそボールポゼッションを高めつつ攻撃権を支配した徳島ですが、10分過ぎ辺りからその意識が影響したか、町田が逆にペースを握り押し込む展開に。
前半12分にミスから町田・平戸の縦パスで素早く運ばれての危機を招いたのがケチの付き始めとなり。
続く13分には2トップ(守備時、藤尾・児玉)のボランチへのパスコースの隠しが甘くなり、岡野→安井ドリブル→平戸縦パスで前線へ運ぶ町田、ドゥドゥのエリア内左からのシュートまで繋げます。(枠外)
この日は多くの機会をボランチを切る体勢で構えた徳島の前線でしたが、悪く言えば消極的ともとれるその姿勢は、結果に綺麗に表れてしまう事となりました。
そしてその曖昧な状態がバイタルエリアのスカスカ感を生み、そこで反則を犯して直接フリーキックを与えてしまう事数度。
19分に浮き球を収めた長谷川アーリアに対してカカが反則を犯した事で、中央・エリアからやや手前という良い位置でのFKを得た町田。
ここではキッカー平戸の直接シュートが壁を直撃して実らずも、25分にも同様に中央・エリアからやや手前という位置でドゥドゥがキープする所、杉本が倒してしまい反則。
今度はやや右寄りという位置で、左利きの太田宏がキッカーとなり、放たれたシュートはゴール左下を襲いGKホセ・アウレリオ・スアレスが何とかセーブ。
町田のダイレクトパス中心の運びに苦戦の色を隠せないという徳島でしたが、28分ついに破綻。
田向のパスが長谷川アーリアにカットされるというビルドアップの失敗から、拾ったドゥドゥがエリア手前まで運びボールキープ。
ディフェンスにこぼされるも長谷川アーリアがダイレクトでエリア内へ浮き球を送り、反転しながらシュートの体勢に入ったのは太田修介。
ここもディフェンスに阻まれましたが、再度カバーした長谷川アーリアの強烈なシュートがゴールネットを揺らし。
攻撃権を支配したうえで、相手の攻撃も阻むという良い流れで先制点に辿り着いた町田。
その直後の30分にも、敵陣左サイドでの太田宏のボール奪取から、ドゥドゥのドリブルシュートに繋げる(ブロック)など勢い盛んな町田。
一方の徳島はビルドアップも巧くいかず退潮著しいといった状況でしたが、それを振り払ったのが34分でした。
町田のプレッシングを受けつつの最終ラインでの繋ぎとなるも、GKスアレスの左へのフィードで脱出して前進、中央→右へとサイドを移して前線での組み立てへ。
エウシーニョのボールキープを交えつつペースを作り、白井のスルーパスにエウシーニョが走り込み、ディフェンスに遭いこぼれた所を拾った杉森がカットイン。
そして中央まで流れ、ブロッカー2人を振り切った末のシュートがゴール右へと突き刺さり。
悪い流れを払拭するような、最後尾からの攻撃でのゴールとなりました。
これで前線からの守備もある程度嵌るようになり、以降ボール奪取を頻発させた徳島。
ホームの雰囲気にも乗せられさあこれから、という状況で再度崖っぷちに追い込まれます。
38分の町田、菅沼の縦パスを平戸がフリック気味に前へ流し、長谷川アーリアポストプレイ→平戸ダイレクトでスルーパスという素早い攻撃。
徳島・田向の裏を取った太田修がこれを受け、そのままエリア内を突いてシュート。
キッチリとゴールに突き刺し、勝ち越した町田。
その一方で2失点に直接的・間接的に絡んでしまった田向。
2失点目の直後にゴールポストを腕で叩いたシーンが印象的でしたが、以降も40分に自陣で町田・長谷川アーリアにぶち当ててしまうというパスミスを犯して危機を招く(再度スルーパスに太田修が走り込むも繋がらず)など、そのプレーに冴えは見られず。
町田はペースを保ったまま折り返したい所でしたが、アディショナルタイムに徳島・藤尾のポストプレイに対し岡野が反則を犯し。
遠目の位置ながらも時間が時間なため放り込みを選択した徳島でしたが、それに対しポイントから中々離れなかった太田修が警告を受けてしまう事に。
しかも4枚目で次節出場停止と、非常に安い罰の受け方となってしまいました。
このFKで、キッカー児玉の放り込みを中央やや左でカカがヘディングシュートに持っていった(近くの藤尾がオフサイドを取られ無効に)事で、町田サイドは「何だかなあ……」という気分を持って前半を終えてしまったでしょうか。
ハーフタイムで、田向・杉本→新井・長谷川雄へと2枚替えを敢行した徳島、
精彩を欠いていた田向に代え、出場停止明けでリフレッシュしたような状態の新井を投入と、判り易い采配となりました。
前半終わり際の悪い流れを払拭したい町田、立ち上がりからセットプレーを交えて押し込み。
再び徳島の反則でFKを得ましたが、今度は左ワイド奥からという位置で、キッカー平戸の選択はエリア手前へのマイナスのクロス。
そして太田宏がダイレクトでシュートを放ちましたが、エリア内で徳島・新井がブロックで防ぎ。
開始5分間の町田の攻勢を凌いだ徳島でしたが、7分には前線で反則を犯したエウシーニョが、異議を唱えた事で警告を貰い。
反撃の機運を高めづらい状況でしたが、9分には今度は町田が反則した際、異議を唱えた高江が警告を受ける事態が。
間接的な警告が飛び交う試合絵図となり、ピリピリしたムードが漂います。(その前の8分に徳島は西谷がエリア内に切り込み、奥山に倒されるもノーファールという場面を経験)
その町田の反則による徳島の右からのFK、エウシーニョの放り込みをファーサイドで新井がヘディングシュートという、前半ATと酷似したシーンを生み出すも結果もオフサイドと同様となり。
その後の11分にも、ドリブルに入ろうとした児玉が町田・長谷川アーリアに後ろから倒され、直接FKを得た徳島。
前半とは打って変わったような試合絵図となりましたが、その中央からのキッカー長谷川雄の直接シュートはグラウンダーで壁の脇を抜いたものの、GK福井が正面でキャッチして防ぎ。
とにかく得点が欲しい徳島。
長谷川雄が最終ラインに降りた、後ろ3枚での組み立ての徹底という、これまであまり見られなかった方向へと舵を切ってのビルドアップ。
攻撃的なエウシーニョを常時前線へ位置取らせるためと割り切った感があり、それが結果にも繋がる事となりました。
最後尾の長谷川雄が長短織り交ぜたパスで組み立てる姿は舵取り役そのものであり、ペースを掴む事に成功します。
18分左サイドでのスローインからの攻撃、クロスがクリアされるも中央でエウシーニョが拾い、シュートを放つもブロックに当たりゴール左へ外れ。
しかしCKで継続し、一旦奪われるもエウシーニョが奪い返した所で、町田・安井に反則を受けてFKとさらに継続。
エウシーニョの向けた攻撃の牙に押し込まれる町田、というイメージを浮かべつつ、得た左サイドからのFKでキッカー児玉がクロス。
ファーサイド足下へのクロスを、内田が後ろからチャージを受けつつも跳び込んで合わせ、ゴールネットを揺らし。
今度はオフサイドとはならず、ついに追い付いた徳島でしたが、同時に痛んだ内田が倒れ込む事態も生まれてしまい。
何とか起き上がるも、ピッチ外からのスタートを強いられた内田。(直後に町田が敵陣へ運ぶという段階で復帰)
劣勢を跳ね返せなかった町田は、24分に太田修→平河へと交代。
その平河に裏抜けを狙わせつつ、右サイドを踏襲していく攻撃に活路を見出さんとします。
しかしその狙いが実を結ばないうちに、26分の徳島は町田のプレッシングをかわしたのち再び右サイドから仕掛け。
前線でのエウシーニョの動きは脅威そのものであり、児玉を経由し逆の左へとスルーパスが送られ、新井がクロス。
バイシクルで合わせにいったのは杉森で、ミートしたボールは町田・太田宏がブロックするも、跳ね返りを詰めたのはエリア内まで入っていたエウシーニョ。
ダイレクトで放たれた強烈なシュートがネットに突き刺さり、一気に逆転を果たした徳島。
再三町田ディフェンスを掻きまわした主役(エウシーニョ)の得点という、その劇場に相応しい一幕ともなりました。
今度は杉森が着地の際痛んでしまい、再度得点と負傷が同時にやって来たものの、それを補って余りある結果なのは変わらず。
その後ピッチに復帰した杉森ですが、28分に前線でボール奪取した際に再度痛みを見せた事で交代の措置が採られました。(浜下と交代・29分)
今度は窮地に立たされたのは町田の方で、35分に平河の裏抜けが(徳島・新井の)反則を生み、またもエリアから手前での直接FK。
ここで決めたい所でしたが、キッカー太田宏の直接シュートは壁に当たるという具合に、何本もあった直接FKではゴールは生まれず仕舞いとなりました。
その後守勢へと転じた徳島、38分にエウシーニョが、40分に藤尾が足を攣らせる事態を発生させるなど苦しさが滲み出。
その間の39分に町田は3枚替えを敢行。
鄭大世(チョンテセ)やヴィニシウス・アラウージョといったジョーカーとなり得る人材を投入し全てを託します。(それぞれ安井・ドゥドゥと交代、同時に太田宏→翁長へ交代)
苦境を強いられてもエウシーニョ・藤尾両名は引っ張る選択を採った徳島ベンチ。
43分に西谷→安部へと交代し、5バックシステム(3-4-2-1)へと変更し守備固めの意識を高め。
ATに入るかという所で、再び反則からFKを得た町田ですが、今回は右サイドからという事で(平戸が)クロス。
クリアボールをペナルティアークでヴィニシウスが拾う絶好機となりましたが、放たれたシュートはゴール上へと惜しくも外れ。
しかしヴィニシウスはブロックに当たったと主張、これがまたも異議による警告を生んでしまい、その流れは最後まで付き纏う事となりました。
ATの最中に最後の交代を使う徳島、ようやく藤尾がお役御免に。(一美と交代)
翁長のロングスローも交えつつ、強引に同点を狙いにいった町田。
しかし最後のフィニッシュとなった鄭のヘディングシュートも、威力に欠けGKスアレスにキャッチされて万事休すとなりました。
3-2のまま無事に逃げ切り、今季初の逆転勝利を挙げた徳島。
ここから昇格を狙うには劇的な事象が必須と思っていただけに、非常に大きな一日となったでしょうか。