※前回の金沢の記事はこちら(33節・甲府戦、2-2)
※前回の琉球の記事はこちら(30節・甲府戦、2-5)
<前節からの変更>
金沢=2人を変更し、左サイドバック=長峰→毛利・ボランチの片割れ=小野原→力安。メンバーのベースは前回観た甲府戦から変えておらず、その試合での底打ち感は間違いでは無かったようである。
琉球=前節から2人変更し、それに伴うポジションチェンジも。左SBの沼田が外れ、武沢が入って右サイドハーフに。そして左SBには福村(前節左SH)が、左SHには大本(同右SH)がそれぞれ回って埋める。そしてもう一人がFWの片割れの金井→野田。
新潟・横浜FCが決定付けるゲームに挑む一方で、下位では決定を阻止する戦いも行われた今節。
最下位の琉球は、前節の敗戦でとうとう残り3試合全勝が必須という状況となってしまい。
最後の勝利は31節(長崎戦・3-2)にまで遡らなければなりませんが、得点というファクターでも、32節(山形戦・2-2)を最後に7試合連続無得点の真っ只中。
救世主として期待されたサダム・スレイは、31節で余計な退場処分を受けてしまって以降人が変わったかのように得点出来ず、レギュラー陥落という有様に。
勝利のためには得点が不可欠なのは当たり前で、このままでは十中八九降格が決まってしまうという流れですが、ここからの土俵際での粘りを見せられるかどうか。
どちらもポゼッションに拘らないチームなので、お互いロングボールを蹴り合う入りとなり。
中々好機が生まれにくい流れのなか、琉球は前半3分に早くも(上原牧人の)ロングスローを敢行。
センターバックこそ上げなかったものの、「どんな形でも点が欲しい」意欲を具現化するに至ります。
アバウトな攻めの流れが終焉すると、琉球はボランチが降りての3人の最終ラインを作る形でのビルドアップを始め。
この「丁の字型」によりSBが高めの位置を取り、それに伴いSHが中央に絞るという基本形は、前回観た際と大きくは変わらず。
それに対する金沢は特に手段を採っていない風であり、立ち上がりのロングボール攻勢もあり、際立ったプレッシングを行えず。
試合前インタビューで柳下正明監督が「琉球の出方は(崖っぷちという状態なので)正直解らない」という旨のコメントをしていましたが、金沢選手全体が憚らずもそんな状態に陥っていたという印象でした。
その隙に攻め込む琉球、前半8分には李栄直(リヨンジ)が斜めの縦パスを打ち込み、それをケルヴィンがトラップで浮かせエリア内を突く動き。
ディフェンスに遭いこぼれた所を武沢が走り込みシュートにいくも、ボール越しでのブロックに阻まれ。
最終ラインでの組み立て+アバウトな攻めをマッチさせたような先制攻撃を見せます。
これで流れを得ると、前半12分には右サイドでスローインを受けた池田がすぐさまクロス、ファーサイドで野田がヘディングシュートを放つもGK白井がキャッチ。
14分には金沢のミスから敵陣で攻撃開始、ケルヴィンのエリア内へのスルーパスに武沢が走り込み、シュートしましたがジャストミート出来ずゴール左へと外れ。
この流れのなか先制点を取りたい琉球でしたが、逆の結果になってしまうのは低迷中の悲しい性でしょうか。
17分の金沢はGK白井のロングフィードからの攻撃、セカンドボールをダイレクトで繋いで前進し、エリア内左から松本大弥のクロス。
ファーサイドで放たれた林のヘディングシュートがゴールネットを揺らし、先制点を奪います。
ファーストシュートで得点に辿り着いた金沢を、垂涎の的で見るしかないといった琉球。
リードを奪われてしまった琉球は、焦りと戦わなければいけない状況に。
しかし幸い運にも恵まれ、中盤でパスを受けた野田が金沢・孫大河に倒されて遠目からのフリーキックを得たのが20分。
キッカー加藤の放り込みこそクリアされるも、左サイドで拾った大本からのクロス、これを野田が再びヘディングシュート。
ゴールに突き刺して同点とし、雄たけびを上げながらボールをセンターサークルに戻しにいきチームに活を与えんとする野田。
8試合ぶりの得点で、文字通り息を吹き返す事となりました。
その後も22分にコーナーキックから李がシュート(枠外)・23分に野田がミドルシュート(ブロック)と攻め立てる琉球。
その圧力に押され気味の金沢。
ここ最近は得点も量産して好調な攻撃陣でしたが、守備時と同様に曖昧な意識でいってしまったのが拙かったでしょうか。
中途半端なポゼッションによる攻撃が目立ち、さしたる好機を作れずに時間を浪費していったという感じに。
25分に右サイドでのスローインを直接エリア内へと送り、収めた林を経由して大石がシュート(ブロック)と、琉球同様にアバウトな攻めからは好機が生まれ。
似た者同士のチームスタイルとなった故に、それを避けたいという意識が生まれていた感がありました。
さらに不運も重なり、30分辺りで藤村が琉球・ケルヴィンとの接触で足を痛め、31分に倒れ込む事態となり。
プレーを続けた藤村でしたが、ベンチは大事を取って前半のうちに交代措置を採ります。
38分に須藤と交代で退く事となりました。(松本大弥がボランチに回る)
この試合におけるモチベーションの差が、そのまま内容に表れたかのようであり。
前半も終盤、勝ち越しを狙って攻め上がる琉球。
41分左サイドでスルーパスに大本が走り込み、入れ替わりでエリア内左奥を突いてマイナスのクロス。
ディフェンスの居ない所に転がるもターゲットも不在で、後方から加藤が走り込むも間に合わず。
良い攻めは出来るも、最後の所で運が足りないといった琉球。
恐らく無得点の間もそんな攻撃だったのでしょうが、その運が巡って来たのが43分でした。
再び左サイドを突いての攻めで福村からクロスが入り、クリアされたボールを大本が拾うと、エリア手前から果敢にミドルシュート。
これが頭でブロックにいった金沢・孫に当たってコースが変わり、GK白井の逆を突く形となってゴール左に突き刺さります。
いわば孫のフリックといった形のシュートで、とうとう幸運に恵まれた琉球が逆転、そのまま前半を終える事となりました。
共に交代無く(金沢は既に1枚交代済み)、後半開始。
リードを守る意識が強まると予想される琉球に対し、いかに金沢がそれを打ち破るかがキーとなりそうな予感。
その通りに、決してポゼッションは得意ではない金沢が主体的に攻撃する、というかせざるを得ないという絵図が描かれる事となります。
しかし迷いを見せている内に琉球のプレスバックを受け、ケルヴィンにボールを奪われるといったシーンを目立たせてしまい。
後半4分にはパスミスからカウンターも受け、野田にミドルシュートを浴びる(GK白井キャッチ)など、欲しいフィニッシュでも後れを取り。
やはり最終ラインから繋ぐとなると、相手のブロックを崩す術が決定的に足りない金沢。
相手の硬くなる中央の守備を受け、比較的薄いサイドからの前進を余儀なくされるという印象はこの日も変える事が出来ません。
それでも毛利・須藤の居る左サイドを主体に好機を作り。
11分、パスを受ける須藤に対し琉球は上原牧・武沢がサンドして奪わんとするも、取りきれず毛利が拾って前進。
ここはシュートまでは繋げられずも、続く12分には毛利のボールキープに対して琉球は武沢・加藤が立て続けにアタックにいきましたが、かわされて危機に。
エリア内へのスルーパスに杉浦恭平が走り込み、ゴールエリア間際でシュートを放ったものの、GKダニー・カルバハルのブロックに阻まれます。
何とか防いだ琉球でしたが、元来ポゼッション主体の攻撃サッカーを貫いてきたチームだけに、それ故のディフェンス面の脆さが露わとなった2シーンでした。
それを隠すべくの追加点が欲しい琉球は15分、野田がミドルパスを右サイドで収めてカットイン、そのままエリア内を突き。
ケルヴィンのポストプレイも挟んで中央まで流れ、シュートを放ったものの金沢・毛利のブロックの末にGK白井が抑えて3点目はならず。
金沢はその前の14分に2枚替えを敢行しており、大石・杉浦恭→平松・豊田へと交代。(須藤が左SH→右SHへ)
フィニッシャーの豊田の投入で反撃意欲を高めんとしますが、ボールを前に運ぶ力は変わる事は無く。
依然として琉球の前線からの守備に苦しみ、さしたる好機を作れず持ち腐れとなります。
一方、その前線の守備でさんざん動き回った琉球・ケルヴィンは、何度もボールカットを見せる八面六臂の活躍。
勢い余ってか、22分に金沢のゴールキックをブロックした事で警告を貰う一幕もありましたが、ご愛敬というものでしょう。
体力を吐き出した(と思われる)末に25分に交代となりました。(人見と交代)
29分には再度カウンターの好機が訪れる琉球、クリアボールを拾った野田が単騎突撃し、エリア内右を突く決定機に。
切り返しで金沢・庄司をかわしにいき、その間にGK白井が前に出たのを受けてループシュートを放ちましたが、ボールはゴール上へと外れてしまいモノに出来ず。
どうしても追加点が取れないまま、功労者の野田も交代となります。(30分・サダムと交代、同時に武沢→田中へと交代)
一方の金沢も同時に、毛利・林→高安・丹羽へと2枚替え。
前線の運動量を保ちにいった琉球でしたが、ここからプレッシング意欲が曖昧となり、金沢のビルドアップを許すシーンが膨れ上がり。
それ程この日のケルヴィン・野田の存在は大きかったという事でもありますが、プレスを躊躇う選手を見ての、ピッチサイドのナチョ・フェルナンデス監督の叱咤の声も目立つ事となります。
しかし金沢もボール保持重視の攻撃は見るべきものが無く。
フィニッシュは38分に、右サイドからクロスを上げるかという位置で須藤が強引に遠目から放ったもの(枠外)ぐらいといったこの時間帯でした。
琉球は43分にラッキーな形(金沢・孫のクリアをブロック→孫に当たってゴールライン割る)でCKを得ると、早くもコーナーでキープする体勢を見せます。
意地でもリードを守り切るという思惑なのは当然で、それが果たせなければ降格が決まってしまうこの試合。
44分には琉球の反則で止まったのち、李がボールを蹴り出したために遅延行為で警告。
アディショナルタイムには、GKカルバハルもFKを中々蹴らなかった事での遅延行為で警告を貰う破目となりましたが、形振り構ってはいられないという終盤の琉球。
自慢だった得点力も失われた(?)サダムも、ロングボールの収めという形でチームに貢献していきます。
金沢の最後の好機は45分で、右サイドで松田・須藤が組み立てたのち奥から松田がクロスを上げ、ファーサイドで平松が折り返し。
そして落下点に高安が走り込んでシュートしましたが、琉球・加藤がブロックで跳ね返し。
決死の守備を見せた末のAT突入となりましたが、この日の金沢は攻撃機会が決定的に少なく、その後は好機が生まれない流れとなりました。
そしてそのまま試合終了。
勝利は実に9試合ぶりとなった琉球。
前日に20位の群馬が敗れたものの、勝ち点差は5なので依然として全勝が必須条件なのは変わらず。
それに加えての他力本願と厳しい戦いは続きますが、果たして土俵際での奇跡は生まれるかどうか。