※前回の大宮の記事はこちら(37節・栃木戦、3-1)
※前回の山口の記事はこちら(35節・町田戦、1-0)
<前試合からの変更>
大宮=2人を変更。そのうちの1人が出場停止の栗本で、彼の居たボランチには大山が入る。もう一人が4日前(33節・山形戦、1-1)ハーフタイムで退いた小野で、彼の左サイドバックには茂木。11人中8人が35節以降スタメン継続と、残留に向かって固定メンバーで突き進むのみといった格好か。
山口=チームトップの出場時間を誇る佐藤謙介が出場停止となり、こちらも彼を含めて2人変更。穴の開いたボランチの一角には、前節左センターバックの前が一列上がって埋め、菊地が左CBに入る。もう一人がGKで寺門→関。サブには約一年間の離脱を経て戻って来た河野の名前が。
残り試合も少なくなっていき、残留決定に安堵するクラブの姿を見るという恒例行事の時期に。
山口のそれは38節(群馬戦・6-1)で、大量得点で決めるという胸すく試合を演じ、それまでのうっ憤を晴らす形となりました。
一方の大宮、あと1勝で残留が決まるという状況まで辿り着き。
4日前の水曜の試合、終盤に追い付いての引き分けで勝ち点1をもぎ取る形と、まさに白兵戦の様相でこの時を迎えた状況。
ホーム・NACK5スタジアムという絶好の舞台で決める事が出来るかどうか。
試合が始まると、大宮は右サイドからのスローインの連続で前進していくという、相馬直樹監督の率いるチームらしい姿を見せ。
形振り構わずという白兵戦に相応しい入りとなると、見事に相手の山口をそのペースに巻き込む事に成功したでしょうか。
前半3分空中戦を経てボールがこぼれると、柴山のダイレクトでのスルーパスが前掛かりとなった山口の右サイド裏を綺麗に突き、走り込んだ富山からクロス。
ニアサイドで中野が合わせヘディングシュート、ゴールネットを揺らし、少ないタッチ数による前進を得点で締め。
ファーストチャンスが見事に先制点を叩き出しました。
出鼻を挫かれる格好となった山口は、4分に梅木がエリア手前からヘディングシュートを放ち(GK志村キャッチ)一息つく事に。
そしてボールを保持しての反撃体勢を築かんとしますが、思うようにいきません。
大宮は最終ラインまでプレッシングにいく事は稀で、その分ポゼッションは上がるものの、一列前へと運べばすかさず素早い寄せが待ち受けており。
そのため普通にパスを繋いでいては好機を作る事が出来ず、かといってリスキーな選択肢を採るには、早々に取られた先制点のシーンが頭を過るという状態だったでしょうか。
一種の混乱状態が生まれていたのか、最終ラインの形も安定せず。
高橋が右SBのような位置取りの4バックのように可変するのが基本形なはずですが、そこに前が降りてきたり、ないしはミシャ式のような形を取ったりと短い周期で様変わり。
敵陣ではサイドチェンジを多くして活路を見出さんとするも、中々実らない山口の攻撃。
すると大宮へとペースが移り、後方での細かい繋ぎを経てのロングパスで裏を取られるという、前への意識が強いチーム故のピンチの作り方をしてしまい。
17分には矢島慎也の左→右への対角線のロングパスが柴山に渡り、そのままドリブルを経てミドルシュートを放つ柴山。(GK関キャッチ)
そんな不安定な状況が、そのままスコアにも直結し。
18分の大宮は再び少ないタッチ数での前進、右サイドからのスローインで岡庭が長距離を投げ入れて山口の裏を突き、富山の落としを拾った中野がドリブルという単純明快な流れでエリア内にまで進入する攻撃。
そして放たれたシュートがゴール左へと突き刺さり、この日2点目を挙げた中野。
早々に2点リードを奪った大宮、残留決定に向けムードを高める事に成功します。
その後反撃したいがままならない山口に対し、ひたすら裏狙いで中野を走らせる攻撃を見せる大宮。
山口はそれをGK関の飛び出しで何とか防ぐというシーンが立て続けに描かれる等、前掛かりな山口の裏を突くという狙いを徹底し、嫌なプレッシャーを与え続けます。
そんな大宮の思惑を何とか掻い潜り攻め込む山口。
28分、ここも中盤の攻防からサイドチェンジを絡めて大宮のプレッシャーをいなし、左から高井のクロスをファーサイドで吉岡が折り返し。
そして橋本がシュートを放ちますが、ゴール前に居た味方の池上に当たるという具合に、不運も絡み実りません。
自陣でコンパクトな4-4-2ブロックを敷く大宮。
そのため普段は超攻撃的SBとして跳梁を見せる山口・橋本も、そのプレッシャーに対し思うようにプレー出来ず。
多用するサイドチェンジが巧く繋がった時は好機が生まれるも、そこからクロスが入れば……というのが関の山だった前半の山口。
それが防がれれば、変わらず続けられる大宮の裏狙いにヒヤリとさせられるという流れで時間が過ぎ去っていき。
最後は大宮のブロックの外でボールを回している内にアディショナルタイムは終了となり、前半を終えました。
流れを変えたい山口は、ハーフタイムで高橋→成岡へと交代。
これで前がディフェンスラインに入る……だけでは終わらず、4バックへとフォーメーションを弄り。
CBが菊地・生駒、SBは右が前・左が橋本という布陣で、梅木1トップ・池上トップ下とした4-2-3-1へとシフトしたでしょうか。
そんな変化の効果が表れる前に、いきなり後半1分に大宮が決定機。
ロングパスの跳ね返りをキープし、繋ぎを経て矢島慎の縦パスを受けた中野がエリア内を突き。
そしてシュートが放たれましたが、オフサイドを告げる笛に救われます。
その後も大宮は押し込み、4分にはフリーキックから、キッカー大山のクロスに袴田が合わせヘディングシュート。(枠外)
8分には大山のボール奪取から中野がドリブルで中央を運び、ラストパスを受けた柴山がエリア内右からシュート(ブロック)とフィニッシュを重ね。
山口は大宮に類似した4バックとした事で、可変によりギャップを作り易くする事でビルドアップの円滑化を図らんとしますが、中々果たせなかった立ち上がり。
11分には小島のボール奪取から鋭いカウンターも浴びる(パスワークを経て小島が左サイドをドリブル、グラウンダーのクロスに富山が跳び込むも僅かに合わず)など、依然として大宮の狙い通りの展開が描かれ続けます。
しかし15分、中盤で大宮・岡庭のパスミスを拾っての山口の攻撃。
池上からパスを受けた成岡が思い切ってミドルシュートを放つと、ブロックを掠めてゴール左へと突き刺さり。
早めの時間帯で1点差に詰め寄り、希望を繋ぎます。
その後は縦関係となるドイスボランチを中心に、田中が至る所に顔を出してボールを引き出す事でペースを掴む山口。
17分には田中のエリア内へのスルーパスに走り込んだ梅木がシュート。(枠外)
20分には左サイドで橋本のロングパスを前線で受けた田中から攻撃、高井のクロスはクリアされるも田中から再度クロスが入り、ファーサイドで受けた吉岡の戻しを前がシュート。(枠外)
前線に人数を掛けられるようになり、フィニッシュにも繋げられるという具合に文字通り活性化していった攻撃。
押し込まれる大宮は、23分に交代カードに手を掛け。
矢島慎・富山→武田・河田へと2枚替え、柴山が右サイドハーフ→左SHへとシフトします。
これで再び前線でプレッシャーを与えにいった大宮。
迎えた26分、スローインで投げ込まれたボールを河田がダイレクトで裏へ浮き球を送り、そこへ中野が走り込み。
先に入り込んだ山口・生駒が頭で触るも、これが短くなって中野が拾いにいく際どいシーンとなりましたが、GK関のブロックで何とか防ぎます。
すると交錯があったかどうかは不明ですが、走り込んだ中野がエリア内で足を抑えて倒れ込む事態となってしまった大宮、再度交代カードを切る事となりました。
吉永が投入され、本来のSBでは無く入団当初の登録ポジションだったFWにそのまま入る事に。
フォーメーションを弄った山口、後半のビルドアップは3枚の最終ラインを徹底し、そのテーマは橋本を前方に位置取らせる事だったようで。
右SBにシフトした前は上がらずにその最終ラインの右を担当、つまりは左肩上がりの陣形。
そのうえで前述の縦関係のボランチと併せる事で、自然と3-1-6のような形が攻撃時には出来ていたでしょうか。
30分前後からようやくその形が馴染んで来たようで、攻撃機会を重ねて押し込んでいきます。
30分には橋本のドリブルで陣地を奪い、一旦奪われるも成岡のパスカットから再度繋ぎ、その成岡がミドルシュート。(大宮・柴山がブロック)
33分には生駒の縦パスから池上→吉岡と渡り、右からカットインした吉岡が中央からシュート(大宮・新里がブロック)とフィニッシュも重ね。
そんな攻勢のなか35分、再び大宮の裏狙いのパスに、中野と交代で入った吉永が走り込み。
そして防ぎに出て来た前・GK関と交錯するという近似的なシーンが生まれ、拾った武田がゴールが空になった隙を突いてロングシュート。
これがゴールに吸い込まれたものの、交錯のシーンで反則を取られてしまい3点目とはならず。
危うく追加点の献上により折角の反撃ムードが萎む所だった山口。
その後35分に高井→沼田、40分に梅木・池上→岸田・河野と、前線に交代カードを費やしていきます。
ボール支配する山口に対し、ブロックを崩す事無く守り切りの姿勢を見せる大宮という図式の終盤戦。
その中で43分の山口は大宮の攻撃を自陣で切った事で、成岡のスルーパスに岸田が走り込むという毛色の違う好機が生まれましたが、GK志村の飛び出しに阻まれます。
ディフェンスラインが整う前に……という機会が臨めない展開だっただけに、願っても無いシーンでしたがシュートは撃てなかった山口。
そしてATに突入すると、万策尽きたかのように大宮の攻撃ターンに移り変わり。(大宮はATで大山→田代へと交代)
敵陣深めでボールキープの姿勢を見せると思いきや、左サイドでキープする河田が絶妙の切り返しを見せ、エリア内へ流れてシュート(枠外)というあわやの場面を作ります。
その後吉永に対する山口・成岡の反則で、直接FKの好機まで得た大宮。
キッカー武田が直接シュート、壁を抜いたもののゴール正面でGK関にキャッチされて実らず。
これらの大宮の攻撃で時間を使われてしまった山口、最後にコーナーキックを得て、GK関が前線に上がるという諦めない姿勢を見せるのが精一杯となりました。
そしてそのCKで反則を取られた所で試合終了の笛が鳴り。
2-1のまま逃げ切りを果たした大宮、無事にJ2残留を決定させた一日となりました。
それでも残留争いは2年連続で、さらに言えば3年前は昇格争いを演じていただけに隔世の感があり。
浮上の切欠を掴むにはどうすればいいのか、というのはJ1時代でも重くのしかかっていたテーマだけに、解決策を見出す事は出来るでしょうか。