<両軍スタメン>
- 両チームの選手名はyahooスポーツナビに準拠。
- コイントスでコートチェンジし、↓とは逆のコートで前半スタート。
前回のEUROの記事 -準決勝・スペインvsフランス(2-1)
栄光のグランドファイナル。
準々決勝以降、強豪しか残っていないという状態に相応しいカードとなりました。
6戦全勝でここまで昇り詰めたスペインと、接戦に次ぐ接戦を逆転の連続で制してきたイングランドの対決。
派手な試合前セレモニーに彩られながら、迎えたキックオフの時間。
イングランドのキックオフから始まると、GKまで戻してロングフィードという手法で幕を開けた試合。
これまでスペインの試合ばかり観て来たためか、日本で見慣れているはずのその絵図も何処か違和感を覚えるものであり。
強敵相手故にセーフティにいく事を優先したでしょうか、その通りに立ち上がりの3分間はお互いさしたる好機の無い時間帯に。
前半4分、左サイドでショーのボール奪取から、攻撃の中心であるベリンガムにボールが渡ったイングランド。
しかし彼のボールキープも、スペインの素早い寄せの前に発揮できず奪われてしまい。
ここからスペインへと針が傾く展開となり、ガッチリとボールを支配してイングランドを自陣に押し込めます。
お馴染みであるラポルテ・ノルマンのセンターバックの持ち運びも絡め、イングランドの前線の守備を無力化しに掛かり。
そのイングランドの守備は、4-4-2の基本布陣ながら、2トップはフォーデンがボランチの片割れをマーク・ケインがセンターバックへチェイス(ただし強度はそれ程でも無い)という分業制。
状況次第でベリンガムがCBへプレッシャーを掛け、その際に空いた右サイドはショーが前に出るというプレッシングの体勢。
しかしスペインの伝統であるポゼッション能力の高さの前に、ボール奪取どころか十分な規制すらままならない時間が続きます。
スペインは押し込みによりコーナーキックに持ち込んでも、焦って連続してクロスを入れるという事はせず、ボール確保によりあくまでペースの維持に努める立ち回り。
イングランドと手法は違えど、こちらも決勝戦故の慎重さが垣間見えていたでしょうか。
12分に左からウィリアムズのカットインシュート(ストーンズがブロック)で初フィニッシュと、攻勢を維持した割にはやや遅く。
15分にイングランドが、この日初ともいえる攻撃機会(ウォーカーが右ポケット奥を突いてマイナスのクロス)でCKを得た事で、スペインのターンを終わらせ。
スペインと同じくボール保持の時間を高めに掛かります。
17分スペインのゲーゲンプレスを受けながらの繋ぎで、戻しを受けたストーンズはさらに浮き球のパスで一気にGKまで戻す事を選択。
これを収めたピックフォードも当然ながらロングフィード、しかし結果的にスペインのプレッシャーを呼び込んで前へ送る形となり、ベリンガム落とし→ショーのサイドチェンジを経て好機到来。
サカが右ハーフレーンからエリア内へ切り込み、そのままポケットを抉ると見せかけて戻し、そして中央からライスがミドルシュート(ロドリがブロック)と最後方からの組み立てでフィニッシュまで持っていく事に成功します。
中心選手と目されるベリンガム、モノが違うと思わされたのが20分の場面で、左サイド中盤でボールを持ち。
ボールキープによりルイスを引き付けながら、中へのパスを意識させる事でカルバハルの目線も操ってワイドを開け、そこへ走り込むショーへスルーパス。
1人で複数人を困らせる高次元のプレーを目の当たりにしましたが、ここはショーが受けたパス地点がタッチラインを割ってしまい好機とはならず。
しかし依然として守備時は、スペインのボール保持に難儀するシーンが続き。
特にウィリアムズという矛が活かされる左サイド(イングランドから見て右サイド)の押し込みを受け、サカがウイングバックの位置に降りての5バックとなる事もしばしばあり。
ボール保持もままならなくなるイングランド、23分にはスペインのプレッシャーを受けたフォーデンがバックパスをミスし、オルモに拾われスペインのショートカウンターに。
ボールキープを経て託されたヤマルが右ポケット奥を突いてシュート(グエヒがブロック)と、スペインの武器である両翼の突破も目立たせてしまい。
決勝故に審判も難しいコントロールを強いられたでしょうか。
25分のイングランドの攻撃、ケインが中央でドリブルに入るも、こぼされた所でルイスを削ってしまい反則・警告を受け。
30分にはスペインの攻撃で、クリアボールを拾ったオルモが前進する最中、ライスへのチャージで反則・警告。
お互いオフェンスファールで警告が出された事で、これまでの場とは一味違うという雰囲気に。
そんな絵図もあり、時折ペースの乱れが垣間見えるスペインですが、やはり根底がしっかりしているチームは強いというべきか。
35分前後から再度、立ち上がりのような攻勢へと突入。
敵陣でサイドを振りながらのパスワークに持ち込み、両翼の威力でアタッキングサードを脅かす攻撃を繰り広げ。
35分の左CKから、ショートコーナーからの中央への戻しを経て、オルモがミドルシュートを放ち。
しかしエリア内でケインがこれを足下でカットと、攻撃がままならない状況で、守備面で存在感を発揮せんとするセンターフォワード。
相変わらず守勢が続くイングランドですが、そんなキャプテンの思いには応えなければならず。
42分ライスのパスカットから攻撃機会が訪れ、スペインのゲーゲンプレスもありベリンガム→ケインへのパスは遮断されるも、拾い直したベリンガムが左→右へのサイドチェンジで包囲網を突破。
そして受けたサカはここも縦突破をチラつかせながらカットイン、メイヌーを経由して中央のケインに預けんとしますが、このパスもカットされて実らず。
しかし45分敵陣でベリンガムがカルバハルからボール奪取、やっとショートカウンターの好機が訪れ。
そのまま左奥から入れられたグラウンダーのクロス、中央で受けたケインがシュートと、とうとうCFにフィニッシュが生まれたもののロドリがブロック。
しかしこぼれ球を拾いにいったウォーカーがウィリアムズに倒された事で、反則となり右ワイドからのフリーキックで継続。
ここからキッカー・ライスのファーへのクロスがこぼれた所、フォーデンが左ポケットからシュート(GKシモンキャッチ)と、終盤で得点の匂いが高まってきたイングランド。
しかし結局スコアレスから動かず、前半終了となりました。
スペインは先程シュートブロックしたロドリが(ラポルテとの交錯で?)痛んで倒れ込むシーンがあり、その影響かハーフタイムで選手交代。
ロドリ→スビメンディへと交代し、最後となるか否かという45分を戦う事となります。
ビルドアップの際にアンカーを務めるロドリが退き、どういう構成となるか注目されたスペイン。
それを確かめるに間も無い後半2分でした。
ルイスが最終ライン右へと降りて3枚での繋ぎの姿勢を取るスペイン、これによりカルバハルが前に出る事で、ベリンガムはルイス・カルバハルのどちらをチェックするか迷いが生まれ。
その隙を突くようにルイス→カルバハルへパス、ベリンガムが追い付く前にさらにカルバハルは右足アウトによるワンタッチでのパスという具合に翻弄して敵陣へ運びます。
このパスを受けるヤマル、さらに入れ替わりで前を向く事で縦に速い運びを完成させると、カットインで中央へ流れて左ポケットへパス。
広大なスペースを送られたこのボールに、ウィリアムズが走り込んだ末に放ったシュートがゴール右へと突き刺さり。
最初の変化を見事に結果に結び付け、スペインが先制に成功しました。
スコアが動き、混乱状態が続くイングランド。
4分、ノルマンがロングパスで一気に前線へ届けると、そのまま浮き球を操って運んでいくスペイン。
やや乱れた所を拾ったウィリアムズ、エリア手前からまたもシュートを狙うも、縦パス風になってエリア内のオルモに収まり。
しかし逆に決定機となり、そのまま左へ流れ角度を付けて対角線を狙ったシュートを放ちましたが、ジャストミートせずゴール右へと外れ。
その後はイングランドもボール保持により落ち着きを取り戻さんとしましたが、満足に攻撃できず。
スペインのボール保持に対しても果敢にハイプレスを掛けるものの、8分にはGKシモンがそれを縦パスでいなし。
受けたモラタのポストプレイを経てスビメンディがドリブルに入った所、反則で阻止したストーンズが警告と、どうにもやる事が巧くいきません。
すると待ち受けていたのはスペインのショートカウンターで、10分パスカットしたカルバハルがそのまま右からカットインし、ミドルシュートを放ちますがグエヒがブロック。
続く11分には縦パスをカットしたルイスから、パスを受けたウィリアムズのミドルシュートがゴールを襲いますが、左へと外れ。
何とか流れを変えたいイングランド。
16分、とうとうキャプテンのケインを交代させるという決断を下し。
ワトキンスを同ポジションで投入し、ゲームキャプテンはウォーカーに託されます。
19分、GKピックフォードのロングフィードが一気に右奥を突き、走り込むフォーデンの前でククレジャに拾われるも奪い返すフォーデン。
戻しを経てサカからのパスを中央で受けるベリンガム、反転しながらのトラップでカルバハル・スビメンディの2人を剥がした末にミドルシュート。
しかしこの高等技術からの強烈なフィニッシュもゴール左へ外れてしまい、同点とはなりません。
おまけにこれによりロングパス一本で好機を作らんという意識へ移ってしまい、簡単にボールを失うという時間帯に。
スペインも23分にモラタ→オヤルサバルへ交代と、こちらもCF兼キャプテンのモラタが退く事に。
直後の24分、そのオヤルサバルの前からの守備によりボール奪取、CKへ持ち込むという具合にしっかりと交代選手をパワーに還元させ。
このCKから何度もクロスの爆撃をゴール前へ送り、GKピックフォードがそれを跳ね返し続けるなど、プレッシャーを与えていくスペイン。
イングランドは25分、さらにベンチが動きメイヌー→パーマーへと交代。
これによりポジションチェンジが絡んだ(ベリンガムがボランチへ、フォーデンが左サイドハーフへ回る)事で、スペインは守備が曖昧になったでしょうか。
直後のゴールキックでのロングフィードから、カルバハルがクリアミスした所をすかさずワトキンスがシュート。(カルバハルがブロック)
ミス絡みのフィニッシュが生まれた事で混沌とする展開。
続く27分、スペインはパスカットしたスビメンディがそのままエリア内へスルーパスと、一気に好機を作らんとし。
そして走り込んだオヤルサバルがシュートを放ち、GKピックフォードがこれをキャッチすると、直接前線へスローして届けた事で薄い守備を突く格好となったイングランド。
右寄りで受けたベリンガムに対しククレジャが潰しにいくも、奪いきれなかった事でポッカリ空いた右サイドを突く状況が生まれ、サカが右ワイドを突いてカットインからエリア内中央へパス。
そしてここまで上がって来たベリンガムがポストプレイで後方へ叩いた所に、走り込んだパーマーがミドルシュートで一閃。
ブロックを掠めた事もありゴール左隅へと突き刺さるボール。
布陣変更を経て、投入した駒が同点弾を齎すという采配ズバリな格好となったイングランド。
当然ながら、イングランドは一気呵成に逆転を狙いにいき。
しかし得点を齎した右サイド偏重の攻撃となり、サカを中心としてアタッキングサードを突くものの、直ぐにその流れは途切れてしまいます。
すると再度スペインのボール保持により、守勢の時間が長くなる。
体力面の不安が露わとなる時間帯で、やって欲しくない(と思われる)立ち回りをみすみす許してしまう結果となり。
イングランドは交代以降、ベリンガムが若干前に出た4-1-4-1にも見える布陣でスペインの最終ラインからの組み立てを阻みにいき。
インサイドハーフというべき立ち位置のベリンガム・パーマーの2人でスペインのドイスボランチを掴まえる姿勢を採ります。
しかしその狙いも空しく、ポゼッションによる攻勢に入るスペイン。
戻して作り直すシーンを多く作り、ウィリアムズが中央~右へと流れる状況も混ぜつつ、イングランドの体力・神経を奪っていきながらゴールを狙う状態へ突入します。
(38分にノルマン→ナチョへと交代)
止む無く自陣でブロックを固めるイングランドですが、その狭い所も突きに掛かるスペイン。
37分に中央を前進するウィリアムズ、戻しからオルモの浮き球パスを収め、すかさずエリア内へと叩いた所にオルモが走り込み。
そしてさらにワンタッチで流した末にヤマルのシュートが放たれ、GKピックフォードがビッグセーブで防いだものの、決壊間近といった印象を残す好機となり。
迎えた41分、最終ラインから緩めの縦パス攻勢で中央を運ぶスペイン。
ルイスのパスはあろう事か主審の股を抜くというものとなるなど、狭い所を抜く意識の徹底を経て敵陣へ運び、オヤルサバルがポストプレイで左へ叩いた所にククレジャが走り込み。
そして入れられるグラウンダーのクロスを、踵を返してエリア内に進入していたオヤルサバルが脚で合わせてのシュート。
ゴールに突き刺さり、こちらも途中交代のオヤルサバルが決める格好で勝ち越しを果たします。
緩急を付けられての前進に、体力消耗もあり(オヤルサバルのオフサイドをアピールする以外)成す術が無かったというイングランド。
残り時間は少ないものの、諦める訳にはいかずイングランドのキックオフ。
例によって戻し→GKピックフォードロングフィードで運び、落としから好機が生まれる事となり。
ボールキープするベリンガムの縦パスがエリア内へ入り、フリーで受けたワトキンスが前を向く決定機になりかけましたがスペインはこれも素早く対応してクリア。
これにより左CKとなるも、その前に両チームともに選手交代が挟まれます。
スペインがヤマル→メリーノ・イングランドがフォーデン→トニーへと交代し、セットプレーの攻防に。
上げられたキッカー・パーマーのクロスを、中央やや遠目でライスが合わせヘディングシュート。
GKシモンのセーブで浮いたボールを、さらにグエヒが詰めてのヘディングシュート。
GK不在のゴールに決まったかと思われたこのフィニッシュも、オルモの頭でのブロックに阻まれ決められません。(さらにライスがヘディングシュートで追撃も枠外)
1点もののディフェンスで、ゴールゲッターのようなガッツポーズを見せるオルモにより、いよいよ勝利への雰囲気が高まってきたスペインサイド。
結局この攻防が、イングランドの最後の可能性あるチャンスとなりました。
突入したアディショナルタイムは、焦りからかイングランドの反則が目立つ展開(ワトキンスがナチョへの反則により警告)となり、好機の数自体が少なく終わり。
そして目安時間の経過(4分)により、決着を告げる笛が吹かれました。
全勝優勝という結果を叩き出したスペイン。
不本意なものに終わったカタールW杯からの復権が無事果たされたその姿は、「無敵艦隊」と形容されるに相応しいものとなり得たでしょうか。