活動停止を強いられ、上位を狙うという体勢から一転、建て直しを図らなければならなくなった柏。
ただでさえGK中村をはじめ、ディフェンスの選手に故障者が続発し苦しいシーズン運営を乗り切らんとしていた所、更なる追い撃ちを浴びる事となりました。
直前に控えていたルヴァンカップ決勝も翌年1月に順延、残りのリーグ戦で再び戦闘力を充電させて挑む事となるでしょう。
その戦闘力の象徴といえるのがFWのオルンガで、前年J2で猛威を振るった得点力はJ1でも発揮され、どのチームにも脅威となって得点ランクトップを走っています。
このずば抜けたFWが居れば、無理にボールを握るという事もする必要は無く、カウンター戦術が冴える。
この日もそんな展開となりました。
そんな柏に対し、立ち上がりから鹿島はボールを握っての主体的な攻撃を繰り広げます。
サイドバックだけでは無く、ビルドアップの流れでセンターバックも盛んに敵陣まで上がり、柏を押し込んでいきます。
前半6分、右サイドで小泉のドリブルから攻撃、上田のスルーパスが土居に渡りエリア内へ。
土居の横パスがエリア内中央に出て絶好のシュートチャンスとなりましたが、撃ちにいったエヴェラウドがファン・アラーノと被ってしまい、足を振り抜く事は出来ず。
この試合でも感じた、攻めながらも良くない流れを醸し出すシーンとなった鹿島。
一方の柏、11分に相手コーナーキックからカウンター攻撃を仕掛けるも、シュートまではいけず。
オルンガを徹底的にチェックされ、中々良い形での攻撃を作れません。
よって自身でボールを繋いでの攻撃を余儀なくされ、それにより鹿島に攻撃権が偏る試合展開。
それでも19分に最終ラインから繋ぎ、瀬川のグラウンダーでのサイドチェンジでの崩しを経て、最後はオルンガがシュート。(ブロック)
鹿島が主導権を握るも、ゴールは割れないまま飲水タイムへ。
すると明けた直後は柏のターンとなり、26分に敵陣深めでのボール奪取からCKを得ます。
キッカーのクリスティアーノは、エリア手前へのクロスというサインプレーを選択し、北爪がボレーシュート。
放たれたシュートはゴール左へ外れるという軌道でしたが、あろう事かレオ・シルバがブロックしたボールがゴールに吸い込まれ、柏が先制。
いかにもオウンゴール臭い得点でしたが、記録は北爪の得点となりました。
この北爪が、登録上は右SBながらも盛んに前線で攻撃に加わるシーンが目立った柏。
というより柏全体が、4バック(4-2-3-1)の登録とは一変して、3バックでの戦いに変形していました。
右が北爪・左が瀬川というウイングバックの形で、守備時は5バックになって鹿島にスペースを与えず。
ここら辺は相手の長所を消す事が主体のネルシーニョ監督の手腕が発揮された所でしょう。
鹿島は3バックの相手に苦戦気味という印象で、後半の4敗のうち2敗がそれ(大分・札幌)であり、十分な研究の成果の表われとなったでしょうか。
2011年に「J1昇格→J1優勝」という流れを演じた柏、その当時の監督もネルシーニョ氏。
そのため再現を期待する声が開幕前後に高まったものの、それは果たされず。
前線のマンパワーを最大限に生かすサッカーを展開し、J1でもその脅威を見せているものの、果たして柏のサッカー的に進化しているのか。
監督人事に失敗→J2降格という2018年のシーズンを経て、チームを救うべく再就任となったネルシーニョ氏。
その手腕を見事に発揮し1年でJ1復帰という並びになりましたが、如何せん年齢的に古稀を迎えるネルシーニョ氏、クラブとしての発展性の面では疑問符は付いたまま。
乱暴に言えば「困ったときのネルシーニョ頼み」というイメージを定着させてしまうような起用であり、今後危機に苛まれた際はもうその手段も使えないでしょう。
未だルヴァンカップという目標が残っている今季ですが、それ以上に未来への道筋を得る事は出来ているのか。
それが為されなければ、ネルシーニョ氏がチームを離れた際、三度のJ2降格が現実的になっても何ら不思議ではありません。
(まあ最初の政権時と違って、ヘッドコーチの井原正巳氏が監督経験を得ているという点で後任の選択肢はありますが)
さて先制した柏ですが、以降も5バックのような振る舞いで鹿島の猛攻を凌ぎ。
逆にリードした事で余裕が出来たか、カウンターでゴールに迫る場面も作っていきます。
33分、GKキムスンギュのロングフィードをオルンガが直接収めてドリブル、クリスティアーノが彼からパスを受けてエリア内からシュート。(GK沖セーブ)
44分には瀬川が左サイドから縦パス、オルンガからクリスティアーノに渡ると、広大なスペースへとクリスティアーノがスルーパスを送りオルンガが受ける絶好機に。
しかしオルンガのドリブルシュートはGK沖がセーブ、その後ボールを繋ぎオルンガがヘディングシュートに持っていきましたが、ゴール左に外れ。
ポゼッションvsカウンターの典型図を描きつつ、前半を終了します。
後半巻き返したい鹿島ですが、後半2分に再び柏がカウンターで、オルンガのシュートに繋げる(ゴール左へ外れる)場面が。
しかし以降は柏に攻撃権を渡さずに攻勢。
4分のCK、クリアされたボールをエヴェラウドが直接シュート、GKキムスンギュがセーブしたボールを上田が詰めにいきましたがオフサイド。
8分には左サイドでスローインからパスを繋ぎ、受けたエヴェラウドがカットインからミドルシュートを放ちますが、ゴール上に外れてモノに出来ず。
前半同様に柏を押し込み攻撃、そしてシュートまで繋げていく鹿島。
それが実ったのが11分で、敵陣で三竿が拾い、左サイドからレオ・シルバがシュート気味にクロスを入れます。
中央でエヴェラウドが僅かに合わせ、GKキムスンギュがセーブしたものの、右にこぼれたボールをアラーノが拾い折り返し。
これをセーブしようとしたキムスンギュ、弾いたボールがゴール方向へ向かってしまいゴールイン、柏の先制点同様オウンゴール臭くありましたが同点となった鹿島。
尚これもアラーノの得点となりました。
その後はベンチワークも経て膠着状態に。
13分に柏は瀬川→仲間へと交代。
鹿島は3枚替えを敢行し、17分に上田・アラーノ・小泉→伊藤・遠藤・広瀬。
相変わらず、鹿島は主体的に敵陣に押し込んで攻撃、その間に柏がカウンターを狙うという流れ。
飲水タイムを挟み、このぶつかり合いは次第に柏に有利になっていきます。
オルンガを狙ったロングパス一本から好機に繋げていく場面が目立つようになる柏。
そして30分、GKキムスンギュのロングフィードを江坂が落とすと、拾ったオルンガがそのままドリブルで一気にエリア内右へ進入。
そして中央へと切り返しシュートを放つと、ゴール右へと突き刺さり。
誰も止められないという印象を強烈に残す、オルンガの単騎でのゴールとなりました。
これで鹿島は動揺したのか、直後のキックオフでは三竿がキックミスであっさり攻撃権を失う始末。
何とか反撃しようと、35分には右サイドから広瀬のクロス、ニアサイドで伊藤の落としを経て土居がエリア内右から再度クロス。
ファーサイドで山本が折り返し、これを遠藤がボレーシュートに持っていくも、ボール右へと外れてしまいます。
しかし尚も柏の縦に速い攻撃が猛威を振るいます。
36分、右サイドで北爪のドリブルからクロスが上がると、ファーサイドで受けた仲間がシュート。(ゴール上へ外れる)
そして38分、ここもロングパスをオルンガが落とすという明快な打開から、今度はクリスティアーノがドリブルで前進してエリア手前右から豪快にシュート。
GKもどうしようもない程の豪快な弾道でゴール左へと突き刺さり、追加点を得た柏。
マンパワーによるカウンターの恐ろしさを存分に見せ付けました。
2点差を付けた柏、40分に江坂→神谷に交代。
神谷が果敢にプレスを仕掛けてフレッシュさを見せ付ける一方、総攻撃に出るしかない状況の鹿島。
尚も柏陣内で押し込んでいきますが、やはりどん詰まりになる事数多。
そしてとどめはやはりカウンターからで、アディショナルタイム。
CKからクリアボールを神谷が拾い、一旦はこぼされたものの三原からスルーパスを受けて再度ドリブル。
そして単騎でエリア内左へと進入し、そのまま巻くシュートを右サイドネットへと突き刺して4点目。
神谷の前へと向かう姿勢が、ご褒美となって表れた得点でしょうか。
試合はそのまま1-4で終え、柏が活動停止明けの初勝利を挙げる試合となりました。
来季以降の発展性という点では個の力を活かした得点が目立ったため疑問符が付くものの、現状は暗雲を振り払う事が何より重要な立場だったため、最良の結果となりました。
ルヴァンカップは最後の最後という日程になりましたが、それまでにチーム力を上げていきたい所でしょう。
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