<両軍スタメン>
- コイントスでコートチェンジ。
開幕前に、「今季はパスサッカーを目指す」という趣旨の発言をしていた北九州・田坂和昭監督。
前の働き場であった栃木ではパスサッカーのパの字も無い、ガチガチの「ストーミング」スタイルをメインとして戦っていただけに、果たしてその成果はどうなるか。
これは要チェックしなければ、という勝手な思いを抱きつつ視聴。
そうは言っても、栃木以前に監督を務めた際(福島・大分)にはある程度の割合でパスを繋ぐチームを作り上げていた田坂氏。
難題に挑むのは初めてでは無いので、発言の通りパスを繋ぐスタイルを落とし込むのか。
それとも発言自体がブラフで、栃木時代の放り込み+プレッシングのサッカーを前面に押し出すのか、とても興味がありました。
この日は風が強かった事もあり、試合前にはコートチェンジが行われ、風上に立った前半の北九州。
そしてその風を気にしての立ち回り、つまりロングボールの蹴り合いというお馴染みの光景となった立ち上がりの数分間。
ここまでは栃木時代を思い出させるサッカーという印象を強く残し。
一方の讃岐は、新戦力のベテランサイドバック・金井を軸にしての右サイドアタック。
アタッキングサード近辺まで持ち込むと、その金井はエリア内右つまり右ポケットへ小さい浮き球を送り、そこに選手を走らせるという攻撃を繰り返します。
クロスでもスルーパスでも無いこのボール、何らかの意図があっての事でしょうが結局はフィニッシュには繋げられず。
しかしそれが明るみになる前に、前半9分試合は動きます。
風を利用しようという北九州に反し、先に最終ラインでショートパス主体のビルドアップの姿勢に入った讃岐。
それを狙われ、川崎のバックパスのズレを岡田に、よりによってエリアラインのほぼ上でカットされてしまいます。
そしてそのままゴールへ向かわんとする岡田を金井が腕で倒してしまい、反則・PKという大事故に繋がってしまう事となりました。
当然ながら異議を唱えるも判定は覆らず、金井に警告が付き出され(エリア内での決定機阻止か、異議でのものかは不明)、そしてPK。
これを岡田がゴール左へと蹴り込み、GK高橋拓が反応するも届かず。
先制点は北九州に入りました。
追う立場となった讃岐。
最終ラインから繋ぐのは変わらずも、それでも敵陣では速めに縦に運ぶ姿勢で好機を作り。
いわばパスサッカーと放り込みの中間といったスタイルでしょうか。
敵陣深め右サイドでは、前年もそうであったように、10番の選手(川崎)がロングスローを入れるという珍妙な攻めも導入し。
2センターバック+ドイスボランチでのビルドアップの典型例のように、SBを前に行かせるスタイルの讃岐の攻撃。
それを補うように左サイドハーフの森、FWの片割れの後藤が降りて出口役を務めるという具合に、前に運ぶのにはそれ程困らず。
敵陣に入り込むと、ボランチも積極的に前線に加わりチャンスに絡みます。
29分長谷川隼の持ち上がりから左へ展開、臼井のキープを経由してリターンを受けた長谷川隼がエリア内へラストパス。
受けた後藤がシュートを放ったものの、村松が顔面ブロックで防ぎ決められず。
ロングボールへの依存が強かった北九州も、時間が進むにつれて地上でのパスで前進する割合を増し。
試合前のスタメン予想で4-2-3-1と表記されていた通り、平原が中盤に降りてパスワークに絡む振る舞い。(yahooのスタメン表では4-4-2)
それでもアタッキングサードでは、野瀬・岡田という強力なSHを前面に押し出す攻撃が目立ち。
39分にはその野瀬のカットインで得た右コーナーキック、キッカー岡田のクロスをファーサイドで上形が折り返し。
そして中央から村松がシュートと、クロス攻撃のセオリー通りにフィニッシュを放つも枠を捉えられず。
結局前半は1-0のまま折り返し。
どちらかと言えば讃岐の方がパスサッカーの趣が強く、個人的な試合前の予想からは外れたというような展開でした。
しかしどちらもフィニッシュの本数自体は少なく終わり。
ともにショートパスを繋いで攻めようとする機会はあれど、それが途中で繋がらずの繰り返しで時間を費やしてしまうという展開も見られました。
讃岐の監督は米山篤志氏で、前年はJ2町田で緊急的に1試合指揮を執った(ランコ・ポポヴィッチ氏が警告4度でベンチ入り停止となったため)経験があるも、実質的には今季が初の監督業。
放送席の談では、「シュート数の面でトップ争いをしたい」という旨のコメントをしていたとの事であり。
米山氏の現役時代といえば、長らくヴェルディのCBを務め上げて来た経歴。
その全盛期(2000年にはCBで警告0度・フェアプレー賞を達成)には、総監督として指揮を執っていたという異質の存在である李国秀氏が居り。(1999~2000年)
その李氏も、1試合にシュート数20本という目標を掲げる程の人物であり、その時に受けた影響は少なからずあるでしょう。
そしてヴェルディの伝統であるパスサッカーが絡み、ゲーム支配・攻撃サッカーという理想に繋がって来ると推測します。
しかしこの日の讃岐に、そのシュート数は膨らまず。
ポゼッションは高まっていたものの、それ故にフィニッシュに辿り着けないというお決まりの症状も生んでしまっていたようでした。
さて幕を開けた後半、コートが逆になり、今度は讃岐が追い風となり。
その影響がモロに現れたのが後半2分で、奥田の裏へのロングパスに対し北九州はGK加藤が前に出てヘッドでクリアに入り。
しかしこれを空振りしてしまった加藤、エリア内にこぼれるボールに赤星が走り込むという危機を招きます。(DFのカバーでシュートは撃てず)
そんな風を気にしながらという北九州に対し、讃岐は後半もパスサッカーで攻撃権を支配に掛かり。
5分にはGK以外全員が敵陣に入ってパスワークで攻撃、金井が右ポケットを突く浮き球パスを送ったのち、パス&ゴーで最奥へと走り込み。
そして江口のリターンを受けにいった所、乾のチャージで倒されて反則(乾に警告)、右CKに近いという状態でのフリーキックとなります。
キッカー江口のクロスはGK加藤に跳ね返されるも、逆サイドでの後藤のクロスから、ファーで奈良坂胸で落とし→長谷川隼ボレーシュートという流れるようなフィニッシュ。
しかしGK加藤のファインセーブに阻まれ同点ならず。
その後も10分に金井が例によって右ポケットを突く浮き球パスを送るなど、前半の通りの姿勢を見せます。(恐らくは北九州の左SBがCBタイプの乾だったので、その対人能力をそらすための振る舞いだったか)
劣勢となった北九州、ベンチも先に動き9分に岡野・平原→井澤・中山へと2枚替え。
これにより野瀬が平原の位置、つまりトップ下orセカンドトップへとシフトして中山が右SHとなりました。
パスサッカーという要素でも上回られている状況の北九州。
その流れを固定化させるように、14分には乾のラフなロングパス一本が決定機を生み出し、左サイドで受けた野瀬がカットインでエリア内を突き。
そして讃岐ディフェンスの決死のブロックをかわした末に、中央からシュートを放ちましたが、決まったと思われたそのシュートはゴール右へと外れ。
流れを変える追加点が欲しい展開だけに、痛い逸機となりかけました。
讃岐ベンチも動き、18分に赤星→森本ヒマンへと交代。
いかにもフィジカルマンというヒマンの投入で、圧を強めに掛かったでしょうか。
19分には江口のボール奪取から長い攻め、クロスを上げては北九州が跳ね返しという攻防を繰り返し。
セカンドボールを拾い続け、左右から総計6本もクロスを供給する攻めを見せるも、フィニッシュには繋げられず。
前節に「相手(沼津)の連続シュートを5連続ブロックで防ぐ」という話題を提供した讃岐、この日は攻撃で話題を作らんとしているかのようでした。
しかしヒマン投入により、彼をターゲットにしたロングボールの割合が増えていく変節が緩やかに行われる讃岐。
その攻撃ではセカンドボールを巧く拾えず、それにより攻撃機会も減っていきます。
その間隙を突くように北九州の反撃が炸裂したのが25分。
ゴールキックでのロングフィードの跳ね返りを繋ぎ、一旦は高吉の中山へのパスがカットされるも、そのこぼれを拾った野瀬がドリブルで急襲。
そして右ポケットを突いてシュートを放ち、GK高橋拓がセーブしたこぼれ球を尚も自ら詰めた野瀬。
ゴールを奪いスタンドに向かって雄たけびを上げ、貴重な追加点を齎しました。
直後に上形→高へと交代。
丁寧な繋ぎを見せていた讃岐に対し、泥臭さと推進力でスコアを動かした北九州。
対照的な結果を受けた事がショックだったのか、以降讃岐の攻撃は極端に雑になり。
勢い付く北九州のプレッシングの前に最終ラインからのパスはズレが目立ち、ヒマン狙いのロングボールは相変わらず全く有効にならずというドツボに嵌ります。
32分に再度ベンチが動き、金井・後藤→吉田・鳥飼へと2枚替え。
吉田が左SHに入った事で、森が右SH・川崎が右SBというポジションチェンジも見せたものの、流れは変えられず仕舞いでした。
そしてその流れのままに、尚も追加点を挙げる北九州。
35分ここも浮き球の跳ね返し合戦を制して敵陣からの攻撃、中山が右ポケットへ送ったスルーパスに高が走り込み、奈良坂との競争を制してゴールライン寸前でマイナスのクロス。
そしてこれを岡田のシュートで仕上げ、今度は球際の強さを発揮しての3点目となりました。
敗色濃厚となった讃岐。
その後は気を取り直すように、ヒマンへのロングボール攻勢を改め、再びパスワークを整え攻め上がり。(41分には奈良坂・長谷川隼→小松・竹村へと2枚替え)
しかし守備を固める北九州、アタッキングサードに押し込んでも、そのブロックを前にしてシュート意識を高められず。
有言実行は難しいものというのを、憚らずも示す事となってしまいました。(結局この日のシュートは7本)
一方今度は強いられてのものでは無く、勝利への守勢という事を示す北九州。
45分に岡田・野瀬→夛田・長谷川光基へと2枚替え。
長谷川光が最終ラインに加わる事で、3-4-2-1つまり5バックシステムへとシフトします。(長谷川光が左CB)
理想のパスサッカーを遂行できたとは言い難い試合となりましたが、逆に経験豊富な田坂氏の引き出しの多さが見られた、といった所でしょうか。
そうして迎えたアディショナルタイム、最早再び放り込み体勢に全てを賭けるしかない讃岐。
徐々にヒマンの落としから繋がるシーンも膨らんできますが、時既に遅しな感は拭えず。
AT終盤には奥田ロングパス→鳥飼フリックを経て、ヒマンがエリア内右へ抜け出すという逆説的な好機を作ったものの、ヒマンのシュートはサイドネット外側に終わり。
結局3-0のまま試合終了の笛が鳴り、北九州がホーム初勝利を無事に挙げる事に成功しました。
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