「 少年と犬 」 馳 星周
第163回 直木賞受賞作。 東日本大震災から熊本地震の時間軸で列島を旅する犬と人々の絆を描いた連作短編集。
新聞で紹介されていたので、1月に申し込んで図書館で借りてきました。
1匹の野良犬が東北から九州まで向かう旅の途中で出会う人々との話を短編で綴り、一つの物語になっています。
和犬とシェパードのミックス犬。どこからともなく現れ、人なっこく賢くて誇り高い犬。人の心を魅了し、出会ったどの人も、この犬に癒される。
そんな野良犬・多聞と出会った6人のエピソード。
~~~~~~ネタバレあり
「 男と犬 」 2011年秋、仙台、震災で職を失った和正は、認知症の母を介護する姉の生活を支えようと、心ならずも悪に手を染めていく。
或る日コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。 母は「 カイト 」と呼んで可愛がり元気を取り戻す。
外国人の窃盗団の送り迎えをしている時、襲われて事故に遭い、和正は亡くなってしまう。
「 泥棒と犬 」一人逃げのびたミゲルは、多聞を守り神と信じ一緒に連れて逃げる。幼少期貧しくてゴミの山をあさる生活。
ゴミの山でたまたま見つけた拳銃を親が売って食事にありつけたのもつかの間、探しに来た悪人に両親を撃ち殺され、生きるため悪の道へ。
日本で窃盗で金を作り国へ帰るつもりが、裏切られ見つかり殺される。
「 夫婦と犬 」中山大貴は登山道で走っていてけがをした多聞を連れ帰る。夫婦の仲は冷え切っているが惰性で関係は続いている。
夫は多聞をトンバと呼び、妻は、クリントと呼んでいる。
或る日、登山道を走りに行った大起は熊に遭遇して崖から転落して亡くなってしまう。
「 娼婦と犬 」男の為、身を落とし娼婦になった美羽は、お金だけむしり取り浮気をする男を殺して埋めに行く。その帰りけがをした多聞に出会う。
病院に連れて行き治療をしてレオとなずけて飼うことに。
多聞が西に行きたがっているのを知って、自分は警察に自首をする決心をして多聞を逃がす。
「 老人と犬」 愛犬マサカドを失ってから猟から遠ざかっている弥一の元に、ガリガリに痩せ薄汚れた多聞が現れる。
肉を与え、動物病院に連れて行ってノリツネと名前を付け飼う。
膵臓癌で余命いくばくもない弥一は、もし死んだらノリツネを九州に連れて行ってやってくれと友人に頼む。
熊が出て弥一にも出動要請が。 手負いのクマを追って山に入るが、熊を手負いにして必死で探しているよそ者の猟師に、クマと間違って撃ち殺される。
「 少年と犬 」 林から飛び出てきたガリガリの犬を見つけた内村微はその犬を動物病院に連れて行く。
栄養失調だが、マイクロチップで岩手の釜石市の出口春樹さんの犬で5才の多聞とわかる。
家に連れて帰ったが、震災で言葉を失っていた息子の光が元気を取り戻した。
実は光と多門は縁あって知り合いだった。 そんな時また起こった震災で多聞は光をかばって死んでしまう。
~~~~~~
出会う人達みんなが無残な死を迎え、守り神どころか多聞は死神かもと思いながら読みました。
老人の言葉で、孤独の匂いをかぎ分け、避けられない死を迎える人に寄り添っているんだと思えるようになりました。
最後に少年を助けるため、長い道のりを旅して戻ってきた多聞。仕方なく悪いことをしている人達も本当は心優しい人たちばかりでした。
登場人物が娼婦を除いてすべて死んでしまったのが、残念で心が痛みました。
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