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この世界のどこかに居る似た者達へ。

上川隆也版・真田十勇士 その4 ネタバレあり。

2013-10-01 18:45:55 | お芝居・テレビ
夏の陣の戦場にて、十勇士達は戦いの最期を迎えます。

多勢に無勢。皆、一人に対して複数の敵を相手にします。

十勇士、一人一人の個性がその絶命場面に反映されています。

見ていると胸が締め付けられるようです。いつも涙で目をうるませて観ていました。

十勇士の一人、望月六郎の持っているアイテムは扇なのですが、舞う様にひらひらと扇を翻しながら戦場である舞台を駆け上がって行く姿が印象に残っています。

絶命する時も、扇をバッと開き「天晴れぇっ!!」と叫んで息絶えました。小柄で、いつも幸村の息子である大助の傍らに居て、若くてとかく熱くなりがちな大助を「若、若!」とよくたしなめていました。笑いを起す才能に溢れたキャラクターで、何となくお母さん的な雰囲気を持つ六郎が死んでしまった時は本当に寂しかったです。

その大助もまた、十勇士と共に戦場で戦って絶命します。父を深く敬愛していた大助は、父のため真田のため、一人の武士として刀を振るいます。その姿はせつな過ぎる程この最期に来て、男らしいのです。



真田大助役: 渡部 秀さん。父・幸村を侮辱する者は許しませんでした。この大助は大阪城の秀頼、淀とは運命を共にせず、戦って討ち死にしたのです。





由利鎌之助役: 松田賢二さん。武器である鎖鎌を切られ追い詰められ、敵の腰から刀を抜き取り絶叫しながら斬りこんで行きます。客席に背を向けた形で叫びますが、客席に届きます。その声に心が震えました。佐助と共に生きて来た鎌之助。物語の後半で実は非常にセンスある感性の持ち主と判明し、私はかなり感動。ヒントは佐助の名前。


息絶える直前に満面の笑顔を見せる者、「殿・・・」と幸村に思いをはせて息絶えた者。絶命した十勇士達にはスポットで照明が当たっています。


舞台のあちこちに十勇士が倒れています。

そこへ幸村がやって来ました。もはや動かぬ愛する者達を見渡し、足元の大助に近寄ります。

そっと大助の顔に手を伸ばすと、まぶたを閉じてやりました。自分と同じ様に「父と真田の誇り」のために戦い、目を開いたまま絶命していた我が子の頭を優しくなでました。

幸村が泣いている様に見えました。客席も静まり返っています。


すると、

「おい、いたぞーっ!!!」

と敵兵の声が。足軽兵がわらわらとやって来ます。


戦い散って行った十勇士の骸の中に立ち、幸村公の壮絶な戦いが幕を開けました。

束になってかかって来る敵を、幸村は一人で相手にします。舞台を駆け上がり、相手の槍を奪い振り回し、矢が飛んで来ても戦う事をやめません。

この舞台・真田十勇士のテーマ曲である、中島みゆきさんの唄がここで流れます。

駆け上がって来た敵の一人を槍で刺し、じりじりと降りて行きます。周囲から他の兵が近づこうとすると「寄るな!!」と幸村が叫びました。刺されたままの敵兵は断末魔の様な叫び声をずっとあげ続けています。敵兵達は恐れをなして近寄れません。

しかしながら、たった一人の幸村。斬りこまれます。

血が吹き出すのが見えるようでした。そんな後ろに大きな月が昇り来るんです。中島みゆきさんの唄が、戦う運命しか生きられなかった者達の狂おしい想いを伝えるようでした。

斬っても斬っても、フラフラと立ち上がる幸村に敵兵達も恐怖を覚えながら「い、行けっ!行けっ!」などと声を震わせ言い合います。

よろめき、血の流れ出る口元をぬぐう幸村公。揺れる視線の先に何を見ているのか。幸村のそんな姿に私は涙が溢れそうになるのです。


最後には無残に槍で四方八方から刺されます。それでもなお、立ち上がろうとし、膝から崩れ落ちて幸村は死にました。真っ赤な甲冑に身を包んだ幸村は、血にまみれ倒れている様に見えました。敵兵達はヘトヘトに疲れています。

しかし、そんな激しいシーンだったのに関わらず、後ろの月に照らされて温かい「愛」を私は感じました。それは、幸村と十勇士を結んでいた物なのかもしれません。

十勇士にあたっていたスポットが幸村の絶命と同時に、赤い色に変わっていました。

幸村にも赤い色のスポットがあたっています。

主君の死を待ち、彼らは揃って天に昇ってしまいました。



家康が、幸村安居神社で討ち死にと半蔵から知らされます。

幸村の手によって、何度もその命を危険にさらされた家康公。真田幸村と言う武将を賞賛する言葉が家康から発せられます。

そして、大阪城落城の知らせが届くのでした。



つづく。

























































上川隆也版・真田十勇士 その3 ネタバレあり。

2013-10-01 14:48:10 | お芝居・テレビ
大阪冬の陣、夏の陣。

真田幸村公と忍びの者達は、戦の中でその運命を共にします。

冬の陣の後、幸村達が築いた真田丸は家康の手によって壊されてしまいます。

そればかりか、大阪城の堀までも埋められてしまったのです。

戦と言うのはいつでも、双方の意地のぶつかり合いなのではと私は思います。

家康によって和歌山の山奥へ追いやられ、武将として生きられぬ年月を幾年も重ねたのです。

幸村は、もはや退く気など毛頭なかったのだと思います。

かたや、徳川家康とて、戦乱の世を終結へと導くべく、獣道を独自のやり方で切り開いて来たのです。

己の手で自分から遠ざけた因縁の相手に、今更負けるわけには行きません。


「真田太平記」と言うNHKのテレビドラマでは、九度山で暮らす幸村の身を案じながら、伝説の忍び達はどうしても家康に一矢むくいたい、家康の首を取りたいと言う気持ちをつのらせます。

幸村は冬の陣、夏の陣と出陣する事によって、代々続いて来た愛する忍び達の想いを自分の命もろとも、思う存分輝かせます。活躍し、名を上げ、真田家ここにあり、とその誇りを守ります。忍び達も身を潜めていた年月を取り戻すかの様に、戦場で働きます。

しかしながら幸村は今一歩のところで家康に届かず傷を負い、神社の境内で徳川の兵士達に囲まれるのです。最期の瞬間に幸村が名乗ると敵兵は「おぉっ・・・」と声をあげて、一瞬たじろぎます。「首をとって武功をあげよ。」そう言い、草刈正雄さん扮する幸村公は自ら刀を首に当て「父上、これでよろしいか。」と言って絶命します。


父の願いを、愛する者達の想いを精一杯輝かせ、死んで行った幸村公でした。



さて、上川幸村公と十勇士達は共にあり家康本陣へと突っ込んでゆきます。

真田幸村は何度も徳川家康に肉薄したと言われていますが、NHKのドラマでは今一歩のとこで家康に触れる事は出来ないのです。

しかし、この上川版・真田十勇士では幸村と家康はなんと、刀を合わせます




甲冑に身を包んだ里見家康公の存在感は、凄いです。間違いなく徳川家康公でした。

赤い甲冑に身を包んだ幸村公が

「御首頂戴、徳川家康っ!」

そう言うと家康も采配を投げ捨て抜刀し、組み合います。

これは私にとって夢のシーンでした。幸村公が家康公に触れた瞬間を観られるなんて非常に嬉しかったです

家康公もかっこ良かった徳川方の忍者、服部半蔵が助太刀しようとすると

「半蔵、下がっておれ!」

と言って、八百屋舞台で幸村と家康の一騎打ちが始まります。

刀を合わせては払いながら、坂道舞台を降りて来ます。家康公の懐に入り込もうとしては突き放される幸村公。体を回転させながら斬り込んでは離れる度に衣装が翻ります。幸村の陣羽織の様な衣装は丈が長く、ひらひらしているので踏んづけてしまわないかと思いましたが、美しくさばけていました。

半蔵がそのすぐそばに居ます。一度離した刀を再度合わせ、互いを押す力が互角になった時、交差した刀がグッとその距離を縮めました。さぁ、どうなるの!?と私も力が入った瞬間、舞台上で「ボンっ!」と爆発音がして白煙が上がりました。瞬間、なだれ込んで来る両軍の兵士達。半蔵を伴い去ってゆく家康公の姿。

やっぱり、家康公は遠いのですねぇ。




服部半蔵役: 山口 馬木也さん。とっても刀の使い方がかっこ良かったです。遠くから
でもどんな風に刀を使っているのか、何をしているのかよく分かりました。

十勇士に翻弄される場面もありましたが、最期まで命は落としませんでした。

「その後」も大御所・徳川家康に仕えたわけですね。



つづく。