leka

この世界のどこかに居る似た者達へ。

蛮幽鬼 2。

2013-10-18 21:19:45 | お芝居・テレビ
監獄島に居た時、土門がまるで気のふれた様な場面がありました。


自分は罪など、おかしてはいない。

自分は親友を殺してはいない。

そんな思いが、土門を狂暴で残酷な行動へと向かわせていました。

看守の目をくりぬいたんですねぇ。



土門の牢獄の前に、古株看守が「餌」と書かれた入れ物を背負った新人看守を連れて来ます。食事の時間です。

監獄島に響く囚人達のわめく声に怯える新人。「囚人達は食事を貰う時は大人しい。」と古株が言います。

しかし、新人が土門の檻へ近づこうとすると、「そいつには気をつけろ!」と古株が言いました。古株は眼帯をめくり、見事にぐっちゃぐちゃな片目を新人に見せます。土門がエグったんですねぇ。

「十年前の話だ。」と古株が言うと、暗がりから

「十年っ?もうそんなに経っちまったのか?」

と言う、とうてい土門とは思えない、又は、上川隆也だとは思えない高い声が聞こえました。

「おめーの目玉はうまかったよ、今度はそっちの若いヤツの目玉を喰わせてくれ!」

と牢獄の暗がりを背に己を閉じ込めてている檻にしがみつき、甲高い声でまくし立てる土門はマジで狂っており、非常に怖いのです。

「頭の芯まで狂ってやがる。」と古株は言いますが、看守が居なくなった後土門は一人、

「誰が好きこのんで目玉なんて喰うか!」

と、独白します。先程とは別人の様な低くて激シブな声で。こちらが土門の本当の声です。

ホッとします

土門は狂ったフリして脱獄の準備を進めていたのです。


しかし上川さん、色んな声が出せるんですねぇ。言い方も、狂ったフリの時は語尾がなんだか曖昧で、あやうい印象だし。

マジでやばーい。何が?


そんなこんなで大変な思いをして十年と言う長い年月、我慢に我慢を重ね土門は外の世界に出て来たのでした。


白髪の教祖を、昔なじみの人々は誰も土門だとは気づきません。

何者かに殺された親友の妹、土門の婚約者であった、稲森いずみさん扮する「美古都(みこと)」も、初めは彼をかつて愛した男と気づかないのです。

土門は、国の王の后となった美古都さえも憎み始めますが、時折彼女の見せる「弱さ」に心中は揺らいでいます。それをサジは見破ります。

一秒、一秒、殺しの事しか考えていない監獄島で出来た土門の「友人」、サジと言う男の言動が少しづつ土門の進むべき策略にヒズミを生じさせてゆくのです。

策略につぐ策略の果てに、ついに土門は自分を陥れた二人の男と伊達土門として対峙します。

目の前に居る男が土門だと気づいた二人は慌てふためき、相手をしようとするも力が入りません。そんなふがいのない二人の元に向かって刀を放り、自分が越えて来た年月はそんな事では倒せない、もっとしっかりかかって来い、と土門は凄みます。

憎しみの炎がメラメラ燃えている土門の目。

しかしながら、この男達はお互いを売り合い斬り合い、土門が手を下す事もなく死にました。

死にさらしました。

最初からそんな嘆かわしいやつらだったのです。

劇中の台詞の言葉をお借りするなら「見下げ果てた」奴らだったのです。




つづく



















































蛮幽鬼。

2013-10-18 01:14:08 | お芝居・テレビ
蛮幽鬼。

凄い字だと思いませんか?「蛮幽鬼」って。

字面がもう・・・怖いわ


2009年の上川隆也さん主演の舞台です。

物語は「巌窟王(がんくつおう)」(これも凄い字面)と言う小説をモチーフにした復讐劇。

巌窟王とはフランスの古典文学「モンテクリスト伯」と言う物語だそうです。

舞台・蛮幽鬼は2010年にゲキシネと言って、舞台を映像化する観劇方法で映画館で上映されました。

このゲキシネは劇団・新感線の舞台の映像化です。

ゲキシネ

今も各地の映画館にて上映されています。

私は品川プリンスシネマにて観て来ました。


上川隆也さんは「伊達土門(だてのどもん)」と言う役です。無実の罪で十年もの間、地獄の果ての様な「監獄島」と言う牢獄へ幽閉されます。

監獄島には堺 雅人さん扮する大殺人鬼も投獄されていました。

そうです。大殺人鬼です。怖いんですよ。あの御なじみの笑顔で殺人しますからね。

伊達土門は、この「サジ」と名乗る大殺人鬼の手を借りて監獄島からの脱出を試みます。

土門は「友人」として付き合っていた二人の男の嘘の証言により、親友を殺した罪で投獄されました。親友とは土門の婚約者の兄であり、土門の目の前で何者かに刺されて殺されたのです。

十年もの間、土門は自分を陥れた二人の男の事を憎み、恨み、いつかこの手で復讐を果たしてくれる、とそれだけを考えて生きて来ました。

薄暗く、劣悪な監獄の中にあって、憎しみ恨み生きて来た土門の髪はいつしか白髪に。

鏡の無い生活であったため、自分の姿などそれこそ十年間見た事のなかった土門。

サジの差し出した刀に映る自分の姿に

「これが俺かっ・・・たった十年でこんな・・・」

と愕然とします。そして改めて自分をこんな姿にした奴等への憎しみが燃え上がり、復讐を心に強く誓うのです。


物語は暗く、悲しいです。

痛ましく、ヒリヒリしています。

しかしながらロマンチックでもあり、観客の殆どは女性でありました。


この新感線と言う劇団の持つ特色なのか、暗いくせにあちこちに爆笑場面がちりばめてあり、映像として観ている映画館の観客も笑ってしまうのです。

私もこらえきれず、声を出して笑ってしまったシーンが二度程・・・



脱獄に成功した土門は、飛頭蛮(ひとうばん)と名乗って宗教の教祖と成り得ます。そして、自分を貶めた男達に近づき復讐のその時を待つのです。



誰が誰やら新感線のポスターってこう言うの多いですよね。一番上が稲森いずみさん、向かって左が上川隆也さん、右が堺 雅人さん、一番下が早乙女太一さん。

立ち回りが満載です。ほんとにかっこいい。早乙女太一さんはまるで踊っている様に、殺陣をこなします。今まで見たことない立ち回りです。大殺人鬼の堺さんも不気味な迫力をたたえた立ち回りです。上川さんはダイナミックです。白い髪をなびかせながらの立ち回りに観客女子達はメロメロです。そして皆やっぱりよく走る



飛頭蛮と呼ばれし土門。長い白髪、白い口髭、両腕を大きく広げ、人々を導きます。

この登場シーンは凄いカッコよかったです。監獄島での土門は伸び放題の髪と髭、汚れた囚人服から傷だらけの腕の見えていた姿でしたから、長い髪を後ろで綺麗な飾りのある髪留めでとめ、床をする程丈のある白い衣装をふわふわさせて階段を降りて来る様は神々しかったです。

ちなみに赤や青の石がついていた髪留めはこの時ぐらいで、物語がグッと深刻化してゆくこの先ではグレーかなんかの色味のあまりない飾りになっていました。

歌うんですよ。そして踊ります。1曲だけですけどね。

私には苦手なシーンです。分かんないんですよ・・・お芝居の中で歌ったり踊ったりが・・・。

どうしてもお芝居の歌の歌詞は好きになれない・・・。お芝居の中の歌なので、状況説明だったりして詞的でもなんともなく、「変なうた・・・。」って思ってしまう。

でも、飛頭蛮の曲は楽曲がとても良かったです。曲の展開も音色もとても良かった。

歌詞も「決めことば」みたいなのがあって、凄く歌詞っぽかった。

飛頭蛮として民を導く声としての歌声は、監獄島から助け出して連れて来た「ペナン」と言う女性の綺麗な歌声と相まって、なかなかすんなり聴けた気がします。




つづく