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この世界のどこかに居る似た者達へ。

上川隆也版・真田十勇士 その5 ネタバレあり。

2013-10-02 11:49:28 | お芝居・テレビ
大阪城が落城したと言う事は、この親子もその生涯を終えた事を意味します。



淀の方役: 賀来千香子さん。実兄が徳川方についている幸村を信用するには時間がかかりました。しかし、最後には豊臣家の未来を託しました。母性が強すぎるために戦う男達からはあまり指示されない淀ですが、上川版・真田十勇士では夫である秀吉が残した衝撃的でさえある「望み」を苦しみながらも受け入れ、男達の想いをつなぎます。母であるがため冷静さを失い愚かな行為に出る様な淀の方ではなく、考え方としては潔い淀の方でした。





豊臣秀頼役: 相馬圭祐さん。秀頼もまた、戦う男達からはあまり指示されないキャラクターとして描かれる事が多い人物です。でも、上川版・真田ではかっこいい秀頼が見られます。城をほぼ出た事がない箱入りの様な環境に身を置いているので、坊ちゃん的なところはありますが、君主としてやらなけらばならない事は、幸村が言わずともしっかりと理解していました。頼もしさに溢れる場面があります。


上川版・真田十勇士には、史実として伝えられている物とは違う「結末」が用意されています。言うなれば「嘘」なのですが、歴史の事実は「諸説ある。」と言われる事がよくあります。秀頼と淀は大阪城内で自害したと言われますが、幸村が秀頼を連れて逃げる様子を伝える唄が残るとか。なので、あながち嘘じゃないんじゃないかとさえ思います。

絶妙に史実とリンクするこの「嘘」がハンパなく最高なのです

淀の方、秀頼、佐助、ハナがこの「嘘」に関係します。

そしてこの「嘘」は、壮絶に散って行った幸村と十勇士を照らす一筋の「光」と成り得るのです。




猿飛佐助役: 柳下 大さん。愛しい程真っすぐな佐助です。その「光」のキーを握ります。生まれた境遇が彼に様々な影響を及ぼし、孤独で揺れる事も。自らの父親との関係性からか、父を深く慕う大助とぶつかる事が多々あります。繊細で壊れそうなところもありますが、鎌之助や他の十勇士、そして幸村に後押しされて乱世を生きます。とにかく身軽で、背に背負った刀の抜刀・納刀が自然で美しかったです。とても素敵な声の持ち主だと私は思います。ハナを一目見た瞬間から虜になってしまいました。




ハナ・花風役: 倉科カナさん。とても可愛らしい方でした。十勇士や城下の人々の憩いの場である飯屋のハナですが、実は徳川方の忍、花風。花風の時は声をグッと低くして話します。聞きやすくよく通る声でした。名古屋で観た時の方が、俄然台詞に感情が乗っていた様に思います。舞台は苦手と製作発表で仰っていましたが、そんな事は微塵も感じませんでした。揺れる女心をとてもよく表現出来ていたと私は思います。物語の終盤で佐助をかばって半蔵に斬られる様な場面があり、名古屋の客席から「えっ、そんなっ!!ダメだって!!」な感じのため息の様な声があがっていました。観客を見事に物語の世界へと連れて行かれていました。素晴らしいですね。



舞台には十勇士が再び登場し、この上川版・真田十勇士の「史実」が観客に語られます。

闇にまみれ影となり、暗がりを駆け抜けて来た忍び達が、大きな光をもたらした瞬間でした。

真ん中に誰よりも草の者達を信じて戦った幸村公。

その左右に各々を象徴する武器を手にした十勇士達。

新鮮な驚きと、カッコよすぎな光景に拍手が起こり、ここからずっと鳴り止みませんでした。



観客は既に幸村と十勇士に魅了されていたので、再び会えた喜びもあって非常に大きな拍手でした。客席に居たら、台詞が聴こえ辛い位。この舞台に関わった全ての方々に聞かせてさしあげたい拍手の音でした。


全てを優しく強く照らす月明かりの下で、幸村公が刀をかざしました。

その月明かりは幸村公の居る場所から遠く、時空を越えて私達の元まで届く明かりの様に感じました。


いやぁ~かっこ良かったなぁ~~~

あの最後の場面は本当に忘れ難いです。

また、音楽が最高にかっこいい

吉田兄弟のお二人が関わった音楽も気持ちがざわつく様な独特なフレーズが入った物もあり、忍びの者が持つミステリアスな感じがとてもよく表されていました。舞台の雰囲気と非常にマッチしていました。


カーテンコールはもう、本当に拍手、拍手の嵐でした。

徳川軍、真田軍、はたまた徳川の忍者達。斬られてはハケ、再び斬られるために舞台へと登場し、宙返り、転び、走り回り、何度も倒された方々。陣笠を脱ぎ、手ぬぐいをまいた姿での登場でした。彼らが居なければこのお芝居は成り立たないですね。

皆さんのお顔が見られて良かった。惜しみない拍手が贈られました。

そして十勇士の方々、豊臣の家臣の方々、秀頼公、淀の方、家康公。最後に拍手が一段と大きくなって幸村公。

本当に皆さん輝いて素敵でした

カーテンコールって感動するんですねぇ。

出演者全員で客席に向かって一礼があり、一度皆さんハケましたが、拍手鳴り止まず再度登場でした。

客席はここからスタンディングオベーションに。

笑顔でがっちり握手する幸村公と家康公がまた見られました。

客席の右側、左側、そして正面と一礼。出演者の皆さんがハケる時に、客席と手を振り合っていましたね。

もう何て言うか、離れたくないんですな

お別れしたくない客席

舞台が終わるのが寂しいわけです。拍手は続いています。


最後の最後に上川幸村公が一人で登場。

「きゃーっ!

なんて思わず黄色い声が飛んだり・・・。

皆、シビレちゃいましたもんね。こんなかっこいい幸村公は今まで観た事がありませんでした。




凄まじい覇気をもって、真田幸村と言う武将の魂が降り立った様に私には見えました。


大きな拍手と笑顔と熱い感動に包まれて、私が生で拝見出来る最後の上川隆也版・真田十勇士は幕を閉じました。

舞台でのお芝居に興味なく生きて来た私の様な者まで、劇場に足を運ばせた素晴らしい舞台だと思います。

お芝居や音楽などは、本当はそうでなければならないのかも。

音楽好きな人やお芝居好きな人だけじゃなく、今まで劇場やライブに行った事がない人々にも、「もう一度行きたい。もう一度会いたい。」と思わせてくれる作品や表現者達が本当に良い作品であり、本当に才能ある表現者だと思います。

感ずる驚きと感動は生まれて初めての物でした。

嬉しかったです。


そしていよいよ、この上川版・真田十勇士は大阪決戦が始まります

上川隆也版・真田十勇士 大阪公演


まさに、終焉の地での決戦です。東京公演、そして名古屋公演で私が客席に居て感じたのは、観客席の大きな「気」です。まるで、舞台を後押ししている様な「気」。

演者の皆さんは、この「気」を携えて、大阪決戦へと挑むため毎日舞台へ立たれたのでしょう。

この上川隆也版・真田十勇士の舞台が本当の戦いと終結を迎える今、何故かまた台風が接近中ですが、きっと演者と客席のパワーで大千秋楽への道が開けることと思います。


是非是非、劇場へ足を運んでご覧になって下さい


是非、舞台の幸村と十勇士と共に戦って下さい。笑って下さい。愛して下さい。


そうする価値のある作品です