leka

この世界のどこかに居る似た者達へ。

蛮幽鬼 4。

2013-10-19 17:58:11 | お芝居・テレビ
なかなかに立ち回りの場面が多い、この蛮幽鬼。

斬って斬られ、斬られては斬る。

血がね。見えるんですよ

役者さん達の衣装にどうやら仕掛けがあるみたいですね。

お芝居の初めの方で土門の親友が殺された時も、ちゃんと流血します。

痛そうです


あと、「シャキーン、シャキーン!」って言う、刀のぶつかり合う音がします。

それと拍子木の音。「チョンチョンっ!」と音がして、見せたい場面を強調して観客に見せたり。

漫画っぽい感じが少しします。


蛮幽鬼クライマックスは、土門の体に毒がまわり、大変な局面をむかえてしまいました。

サジを相手するのは、美古都のためになら命すら投げ出してもかまわない刀衣です。

この刀衣とサジは実は同じ「狼蘭族」と言う部族の出なのです。剣術に長けた者達。その技量は主に暗殺などに使われると言う・・・。


感情を覚えた殺し屋など、もう死んだも同然と言う考えのサジ。

「誰かのために死ねる気持ち良さなどお前には分かるまい」と、そんなサジにむかってゆく刀衣。

殺し屋殺し屋の激しい戦いが幕を開けます。


蔵人は美古都に逃げるよう促しますが、体の震えが止まらぬ土門を見捨てる事が出来ずにためらって居ます。


刀衣が土門のそばまで来て「逃げて!」と言い、土門の肩のあたりを刺しました。

すぅーっと両の黒目が真ん中に寄って行く土門。そのまま横たわり動かなくなりました。


この蛮幽鬼のセットは回転する大掛かりな物で、回転して場面転換を成していました。

建物の中と外を瞬時に観客に見せてくれたりして、とても面白かったです。

サジと刀衣の戦いのさなかも、確か一度セットが回転しました。


そして姿を現した美古都。

逃げてはいませんでした。土門も死んではおらず。


刀衣が土門にはトドメを刺したのではなく、毒消しを刺したんだと言います。

狼蘭族には薬を使う者もおり、どうやら刀衣はそうらしい。

全ては美古都のため。

いや、もしもサジと言う男を自分が仕留められなかったのならば、後は土門に託すつもりだったのでしょうか。

複雑な心境を乗り越えて戦った刀衣ですが、残念ながらサジを仕留められませんでした。


サジと土門の一騎打ちの始まりです。

サジから戦い方を伝授された土門。

監獄島を脱出する手助けをしたのはサジであり、今、自分がここにあるのは彼の力があってこそなのを感じながら戦っているのか。

お互い退きません。

サジは自分の戦法と戦います。自分と戦っているのと同じです。

土門は存分に斬られます。気付けば、胸といい、足といい、服もろとも斬られ赤い血が見えています。

しかし、倒れても何度も立ち上がるのでした。

サジが不思議に思っていると、「痛くないんだよ・・・」と土門。

毒のせいなのか毒消しのせいなのか、ここへ来て土門の体はなんの痛みも感じなくなってしまったのです。

それは何だか「心も体も」と思えてしまい、悲しい事の様に思えました。

監獄島へ投獄されて、充分に傷ついた土門の心は、もはや疲れ果てているはずです。


でも、大量に出血すれば死ぬじゃんねー、みたいな事を言って嬉々として殺しにかかるサジ。

おめーってヤツはよぉ・・・・。



そんな二人の足元から白い靄が立ち込めて来ます。

「なんだ・・・ここはまだ監獄島じゃないか・・・。」

遠くを見て土門が言います。何を言っているんだ?と言う感じのサジ。


そろそろ二人共、戦いを終結させたい頃合です。

土門はサジに、いつかお前の本当の名前を教えて欲しいと言います(今度出逢ったら、みたいな感じだったかな?)サジとは本当の名ではないんです。

そんな土門にサジが、君には本当の名前なんてあるのか?と言う様な事を聞きます。

土門は力なく少し笑って「それもそうだな。」と言い、サジを殺します。


クライマックスの土門は現実と幻影を行ったり来たりしています。

土門は己の中から生まれた、己の復讐のために己を支え続けた、「サジ」と言う自らの憎しみを葬り去ったのです。


事態は収拾がつかなくなっています。美古都はどうにか土門が救われる方法は無いかと考えていたはずですが、どうにもなりません。

衛兵達が騒ぎを聞きつけてここへやって来るのも時間の問題です。

「土門!」

美古都は、かつて愛した男をかつて愛した男の名を呼ぶように叫びますが、土門は「オレは飛頭蛮だ!!」とさえぎります。


この国の王、美古都として逆賊、飛頭蛮を殺せと土門は刃を彼女に持たせて刃先を自分に向けさせます。

そして、「この監獄島から救ってくれ」と。

美古都の手に持った刀をグッと引き寄せ、土門は自らの体を貫きました。

何かを掴むように手を伸ばし、宙を泳ぐ視線で「外の光がっ・・・」と言いかけ、土門は死にました。

復讐を遂げても監獄島から開放されずにいた土門の魂は、美古都の胸の中でついに自由になったのかもしれません。


しかし、土門は何も救われてはいないのです。

美古都の胸の中に帰る事と引き換えに、傷だらけになって命を失ったのです。



気付けば、観客女子達の鼻をすする音が映画館の客席のあちこちから聞こえて来ました。

暗がりでハンカチを握る手。

悲しくも美しい最期の場面に酔っているかのような客席。

で、ございました。





これは新宿バルト9にあったポスター。


暗く、救われる者の無い物語なために、あんなに爆笑シーンがあるのかすら。

せめて、ここは笑って、と。

ま、そう言うわけじゃないんでしょうけども。



土門の魂が救われたかどうかは、きっと土門自身にしか分からないんだろうなぁと思う帰り道でございました。


ゲキシネ上映は日本のあちこちでまだ続くみたいですね。

間に休憩15分を挟んで3時間半。

あなたの街で「蛮幽鬼」。

いかがでしょうか。





































































































































蛮幽鬼 3。

2013-10-19 15:17:54 | お芝居・テレビ
土門を陥れた男達は死に、彼はとうとう復讐を果たました。

しかし、土門の瞳はどこか空虚であり、次に何をすべきなのか見失っている様に見えました。

監獄島から助け出して来たハマン国と言う国の姫、「ペナン」。ガラン、ロクロクと言う名を持つその家臣達。皆、土門の復讐の名の元に集まった仲間達ではありますが、いつしか彼らは小さなファミリーの様になっていたのです。

「もう、終ったんだよ!海に出よう!!こんな国なんて捨てて・・・全部捨てて・・。」

念願の復讐を遂げたのにも関わらず、どこかやり場のない虚しさを抱えてる様な土門に、ペナンは言います。


しかしまだ、親友を殺した真犯人は分からないままなのです。

この場にあの笑顔の殺人鬼サジは居ません。


国の衛兵達がやって来て、美古都の命により、土門達の命を取ると告げます。

美古都は国王であった夫をサジに殺され、今は自らが国の長なのです。


土門の小さなファミリーは衛兵達の手により、あっと言う間にこの世を去って行ってしまいました。

息も絶え絶えなペナンを腕に抱き、彼女の行きたがったこの国の外へ行こうと土門は言います。「イマ?」と問いかけるペナンに「ああ。」と土門は笑顔で答えますが、「嘘はイケナイ。」と言って彼女は死んでしまいます。自分から大切な者達を奪った美古都に向かい、土門の怒りが爆走します。


舞台・蛮幽鬼のクライマックスは、土門、美古都、サジ、刀衣(とうい:早乙女太一)、蔵人(クランド:土門の旧友)によって織り成されてゆきます。

美古都は夫を殺された頃から、飛頭蛮が土門だと気付きます。

蔵人もまた、飛頭蛮と言う男が旧知の友なのではないかと言う思いを胸の中でくすぶらせていました。昔から知る男と自分との間でしか交わされた事のなかった言葉を飛頭蛮が口にした時、蔵人の心が決まったのです。

さて、全ての刃が土門に向けられますが、怒りと憎しみで突き動かされている土門の刀は邪魔立てするありとあらゆる物を唸りながら蹴散らしてゆきます。

それは戦いのさなかに刀の達人、刀衣に「強いっ・・・。」と言わせしめるほど。


だがしかーーーし


美古都は土門達を殺せとの命令など出してはいないと言います。

では誰が?


美古都に「何故、待っていてくれなかった」と言う土門。確かに、心に決めた人は居たが死んでしまった。私を殺して気がすむならそうしなさい、この首を持ってこの国を出て行きなさい、と彼女は父から貰った短刀を自ら胸に突き刺そうとします。


どんなに土門が変わり果てようとも、美古都には受け入れる心があったはずでは。

しかし、もはや一国の長である彼女に、己の感情ひとつで好き勝手に動くなど出来うるわけもありません。

もう、出来ないのです。

彼女の王としての姿勢と気迫に負けたのは土門の方でした。

短刀の刃を握り、美古都が自ら死するのを阻止します。


「オレはお前を殺しに来たのではない!」と土門。

とうとう、彼は自分が何をしようとしているのか分からなくなってしまいました。


自分を止めた土門の手が短刀の刃で切れているのに気付いた美古都は、布を巻いて手当てします。

束の間、心が通じ合うかの様な。

そして今一度土門は、自分達を殺せとの命令を美古都が下していないと確認するのです。


「随分、殺すのに時間がかかっているようだねぇ~~。」

とそこへ、満を持して笑顔の殺人鬼サジ登場。



全ては。

全ては土門の殺された親友、その妹である美古都の父の仕組んだ「はかりごと」と一同にここで判明。


そして直接手をくだして土門の親友を殺したのは、サジだったのです。

無論、サジはとっくにその父を殺して来ています。


驚愕の真実を上手く飲み込めない一同。

と、土門の体が激しく震え出します。

刀衣が美古都の父から送られた短刀を確認すると刃に毒が。

美古都の父「惜春(せきしゅん)」は息子も殺し、娘までも殺そうとする、悪の根源でありました。



つづく