出掛ける間際になって、「あの葉書が要る」とショーが言った。いま、要るものではない。数日前大阪の家へ行った時
「あの葉書が要る」と言ったからちょっと探したけど見つからなくて、「もっと良く探してみる」と言ったのに「もうええ。もう
ええ」と帰って来た。だからもう不要になったのかと思っていたらまた「要る」という。
「こっちの家には持って来てない筈やから、あっちでもっと探すと言うたでしょう」
いらいらする。
私は手紙を出そうと思っていた。80円切手しかない。ア・beが消費税をふんだくるから手紙もラクに出せなくなった。
面倒なことだ。
郵便局の「郵便」係の女の子に、「一円切手も20枚ください」と言って、100円玉と1円玉2個を出した。
「2円切手がありますけど…」
「1円切手でいいです」
「でも、2円切手の方が便利ですよ」
「葉書にも使いますから、1円切手でいいですわ」
「葉書も52円です。2円切手が使えますよ」
「1円でいいです」
最初に1円切手が要ると思ったのだから、「では、2円切手にします」とは言いたくない。
「2円切手の方が……」
切れた。 ひつこい女だ。自分の好みを押しつけて、客が欲しいというものを売らないなんて……。いや、待て。82円
と20円で102円という計算が出来ないのかも知れないと、10円玉2個を出してカウンターに置いて、1円玉2個を引っ
込めた。
「一円や言うたらハイと一円切手出したらええやないの。ごじゃごじゃ言わんと…ここの郵便局は、一円切手は売れへ
んと言わはるんですか?」
思わず大きな声になった。奥のデスクに座っていた男や女が一斉に顔をあげてこっちを見た。
「いいえ。そんなことは……」
郵便係の女は慌てて抽斗から一円切手を20枚出して、カウンターの上の20円を取った。やっぱり、合計102円が判
らなかったのだ。むかむかするなあ。なんでこんなヤツに客の応対させるのだろう?
切手の貼り方で気持ちを伝えることが出来る。2枚でも3枚でも縦に真っ直ぐ並べて貼るのは普通。一枚を正位置に
貼って、もう一枚を離して斜めに張ると、「わたし、すこし拗ねています」という意味になる。一枚正位置で、2枚をハの
字に貼るのは「喧嘩中だけど、言いたいこと書きました」。一枚を上に。一枚を宛名の下に貼るのは遠く離れていて寂し
い」。正位置と、もう一枚を横にして並べて貼るのは「あなたのことが頭から離れません」。大きい一枚をさかさまにして
下へ貼り、上に2枚を斜め斜めに貼ると「政府のやり方に不満あり」などという具合だ。切手がどう貼られていても気が
付かない人には、「切手の貼り方にご注意ください」と書き添える。
なんて書いていたら、気持ちが静まった。
押し付け、お節介な人は嫌いだ。めいめいお弁当持参でどこかへ行く時、ヒトの分まで作って来る女がある。自分が
作ったお弁当は、誰が食べても美味しいのだと思い込んでいる。誰にでも好みというものがある。イヤだなあ。何年
経っても「イヤな奴だった」と思い出す。イヤなヤツだったとヒトに思われていることを知らずに今も誰かに迷惑がられな
がら暮らしているに違いない。( ・~・)))