関西テレビ、文化庁芸術祭参加作品『泣きながら生きて』、良かった。粗末な推理ドラマやくだらないクイズ番組ばっかりで、テレビ局というのはバカ人間増やす努力しているんだと思っていたけど、このドラマを流そうというようなちゃんとしたアタマの人もいるんだ。
日本の大学で勉強するため、奥さんと娘さんを中国に残して単身来日した男性の話だが、貧乏な中国人に日本は、働くところも無い北海道の過疎村のプレハブ住宅をあてがう。しかも、学費は中国では一年働いても得られない30万円という高額。借金返済のため、敢えて不法滞在者となって、男性は東京で働く。無論、賃金の安い底辺の仕事しかない。それでも粗衣粗食に耐え、国への仕送りを続けながら頑張る。そして16年。
ニューヨークの大学へ入る娘が日本へ寄り、父娘は僅かな間会い、また別れる。電車を降りてホームに立つ父親に、泣いている娘は電車が動き出す寸前だけちょっと顔を上げて手を振る。
これが自然だから泣ける。日本ドラマではこういう演出は絶対にない。
娘はニューヨークの大学に入って医者を目指して勉強。やがてインターンに。ニューヨークの娘を訪ねる母親は、日本経由の飛行機で、娘と同じように男性に会に来る。空港まで送れない男性はホームで、また別れ別れになる妻を泣きながらじっと見つめる。夫を見ないのか、いつ見るのかとはらはらさせて、妻は一度も顔を上げない。電車は発車。動いて初めてちょっと手を上げる。電車がホームを離れてから人目を憚らず泣く。娘より別れる悲しみが深いことがよくわかる。
娘が一人前になって、ようやく男性は故国へ帰る決心をする。
飛行機の中で、辛い思い出しかなかったろう日本に向かって、男性は手を合わせる。いつまでも……
この男性の優しさ立派さに泣けた。思い出しても涙が出る。
今日、教育テレビで「いじめについて」の討論があった。日本人の心の貧しさに、暗澹たる思いである。