倉庫代わりに借りているガレージが、月額1万円。年12万円。10年で120万円。
一カ月経つのは早い。1年経つのも早い。借りてからもう二年になる。24万円支払ったわけで、勿体ない。
近くに倉庫が建てられる小さい土地はないだろうかと思っていたら、鉄筋倉庫を売りたいというチラシが入った。土地が52坪ある。道路から10メートルは上で、隣家の人とその家に用事がある人や車しか前は通らない。
人里離れていて、町に近い立地が気に入った。値切りの達人ショーは、180万円値切った。1週間思案して、130万円ならまけてもいいと持ち主は譲歩した。
「あの場所に家建てたいという人はありまっしゃろけど、あの倉庫潰すのは300万円ほど入りまっせ。あのままで買う言うのはわしぐらいです。買うたら、うちかて水道を中へ引いたりトイレ付けたりせんならん。180万円まけといて」
持主は、更に2週間考えた挙句、「ほな、その値段で…」と連絡して来た。
「ほれみろ。俺が買おうと思う値段で買えるやろ」
ショーは満足そうに笑った。が、すぐあとで、「もっと安う買えたかな?」と首を捻った。(もっとがまつう行くか?)
「上手に買うたわ。わたしやったら、一円もよう値切らんもん」
「そうや。お前はなんにも値切れへん。おれは値切らんと買われへん。言いにくいこと言うちぇなあ。まあ、お前は、もう15年も使おうと思うたら、お医者はんによう診てもうて、薬飲んだりした方がええで」
「お医者はん!? お医者はんなんかにかかったら、病気になるわ」
40年も、お医者さんに病気を治して貰ったことがない。倉庫の周囲に生薬を植えて、「生薬相談室」でも開こうかと思っているのに。皮膚のたるみが無くなるクスリ。80歳でも髪の毛が生えるクスリ。老眼鏡の要らないクスリ。認知症にならないクスリ。市販のものよりずっと確かなものを発明した。これだけでも商売になると思うけど、日本で、お医者さんがキライな人を探すのは、土地や倉庫を値切るより難しいか。