たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

災害救助を考えてみる 最近の取り組みとある海難事故への対応

2016-12-16 | 災害と事前・事後

161216 災害救助を考えてみる 最近の取り組みとある海難事故への対応

 

今朝の毎日・くらしナビでは、「支援物資、物流業者との連携」と題して、「熊本地震では発生直後、支援物資の運搬が混乱し、避難所の物不足が深刻化した。事態の改善に一役買ったのは日本通運などの物流業者。プロのノウハウを生かし、滞っていた物資の流れをスムーズにした。熊本地震を教訓に、仕分けから配送まで災害時の支援物資の運搬について業者と連携を強化する自治体も出てきている。」として、物流の各業者と自治体が連携するさまざまな仕組みを紹介しています。

 

具体的には、地震に備え、物流業者と災害時の協力協定を結ぶ自治体がすでに150以上に増えており、内容も

    集積所などから避難所への物資の配送

    自治体が用意した物資拠点で物流業者が仕分けや管理を担当

    物流業者の施設利用(荷物の受け入れ・仕分け・配送全てを業者に依頼)

と、それぞれ提携対象について独自性を出しています。

 

このような災害救助の方法をより実効あるものにする動き自体は、救援物質の効率的で安全な配送という点で、評価できると思います。ただ、気になるのは、よく言われる需給のアンバランスというか、地域毎、拠点毎に、場合によっては特定の被災者によっては、必要な救助物資が来なくて、必要でない、あるいはすでに過剰な物資が配送されるといった問題の解消ないしは最小化について、どう配慮されているのか、災害時の連絡網・情報伝達手段との関係構築が迅速になされないと、インフラ整備はできても、結局、無駄になりかねないおそれも危惧します。

 

ITAIなどの技術とその安全確保がより進展して、災害時でも有効に機能するようになれば、そのような不安も軽減するのではないかと思います。

 

とはいえ、災害救助法の基本的要請を満たすには、さまざまな救助が十全でなければいけませんが、上記の取り組みはその一部に過ぎず、しかもあくまで物資の配送に止まっています。むろん、物流業者のノウハウやさまざまな人的物的な能力はたしかに高いものでしょう。しかし、被災現場では、その場で対応してくれる人に手作りが重要な役割を果たしていると思うのです。ボランティアの役割です。地域の社会福祉協議会などが災害の中でも活動できる状態であれば、これらを中核に、経験あるボランティア団体との連携が重要ではないかと思います。被災者の声をしっかり受け止める体制にはこのようなシステムの構築が不可欠ではないかと思うのです。

 

災害救助法の救助の種類には以下の内容が定められています。

    避難所、応急仮設住宅の設置

     食品、飲料水の給与

     被服、寝具等の給与

    学用品の給与

 

    被災者の救出

    医療、助産

 

     死体の捜索及び処理

     埋葬

 

    住宅の応急修理

    住居又はその周辺の土石等の障害物の除去

 

これらはそれぞれ現場の状況や救助の段階(時期)に応じて、担い手も変わってくるでしょう。それをトータルに的確にコーディネイトすることが中核の組織として要請されるでしょうから、上記の自治体の取り組みも、実際の被災時には、臨機応変の対応が求められるでしょう。

 

ところで、いままでのが前置きというか、今日書いてみたい事柄の前口上でしょうか。というのは、もう一つの事件に注目していたのです。今朝の毎日は、14日早朝に松江沖で遭難し転覆した漁船の捜索が続いていた中、船内の2人死亡が確認されたと報じられていました。この記事を見て、なぜか971月に島根県隠岐島沖で発生したナホトカ号の遭難・重油流出事件を思い出してしまいました。

 

ナホトカ号の船主は、ロシア最大手の海運会社で、元は国営企業でしたが、この船が老朽船で船体構造が2重でなかったことなどに事故の主要な原因とも言われ、また、航行ルートも予定外のものであり、重油流出が拡散し、被害を拡大したことも操舵などに問題があった可能性があります。その結果、ロシア側に多額の損害賠償責任が認められています。

 

ところで、当時、ロシア側がこの甚大な被害に対して、適切な対応をしたのでしょうか。日本側はともかく厳しい天候の中、救助・防護体制を不十分ながら行い、多くのボランティアが活躍したことが話題になりました。

 

そこでプーチン大統領のことを取り上げたいと思うのです。彼は97年には、すでに中央政府の一員となり、出世街道をひたすら駆け上がり、3年後には大統領になっています。そのロシア政府は、このナホトカ号事件に対して、一体、どのような誠実さを示したというのでしょうか。たしかにプーチン大統領は、東日本大震災の時、支援物資を送るなどして、日本からお礼に日本犬を送ったということもあります。これはどこの国でもそのような支援はしていますし、特段取り上げるほどのものか、あったとしてもパフォーマンスのようにも見えるのは偏見でしょうか。

 

ともかくナホトカ号事件のとき彼は大統領でもないので、とくに彼個人を責めるのはどうかと思うことは理解できます。しかし、今回の遭難事故は、彼が訪問した山口県のすぐそばです。安倍首相を4時間でしたか待たせた上、平然として交渉に当たるのも彼なりの交渉術なのかもしれませんが、身近で起こった遭難事故、しかもその現場はナホトカ号事件とさほど離れていない場所で、少しは心をくだいた発言があってもおかしくはないように思うのです。

 

2週間以上前から先発隊がいろいろ安全チェックなどしたようですし、周辺の情報収集は十分にしているはずです。自分の身の安全ばかりでなく、交渉する相手国の漁民の生命が危機に瀕しているという情報はすでに入手しているはずで、いつでも少なくとも支援の声くらいはかけられたはずです。

 

というのは、彼はロシア国内で88%の支持率を得ているといった評判で、しかもその一因として多様なパフォーマンスを演じていることが上げられています。それが単に自国民に対してだけであれば、巨大国家のトップとしてはあまりに狭量ではないかと思ってしまいます。

 

最近、よく引用されるプチャーチンは、約162年前、条約交渉のためフリゲート艦・ディアナ号で下田に訪れていた際、安政東海地震の津波で、船が大破したにもかかわらず、軍医を派遣するなどして被災した住民を救済し、幕府もその誠実さを理解し、領土問題も解決して日露和親条約の締結を成し遂げたとも言われています。

 

時代も状況も違うので、同じように比較するのはどうかと思いますが、プーチンの自国民を誘導する姿勢と、他国の大統領や首相に対する優越的な姿勢は、まるでリーマンショックをおこしたウォール街の悪し企業トップの態度と似ていないのか、気になります。

 

あまり新聞報道だけで人を酷評するのは、プーチン大統領がすべてのマスコミを自分のいいようにリードしているのと、また、他方で、トランプ次期大統領がほとんどのマスコミを相手にせず自分だけの意見を一方的にSNSなどで告知するのと、似たり寄ったりとも思いますので、人の批判はやはり天に唾するようなものと反省しています。

 

ただ、このトップ会談、なにか相互に思いやりの気持ちが表れているのか、中身はわからないものの、何度も繰り返し交渉してきたにもかかわらず、そういった人の思いやりといったものがうかがえないのは残念です。