181114 人馬の触れ合い <人と馬との共生夢見て=C・W・ニコル>を読みながら
私がまだ子どもの頃、田舎では結構、いろんなところで馬が闊歩する姿を見ることができました。以前にもこのブログで書いたように思いますが、隣家が馬を飼っていて、私がある時期エサやりをやらしてもらっていました。とても可愛くて私は馬と一緒にいると心安まっていたと思います。小学低学年のときだったと思いますが、あまり学校になじめず、おそらく同級生ともあまり付き合いができなかったのではないかと思います。その代わり、この馬や他にブタや柴犬などもいましたので、これらの動物と遊ぶことが好きだったような記憶です。
馬は時折、障害のある子どもや不登校の子どもなどのために、乗馬クラブなどが触れ合う機会を提供することがこれまでもあったかと思います。他方で、北米などで普通に見かける乗馬して山や谷をトレッキングするといったことをやっているところはあまり聞かないので、希なのではないかと思っています。
以前、馬を飼ってみようかと検討したことがありますが、なかなか簡単でないので、実践に向けた動きはしていません。でもまだいつかチャンスがあれば馬で闊歩したいと思う高齢者の一人です。車は必要悪みたいに乗ってしまいますが、馬だとこれは断然違います。
そんなとき今朝の毎日記事<Country・Gentleman人と馬との共生夢見て=C・W・ニコル>では、ニコルさんらしい趣向のある企画が提案されています。
ニコルさんは、今は恰幅もよく高齢でもあるため動きが敏捷とはいえないかもしれませんが、北米で公園レインジャーなどで活躍されていたわけですから、機敏な動きをされていたのでしょう。そんなことを彷彿させる出来事をまず書かれています。
<私は今から50年前、皇帝ハイレ・セラシエ1世が治めるエチオピア帝国政府の野生動物保護省の猟区主任管理官として、辺境のシミエン山地に国立公園を創設する任務を与えられた。公園長に就任し準備にあたったが、道路も整備されておらず、学校も病院も警察もなし。電気すら通っていなかった。移動手段は徒歩か、馬やラバだけだった。>
公園長といっても、わが国の国立公園事務所に勤務する多くの職員のように、かなりの時間を事務処理で時間を費やし、現場パトロールの時間が余りとれないのとは大違いで、次のようにまさに危険と隣り合わせの活動をしています。
<私たちは定期的に現地の巡回をした。山賊や密猟者の取り締まりや公園の地図作製、野生生物と水の調査が目的だ。>ということで、わが国にも密猟者はいますが、アフリカだと相手も銃や武器を所持していますから、生死をかけた仕事だったでしょう。
定期巡回で治安が安定すれば、今度は観光による収益を考えるのは必然ですが、車道などないので、移動手段は馬かラバというのです。
<治安がよくなり安全に旅する環境が整うと、警察は旅行者にシミエン山地への入山を許可するようになった。とはいえ、険しい山で馬やラバを乗りこなすには、乗馬の腕や経験、何より現地の詳細な知識が必要だ。海抜4550メートルにもなる高地では、高山病にかかる恐れもある。夜は冷え込むので防寒着や暖かい寝袋の準備も不可欠だ。>
この厳しい環境でこそ本来の自然の醍醐味を五感で感じることができるわけです。その場合馬やラバは最高の友でしょう。私もわずかなトレイルですが、その境地の一端を感じることができました。
<しかし、こうした厳しい環境にもかかわらず、訪れる人々はシミエンに魅了される。馬やラバとの旅は、冒険の醍醐味(だいごみ)を与えてくれる。自分の五感を駆使し、より多く見て、聞いて、嗅いで、感じることができるのだ。>
ニコルさんは、多様な活動をされていますが、<1980年、北長野に居を定めた私は、地元の猟友会に入り周辺の山々を歩き回った。車では入れない深部にも足を運んだ。>そうです。そして黒姫高原で故郷ウェールズの森を思い浮かべ森の再生に取り組み「アファンの森」づくりを長年にわたって持続的な活動をされてきたことは有名ですね。
ニコルさんは、最近、外国人旅行者の増大する日本で、日本らしい固有の「馬文化」を再生させる観光のあり方を提案しています。
<私がかつて味わったような感動的な体験を提供できないかと考えていた。普段、人が立ち入らないところまで分け入って、日本の自然の素晴らしさを知ってもらいたい。それも身軽で快適な旅がいい。日本には古来、馬文化があるから、それを現代によみがえらせ、大型観光バスではたどりつけない自然に触れてもらおう、と。そんなツアーを「マウンテンサファリ」と名づけた。>
その内容はやはり素晴らしいのです。北米では似たようなツアーはありますが、日本の中でできるといいですね。
<私がかつて味わったような感動的な体験を提供できないかと考えていた。普段、人が立ち入らないところまで分け入って、日本の自然の素晴らしさを知ってもらいたい。それも身軽で快適な旅がいい。日本には古来、馬文化があるから、それを現代によみがえらせ、大型観光バスではたどりつけない自然に触れてもらおう、と。そんなツアーを「マウンテンサファリ」と名づけた。>
日本古来の「馬文化」と聞くと、?と思う若い人もいるかもしれませんが、長い歴史をもっていますね。むろん騎馬民族の到来などとも関係するかもしれませんが、おそらく2000年近い歴史があり、時代に応じて変化はあっても、つい最近までとくに農家では必需品の一つであったように思うのです。
そういえば、維新後10年目頃に来日したイザベラ・バードは、常に馬を連れて、東北を、北海道をと、日本各地を旅しています。アイヌ人とも逢っています。東北のおそらく日本人でも知らない僻地まで足を伸ばしています。彼女の旅は馬なくしては成り立ちませんでした。それでも当時の日本の馬は、バードにとってはラバのような大きさで、闊歩するには必ずしも適したものではなかったようで、結構、彼女らしい辛辣な批判をしています。といっても彼女は暖かく優しい目配りを絶やさないのですが。
話戻って、ニコルさんの企画内容は次のように魅力的です。
<私たちは2頭の馬を買い入れた。「マウンテンサファリ」の荷物を運ぶのにひと役買ってもらうためだ。野外料理で使う鋳鉄製のダッチオーブンも自分で抱えていく必要はない。たき火をおこせば、私自ら料理に腕をふるえる。ゲストには馬と触れ合いながら、山歩きを楽しんでもらう。キャンプ場に到着したら、おいしい食べ物と温かい飲み物が待っている。まずはアファンの森の散策から始めるが、いずれは1泊旅行も考えている。快適なテントに泊まり、夜は簡易ベッドで眠るのだ。>
最近は山、谷、沢、川、滝、海などあらゆるところに、さまざまな新種の移動手段、冒険手段をもちいる外国人、日本人が次々と企画を打ち出して楽しみですが、ニコルさんの企画のように馬の魅力を一杯詰め込んだものは一段と輝くように思うのですが、いかがでしょう。
私もニコルさんに比べれば若いのですから、人馬一体の新企画でも夢見てみたいと思うのですが、夢のまた夢かも。
今日はこれにておしまい。また明日。