たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

税負担と民主政 <消費増税 よみがえるバラマキ 井手英策>を読みながら

2018-11-22 | 税制

181122 税負担と民主政 <消費増税 よみがえるバラマキ 井手英策>を読みながら

 

今日はいくつかのケースを扱い、結構疲れてしまい、ブログを書く元気は消え失せていますが、帰る前にやっておくのが日課となっているので、選んだテーマが冒頭のものです。

 

今日もカルロス・ゴーン氏の報酬の巨額不正について、新たな事実が次々とでてきたと新聞紙面を賑わせています。本来は国税庁の脱税摘発が端緒になってもおかしくない事案ですが、報道で指摘されているとおりだとすれば、トップ2人の独裁体制で秘密のベールに隠れていたのですから、マルサもお手上げだったかもしれません。その意味で、内部告発と司法取引新制度が絶妙に機能して、不正を暴いた最初のケースといえるかもしれません。検察発表通りだとすればですが。ゴーン氏の弁護人からの発言もなく、複雑なケースでしょうから、起訴後の公判で争点や事実が次第に明らかになるのかもしれません。

 

それにしても記事からうかがえるのは、巨額の収入を得ていたゴーン氏でさえ、税金の支払がよほど嫌いだったように見えます。税はなんのためにあるのか、政治はなんのためにあるのか、グローバル企業、そのトップのあり方が問われそうな印象です。

 

ひるがえって、増税一般も嫌われますが、とりわけ消費増税は国民から?嫌悪されているような印象を報道から感じてしまいます。それは国会の議論がそうなっているからかもしれません。

 

そのような私の感触を、わかりやすく整理していただいたのが井手英策慶応大教授の解説でしょうか。毎日記事<月刊・時論フォーラム消費増税 よみがえるバラマキ 井手英策>が消費増税をめぐる国会議論について、<よみがえるバラマキ>と指摘して、その問題性に言及しています。

 

<昨年10月の衆議院議員総選挙において、消費増税2%の使途変更が争点となり、財源の一部が幼保無償化等へと振り向けられることとなった。当初、使途変更を提案していた旧民進党が分裂し、消費増税の反対へとかじを切った一方、小さな政府を志向しがちな保守政党が幼保等の無償化のために増税を訴えるという「ねじれ」が生みだされた。>と政党の立ち位置の逆転現象を選挙と絡めつつ、戦後日本における左右政党の基軸がいずれも揺れていると整理しています。

 

とりわけ軽減税率をめぐる議論の混沌状況でしょうか。

 

<そもそも低所得層対策との名目から開始されたが、税率の軽減効果は中高所得層にもおよぶ。また、一定の税収を確保しなければならないなかで軽減税率を設けてしまうと、標準税率分をどうしても高めに設定しなければならない。>まあ言えば軽減税率自体の成立根拠が疑われているのに、あれこれ議論が活発にされているわけですね。

 

<軽減税率の適用対象をめぐって政治的な対立が引き起こされる。・・・どこで線引きをすればよいのかは、理屈だけでは決められない。事実、現在の日本でも、混乱を招いている。>一体何のための議論なのかと疑問を感じる人が少なくないのが現状ではないでしょうか。

 

はたまた<キャッシュレス決済>や<「プレミアム付き商品券」>まで取りざたされ、ますます本来の消費増税、しかもわずか2%の増税であたふたしているように思えるのです。その本来の目的が一向に注目されない印象ですし、低所得層対策とかに着目した制度設計が適切に議論されているのか疑問を抱かざるを得ません。

 

地方税さえ取り上げられ、自治体の悩み懸念が増大しつつあるという状況です。

<自動車の購入台数の減少を避けるため自動車関係税の軽減も検討されている。>

 

しかし、<なぜ自動車業界だけが減税の恩恵を受けられるのだろうか。しかも自動車税は地方税だ。国税の増税を地方税で戻すことに正当性はあるのか。>まったく議論の合理性が理解できません。

 

結局、このような軽減税率や負担軽減策(より直裁にいえばアメの提供)は本末転倒でしょう。

井手氏は<負担軽減のための制度設計が優先され、本来の目的、幼保の無償化に向けた具体的な制度設計は置き去りにされている。現場の怒りと不安は頂点に達しつつある。>と批判していますがごもっともです。

 

そして井手氏は次のように、現在の軽減税率等をめぐる議論を総括して、代替案を提示しています。

まず、<そもそも軽減税率は不要だった。>

ではどうするかですが、<低所得層対策を実施したいのであれば、例えば、直接その層に給付が集中する住宅手当を創設すれば、不要な混乱を抑えながら本来の目的を達成できたのではないか。とりわけ、日本では低所得層向けの普遍的な住宅手当制度が存在しない。また、子育て世帯だけではなく、貧しい高齢者も含めたより広い受益層を生むことができたはずだ。>

 

次に<景気対策>については、<パッチワーク的に、あるいは特定の業界だけに負担を軽減する>のはやめ、<職業訓練の充実や研究開発、防災など、経済の成長力につながるような投資を行うこともできたはずである。>というのです。

 

最後に、<自民党の政策は、表面的には社会民主主義化した。だが、総花的なバラマキという昔見た光景が、税を財源とする新たな装いでまたよみがえろうとしているようにしか僕には見えない。>そうバラマキですね。

 

で、日本で繰り広げられている民主政という名の選挙で選ばれる議員(さらに政府中枢に選ばれる議員)の心中、そして国会での議論は、どうやらいかに一票を投じた人たちに少しでも多くの利益還元をするかにかかっているような印象を拭えません。増税なんてもってのほか、真剣に話題にしてその重要性を語ると投票してもらえないと思っているのかもしれません。

 

増税の必要性、使途の合理性を丁寧に説明して理解を得る努力が議員に欠けているという印象は間違いでしょうか。負担を極端に演出し、景気の悪化まで当然のごとく誘導する姿勢には、本気でわが国の将来を見据えた信念があるとは思えないのですが。誤解出なければいいのですが。井手氏の指摘が国会議員に少しでも届くといいのですが。

 

30分で終えようとおもっていたのに、とっくにすぎてしまい45分くらいかけてしまいました。今日はこのへんでおしまい。また明日。