たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

欲望と法の支配 <大阪万博>と<盗撮罪>について記事を読みながら

2018-11-24 | 心のやすらぎ・豊かさ

181124 欲望と法の支配 <大阪万博>と<盗撮罪>について記事を読みながら

 

昨夜からとても冷える感じで、夜明け前に一度目覚めました。次は朝日が高野連峰と雨引山をはじめ紀ノ川に稜線を落とす峰々を照らして彩色の変化を楽しむことができました。そういえば昨夜は望月が少し柔らかくなったくらいでその輝きもまた見事でした。

 

そのせいか今日は高野連峰はもちろんのこと、吉野方面はもちろん、東方には40km以上先にある国見山が見事な三角錐をとりわけ際立たせていました。南方は七重、八重どころか、もう数えられないほど、たくさんの見事な形状の峰々が連なっていました。もしかして大台ヶ原まで見えていたのかも・・・ほんと素晴らしい山岳景観でした。

 

こういった朝日や、月光、山脈の連なりなどに感動していると、変な感覚にはなれないのではと私流の考えがふと浮かんできます。

 

盗撮の話です。私も当地にやってきて刑事事件で何件か担当しましたが、なぜこんなことするのかいつも被疑者・被告人と悩みを半分くらい共有します。でも結局、私には理解できないため、厳しく当たりますね。なかなかこの盗撮への思いが直らないようです。被害に遭った女性は傷つき、刑事処分があっても、その画像がどこかで流出されるか不安が続くでしょう。

 

そんな思いになったのは今朝の毎日記事<論点「盗撮罪」創設>をめぐって賛否の論者が意見を述べているのを読んだからです。

 

まず問題の所在が

<スマートフォンの普及で増加する盗撮行為。被害拡大を受け、現行法には取り締まりの「抜け穴」があるとして、刑法改正による盗撮罪の創設を求める動きが出ている。一方、刑法による摘発は慎重を期すべきであり、創設は時期尚早との意見も。いつ誰が被害に遭ってもおかしくない盗撮。どう対処すればいいのか。【聞き手・椋田佳代】>と切り出されています。

 

上谷さくら・犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長が<拡散防ぎ救済必要>として、賛成の立場で強力な意見を述べており、私も基本、支持します。

 

跋扈する盗撮とその危険の拡大を踏まえて、<電車や公園、道路上など公共の場での盗撮なら都道府県の迷惑防止条例によって、撮影対象が18歳未満なら児童ポルノ禁止法や軽犯罪法などで取り締まられているが、現行法には抜け穴がある。>という指摘は同感です。

 

実際どんな問題があるかをリアルに指摘しています。

<軽犯罪法はトイレや浴場におけるのぞき見を禁じているが、罰則は拘留や1万円足らずの科料にとどまり、画像データの没収もできない。迷惑防止条例は公共の場での規制を主な対象としており、室内での取り締まりには地域差がある。成人がカラオケボックスなどの私的な領域で盗撮された場合、処罰できないことがある。カメラの性能向上に伴って画像は鮮明になっている。被害者が盗撮されたことに気が付かずに表面化していない被害は多いだろう。>

 

私も同種の事案を扱いましたが、ほんとに被害者が気づかないことが結構あり、それがネットとかに掲載され、知り合いから教えられるということが少なくないのではないかと思います。いや加害者がずっと隠しもっていることもありますね。

 

被害者が受ける驚異、不安、さらに心身症など精神的被害は止めどもないかもしれません。

上谷氏が指摘する<学校や会社のトイレ・更衣室で盗撮されると、毎日通っていた場所に怖くて足を踏み入れられなくなってしまう。温泉の脱衣所で着替えを撮られ、知人からネットに載っていると聞かされるケースもある。会社を辞めたり、学校に行けなくなったり、人生への影響は甚大だ。>という状況は理解できます。

 

現行法では画像が没収される場合が限定されていて、先の軽犯罪法の場合以外でも、問題が取り残されるのです。

<容疑者が逮捕されて警察が家宅捜索し、パソコンやスマートフォンから盗撮画像が出てきたとする。証拠としてまず押収されるが、盗撮行為が犯罪の構成要件の対象外である場合、捜査が終わった段階で盗撮画像を強制的に没収する手段が現状では存在しない。たとえ刑事裁判で被告の刑が確定しても、画像データが残っていれば被害者はいつまでも安心できない。私自身、これまで「画像を何とか取り戻してほしい」という性犯罪被害者の声を何度も聞いた。>

 

<着替えや裸の姿を無断で撮影することは性犯罪だ。盗撮は全国一律で厳しく取り締まる必要がある。フランスやシンガポールなど諸外国には盗撮に対する規制がある。2020年東京五輪までの法案成立を目指したい。>という気持ちは理解できます。

 

日本男児ということばが残っているとは思えませんが、少しは男らしく(性差別的表現で申し訳ないですが)卑怯なまねはやめてもらいたいですね。

 

他方で、石塚伸一・龍谷大法学部教授は<共通認識なく早計>と批判しています。

 

刑法・特別刑法が人の自由を国家権力が奪う仕組みであることは確かですので、安易な刑事法の拡大は特に謙抑的であることが求められるという点は賛同します。

 

しかし、石塚氏が問題の盗撮と肖像権侵害例とを同様に扱うのは疑問です。むろん盗撮ないしは撮影行為という点では同一で、対象が異なり、性的評価が加わる点が違うのでしょうか。

 

石塚氏は<現段階では盗撮行為によってどんな権利の侵害が起こるのか、社会の共通認識が未成熟だ。>というのですが、肖像権で問題となるのは基本、性的評価は加わらないでしょう。その性的興奮をもたらすような対象か否かはたしかに場合によってはグレーな部分もあるでしょうけど、たいていの場合明白ではないでしょうか。これまでも条例・軽犯罪法で構成要件を絞ってきたのですから、そのレベルで規制可能だと思うのです。

 

社会の共通認識が未成熟って誰のことなんでしょう。その状況を私は想定できません。加害者が未成熟な意識かもしれませんが、それは保護されるものでしょうか。

 

日本人の伝来の仏教では、五戒の一つ<不邪婬戒(ふじゃいんかい,  不道徳な性行為を行ってはならない>は、女性との接触すら禁じていたのですから、基本、女性(男性もありでしょう)の下着とか裸を見たり、それを撮影するなどもってのほかで、いけないことは子どもでも(子どもを軽く見るつもりはありません)理解できています。

 

なお、明治維新頃までは女性も男性も公衆風呂場で混浴していた場面もあったようで、女性が裸のママ風呂場から出て街路を歩いている異人を見ることも社会的な許容があったようですから、当時は異なる慣習があったと思いますが、盗撮はなかったのですから、まあ盗撮を許容するような社会意識が存在したわけではないですね。

 

石塚氏は<盗撮はどうか。科学技術の発達により、簡単に写真を撮影し、保存、再生できるようになった。急速に発展する分野であり、今後どのような侵害形態が登場するか予想もつかない。権利意識も侵害形態も未成熟な段階で新たな刑法の犯罪とするのは早計だ。>と言うのですが、私には未成熟な段階という位置づけが理解できません。

 

民事賠償でよいなんて意見は、問題の本質というか被害の実態を理解しているとは到底思えません。被害者の人のうち、どのくらいの人から、どの程度ヒアリングしたのでしょうね。民事賠償ではとても回復できない被害であることを理解する必要があると思うのです。

 

むろん石塚氏が指摘する<盗撮罪の対象を性欲充足のための撮影に限定したとしても、何が盗撮に当たるのか、罪の範囲を定めるのは難しい。>との指摘は重要ですが、クリア可能な問題ではないでしょうか。

 

この議論はこの程度にして、大阪万博の話を簡潔にまとめたいと思います。

 

25年万博開催地が大阪決定は、苦労されてきた多くの人にとってとても喜ばしいことだと思います。

 

ただ、夢洲という適切な土地利用がなかった土地について、万博とIRで将来的な魅力的な開発地として再生させようという為政者たちの考えは、大衆迎合的な(これは言い過ぎかもしれません)欲望の行き先としてもっともと思いつつ、それしかなかったのかと少し残念に思うのは庶民の一人の思いです。

 

私は、いかに魅力的な催しがあっても大勢が詰めかけ何時間も待つといったものにはあまり関心が湧かない性格のようです。70年の大阪万博も、一度訪れましたが、あの大挙する人の群れに圧倒され、どこか一カ所か二カ所、人気のない展示会場を見てすたすたと帰りました。愛知万博の時は開催前の環境アセスを問題にして、里山景観が残る状況を視察しましたが、開催中は一度も訪れていません。では昨夜決定した25年の大阪万博はというと、外からの情報で満足しようかと思っています。

 

毎日ウェブ情報では<大阪万博未来への挑戦、夢再び コンセプトは「非中心」 AI、VRに「禅」の精神表現も>ということで、いろいろアイデアが競い合っているようで、それ自体は興味を感じています。

 

 <■IoTで健康増進

 ■ストレスゼロ

 ■再生医療で若返り>など、テーマはおそらく世界各国の多くの関心を呼ぶものにはなりそうです。

 

私自身は別の視点から考えてみたいと思っています。それは開催場所が夢洲であり、廃棄物処分場としての地盤的特質をもっていることから、海面利用と廃棄物処理の再生のあり方を万博やIR会場、それからの活用に、地域圏の交通計画など大阪全体がどう変わっていくかを、法の支配と環境保全の観点から、これからも見ていきたいと思っています。

 

それに開催期間を含め将来にわたり、南海トラフ地震・津波に襲われるリスクが高い中、大勢が夢洲に集まることはリスク拡大のおそれもあり、その対策をどうするのかも、注視していきたいと思っています。

 

今日はこのへんでおしまい。また明日。