塗料が缶に残った場合は地面に捨ててでも、とにかく空缶を大切に集めて
写真を撮れば、塗装監理が終わったような話である。
「クダラナイ」といえば同感出来るし《ヤレ!》と言われても、やってら
れない話である。
ペンキを頭からかぶるようなシーンが、映画や劇に出て来るのは塗装屋さ
んから見れば、パイを顔面にぶつける喜劇のようで、侮辱されたような気
分になるのではあるまいか。
(一時的に笑わせる為の小道具に、建設材料を使って欲しくない)
私の好きな塗装シーンは「トムソーヤの冒険」の塀のペンキ塗りの一幕
である。
そのシーンを少し回想すれば・・・。
父母をなくしたトムはポリーおばさんに育てられてイタズラっ子だが、
どことなく憎めないところを持っていて頭の回転が速いのも人気の秘密
であろう。
イタズラの代償にポリーおばさんから、丸一日はかかりそうな長い塀の
ペンキ塗りの仕事を言われて、長いブラシを肩に塀の前でため息をつく
(しっくい塗りが正解だったかな?)
ペンキ塗りが終わらなければ遊びに行かせてもらえないし、ペンキを
一度ブラシで擦っただけでもう木陰に行って、サボる方法を考えていた
ら友達がやって来るのが見えた。
「おい、仕事させられているのかい?」
全く気がつかない振りをして、楽しく歌いながらペンキを塗っていると、
友達のベンが、
「面白そうだね?トム、僕にもさせてよ」
「だめだよ、こんな楽しいものは毎日やれないし、親友にもさせないよ」
ブラシで一塗りしては右から左から眺めている。
この一挙一動を見ていたベンはペンキ塗りに非常に興味を持って、
「このリンゴ上げるから少し塗らせてよ…」
「う~ん、少しだけだよ」
ベンと交替して塗り始めて、ベンがそろそろ飽きるころに、また友達が
やって来る。
「ビー玉と交換して、塗らせてくれないかい?」
同じようなセリフで次々と友達が変わってはポケットにどんどん財産が
増えて行く。
トムは木陰でノンビリしている間に、塀は塗り上がっていく・・・。
夕方に「よくやったね」とポリーおばさんにほめられて、リンゴを
もらって、いたずら好きの少年のウインクで終わる。
「仕事」というものは、しなければならないからする事。
「遊び」とは しなくてもよいのにする事。
トムは遊びの中から二つ学んだと私は思っている。
では、楽しい塗装工事を監理する話として……
***********(日立建機PR誌ティエラ76号から)************
塗装工事の目的は仕上がり面を華やかにすること。この『色を付ける』
という作業、簡単なように見えて実は施工監 が難しいものなのです。
塗装工事の監理について話をしましょう。
《塗装工事3へ 続く》