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会話シリーズ 怒 の編
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単身赴任に慣れているものの、静岡県で数回経験した現場にはイイ思い出が一つもない。
県境の宇利トンネルの手前で何度、引き返したい思いをしただろうか。
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「お前ら、名古屋から来ても、朝礼までには間に合わせろ」
(あんたは家から現場まで80分だから間に合うでしょうが、我々名古屋人は無理だ!)
「こっちの職人は8時には現場に来ている、朝礼に間に合わない、なら!」
「ならば?」
「単身赴任用に借り上げた住宅に、日曜の晩に戻って来い」
(月曜日の朝礼だけは9時からにしろよ、時間変更の度胸もねえのか!)
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★新しい現場に単身赴任して2ヶ月過ぎると月に2度自宅に帰れる旅費が支 給されるのだが、家族持ちには毎週、自費でも帰りたいものである。
「支給のJR帰省(普通車)旅費では片道の高速料金にも足りません」
「予算がない。現場から借り上げ住宅までの交通費しかない、嫌なら引越しだよ」
(5ヶ月間のあんたの現場の為に、引越ししろだと?)
「お前らの自己都合だからね、単身赴任は。だからアパートを借りたンだ」
(あんたは週に2度も名古屋支店に行く用事を作って、現場の交通費から家に帰るのは不公平だぜ!)
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★単身赴任では、栄養の心配よりも21時過ぎたら食事にありつけない心配がある。(コンビニは遠くに1箇所あった程度だった…)
「晩飯のラーメン定食は食い飽きたなあ」
「俺は3日間、味噌汁と漬物で過ごせるよ、酒も飲まんし」
「美味いもん食わなきゃウマい仕事は出来ねえ!皆、焼肉でも行くか」
「お前ら、晩飯の焼肉代は自腹だぞ!」
(あんたに銭出してなンて言ってない、一緒に行く気もないワ!)
「もう…このままアレ残して、名古屋へ帰ろうよ、福さん」
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★更に、食い物の恨みは引きずるものだ。缶ビールが1本も冷蔵庫に無い、真夏の残業時に、
「お前、仕事場にビール持ち込むな」
「今、夜の8時で晩飯なし、残業代無しにビールも無しで?
(やってられるか)!」
「仕事しながら酒を飲むのか?」
「皆、仕事やめよう、(今日は帰ろう!)」
「まだ明日の打ち合わせが終わってないぞ」
「(明日まで命が持たン!)先に帰る!」
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静岡県での数々の情けなかった思いでは、雄大な富士山を見てから、もう忘れることにしよう・・・。
会話シリーズ《喜・怒・哀・楽》より
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