どうご温泉

　60歳をとおに過ぎた年配のお客Eさんが、「四国が好きで昔はよく南港からフェリーに乗って行った」と言った。
　
　客E 「若い頃、四国へよう行ったわ。安かったからなあ」
　私　「何が安いのん？」
　客E 「船賃や」
　私　「ふにゃちん？」
　ママ「マスターはふにゃふにゃで役に立たんからなあ」
　客E 「冷凍室に入れたら固なるで」
　私　「それも、エエなあ」
　ママ「冷凍だけにカチンとくるわ、話を逸(ソ)らせたらアカンがな！」
　私　「それで四国の何処がエエのん？」
　客E 「道後温泉によう行ってたわ。何となく落ち着くねん」
　ママ「夏目漱石の坊ちゃんのゆかりがある所やね。今は行ってないの？」
　客E 「長いこと行ってないわ」
　私　「Eさん、若い時もエエけど、今、行かなアカンやん」
　客E 「なんでやねん」
　私　「老後温泉。老後に行くトコや」
　客E 「ほんだら、マスターもやん」

　一句：賞味期限　切れた人行く　ろうご(道後)の湯

レパートリー

　常連のN美さんが女友達のH子さんを連れてきた。50歳のH子さんは歌が好きでレパートリーは幅広いらしい。
　
　N美「H子ちゃん、こう見えても嵐の歌も唄うねんで」
　私「えー、嵐て、嵐寛寿郎か？鞍馬天狗の歌でも唄うんか?」
　N美「違う、ジャニーズの嵐やん」
　私　「へえ、ジャニーズの嵐？俺、知らんわ。歌、よう知ってるんやなあ」
　N美「それにマニアックな曲も知ってるで。とにかくレパートリーが広いねん」
　私　「ほう、レパートリーが広いて、軍歌からご詠歌まで唄えるんかいな」
　N美「ご詠歌はカラオケには無い！」

　一句：レパートリー　増やして楽しむ　カラオケファン

地図

　お客さんと大阪市内の地理事情について話をしたが、ママは会話に入ってこれない。

　ママ「私はあんまり地図を見(メ)ーへんから地理は苦手やわ」
　お客「男は車を運転するから大体地理は得意やなあ」
　私　「俺、昔から地図を描いてたから地理は得意やわ」
　お客「へえ、いくつぐらいの時から地図を描いてたん？」
　私　「幼稚園の時に世界地図描いてた。それも目を瞑って描けるんや」
　お客「すごいな、天才やん」
　私　「布団にやけどな」
　ママ「それ、お寝しょうやん」

　一句：お布団に　地図かき怒られ　べそかいた

幼児虐待

　最近、幼児虐待が多い。当然ながら店でも話題になる。児童相談所が様子を見に行っても、親が「大丈夫や」とか「しつけや」と言うと家庭内の問題だからと深く立ち入る事が出来ない。
　また児童相談所員が傷跡を見つけて「これは誰にされたの？」と子供に聞くと、ぶつけたとか転んだとか、そういう言い訳をして精一杯自分の親をかばおうとするとか。

　私　「自分が虐待されても、親をかばう子もいてるもんなあ」
　お客「いたいけやなあ。児童相談所では手緩いから近所の人が警察に訴えんなアカンなあ」
　私　「俺とこも警察に訴えてや」
　お客「何を訴えるのん？」
　私　「虐待されてるねん」
　お客「どない虐待されてるのん？」
　私　「ロープで縛られて、ローソクとかムチでいたぶられてんねん」
　お客「それ、SMやんか。虐待とは言わんで」
　私　「そうかいな、俺もムチ(無知)やなあ」

　一句：通報で　幼児虐待　阻止しよう

青酸カリ

　79才ながらシャレの好きなお客さんが来た。

　私　「いらっしゃいませ、飲み物、何しましょ？」
　お客「青酸カリ、おくれ」
　私　「え～、青酸カリ？死なすのにはまだ早いわ」
　お客「なんでや、ワシ、もう死にたいねん」
　私　「不景気やのに…。売り上げが落ちるから店をやってる間はまだ死なせへんで」
　お客「ほんだら帰る時、精算は借りやで」
　私　「せいさん、かり…そう来るか。１本とられたわ」

　一句：シャレ駆使し　カリを乞うのは　年の功

在宅花見

　私の家の横の川(環濠)沿いに遊歩道があり、それに沿って桜の木が並んでいる。その中の一番大きな桜の木が私の家の横に立っている。
　2階の窓を開けるとその満開の桜の木が目前まで迫り、我を見よとばかりに咲き誇っている。
　さらに川沿いには多数の鯉のぼりが飾られ、さらりと流れたそよ風に吹かれて優雅に泳いでいる。
　眼下を見ると、時々川面を走る環濠クルーズの周遊船の乗客や遊歩道の歩行者が、満開の桜と群泳する鯉のぼりに目を楽しませている。
　私は心が浮かれて冷蔵庫から取りだしたビールを飲みながら、桜色の春を味わった。
　
　一句：春爛漫　心うきうき　花見酒

バレー

　今日のお客さんは大学に行ってる娘さんの話をしだした。

　私　「娘さんは大学で何かスポーツしてるの？」
　お客「バレーや」
　私　「ああ、白鳥の湖とか…」
　お客「違う、それは踊りのバレーや。うちの娘はバレーボールや」
　私　「ああ、『サインはV』の？」
　お客「昔、見たわ。岡田可愛が主役で、魔の変化球サーブで勝利に導いたドラマや」
　私　「必殺技は他にエックス攻撃や稲妻落とし、メーク落としもあったなあ」
　お客「メーク落としてなんやねん」
　私　「女の子やから、終わったら化粧を落とすやろ」
　お客「バレーの必殺技には関係ないやん」
　私　「それはそうと、バレーやってたら背が高いのと違うの？」
　お客「うん、130cmや」
　私　「低すぎるがな。ひょっとしたら座高やて言うんやろ」
　お客「バレーたか」
　私　「きっちり返すなあ」
　お客「バレーだけに(打ち)返さなアカンやろ」

　一句：軽いなあ　あんたのギャクは　バレバレーや

肥満

　禁煙して肥満になったとお客のW君が嘆いていた。W君の友人A君と私は痩せる方法を提案した。

　私　「体重は一体、何キロになったん？」
　客W「98kgや」
　私　「もうちょっとで3桁やなあ」
　客A「98て、スーパーの値付けみたいやなあ。98円、998円みたいに」
　私　「桁違いで安く感じるからなあ。それはそうと、セックスしたら痩せるで」
　客A「ホンマやなあ、W君は激しそうやからなあ」
　客W「ヘルニア気味やから、腰痛めるわ」
　私　「女性に上に乗ってもろたらエエねん。腰に負担がかからんわ」
　客W「俺、ジッとしてるだけやろ。それやったら痩せへんやん」
　客A「そうか、腰に負担がかからんと、痩せる方法はないかなあ」
　私　「そうや、食事制限がエエわ。知り合いで20kg痩せた人いてるわ」
　客W「20kg痩せたいうても元の体重が200kgやったら、代わり映えせえへんで」
　私　「その彼は80kgから60kgになったんや。ポイントはカロリー計算をする事や」　
　ママ「そう、1日に1800カロリーに抑える。お肉食べてもエエねんけど、一切れにするとか」
　客W「一切れて、なんか侘しいなあ」
　私　「自分の肉を食いや。肉が食べれる上に食べた分だけ身が減るし一石二鳥や」
　客A「それエエなあ、W君は霜ふりやから美味いで」　
　ママ「私達、優しいなあ。B君の身体のこと心配をして…」
　客W「それって心配と違(チゴ)て、酒の肴にしてるやん。この恨みつらみは忘れへんで」
　私　「W君は恨みつらみよりハラミが美味しいで」

　一句：メタボ腹　肴にされて　腹を立て

出会いは？

　若手のA君が、ちょっとアカぬけたB子ちゃんを連れて来た。B子ちゃんは横浜出身で、最近、離婚したらしい。元亭主は三重県の人だとか。

　私 「三重県の男と横浜の女が何で一緒になったん？」
　B子「彼は三重出身だけど、法政大学に入学して東京へ行ったの」
　A君「そして、元亭主が横浜に遊びに行った時に彼女と出会いゲットしたんやて」
　私 「なるほど。で、堺へはどうして？」
　B子「結婚してから元亭主の仕事の都合で堺に来たの」
　A君「そして、離婚したので俺と付き合うようになったんや」
　私 「結局、元亭主はA君の為に堺に持ってきたみたいなもんやな」

　一句：感謝せよ　出会いのきっかけ　元亭主

毛が生えた！！！

　昨年の8月ぐらいから健康雑誌に掲載されていた手作り育毛シャンプーを使い始めました。
　当初はハゲがひどくなったり皮膚に湿疹が現れたりと、心配して一時はシャンプーを止めたのですが、後で好転反応だと知りコツコツと続けました。
　それが、それがですよ、春の訪れとともに若葉が芽をふくように、私のツルンツルンの頭のてっぺんから産毛が生えてきたのです。
　私は執念で努力を積み重ねたら願いが叶うことを証明したんです。
　嫁さんも「よかったね」と泪して喜んでくれました。

　でも、ちょっと待てよと、鏡をのぞきこみました。

　「これから店でハゲネタが出来んようになるなあ」

　仕事をとるか、見映えをとるか…
　このまま育毛シャンプーを続けるべきかどうか…
　私は大いに悩みました。
　客商売をしていなかったら悩むことはないのに…
　悩んでいるうちにまた毛が抜け始めました。
　私は因果な商売を恨みました。
　お～、神様。私はどうしたらいいのですか。教えてください。



　作り話はこれくらいでよろしいですか？
　今日は4月1日・・・・・

　一句：四月馬鹿　ヒトをかついで　馬鹿笑い