月が挙動不審!太陽の前を行ったり来たり「逆再生か?」NASA
今月7日、米航空宇宙局(NASA)の太陽観測衛星「ソーラーダイナミクス天文台(SDO)」が、月が太陽の前を行ったり来たりする不思議な動きをとらえた。月は太陽の前を通り過ぎたあと、一瞬止まって、再び元来た方向へ戻っていった。いったいなにが起きているというのか?
この動画は、月が太陽の前を通過し始めた7日午前7時(世界標準時6日午後10時)から、太陽を完全に通過した7日午前11時9分まで約4時間かけて撮影した画像をつなぎあわせたもの。
動画のなかで、月は左から右上へ進んだ後、立ち止まって、もと来た方向へ戻っていく。まるでリバース動画のように見えるこの動きは、SDOと月の周回速度の違いが引き起こした現象だ。
SDO衛星は、地球から高さ3万6000キロ上空を秒速3キロで周回しながら太陽を観測しているのに対して、地球から38万キロ先にいる月の平均軌道速度は秒速1キロ。
そのため、SDOが周回軌道上で月を追い抜き、地球の夜側を回っている間に月に追いつかれると、月が衛星から逆方向に離れていくように見える「逆行」という錯覚が起こるのだ。
この現象を理解するには、天文学者のクリストファー・クロケット(Christopher Crockett)さんの説明を引用しよう。「高速道路で追い越し車線に入って前を走る車を追い抜くとき、ほんの一瞬だけ、その車が後退して行くように見える瞬間がありますが、走り続けるうちに、自分と同じ方向に前進していることがわかりますね。これと同じことです」
同じことが地球より遅い動きをするほかの惑星にも言える。たとえば、地球が水星や木星、土星を追い越すときも、これらの惑星は地球よりもゆっくりと公転軌道を動いているが、地球から見た場合に、見かけの動きが逆行しているように見える。
この見かけの逆行運動は、コペルニクスが太陽中心説を唱えるまで、地球が宇宙の中心だと考えていた古代の天文学者の頭を悩ませ、「惑星」という名前の由来となった。ギリシャ語で「惑星」は「さまようもの」を意味する言葉だ。