かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 210(アフリカ)

2019-04-08 19:28:27 | 短歌の鑑賞
馬場あき子の旅の歌28(2010年5月実施)
    【飛天の道】『飛天の道』(2000年刊)171頁~
    参加者:曽我亮子、F・H、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部 慧子 司会とまとめ:鹿取 未放


210 ある飛天みれば髭ある美男なり空なるほかの棲みどころなき

          (レポート)
 飛天と言えば天女を想像しがちだが、そうでもないようだ。たとえば薬師寺東塔水煙の飛天に両性があると、会津八一は『自注鹿鳴集』にことわり、「すゐえん の あまつ をとめ が ころもで の ひま にも すめる あき の そら かな」の一首を残している。掲出歌の天空を遊行しているらしい「髭ある美男」を「なり」と断定するのは差し支えもないが、「空なるほかの棲みどころなき」としているのは唐突な感じがする。何故導き出されたのか。思えば作者にはぎりぎりのところに生きる男性(雄ごころ)へ、まなざしを向けた作品がある。美男のかんばせに若い宗教者の悲痛な覚悟をみたのかもしれない。(慧子)


     (当日発言)
★慧子さん、会津八一の歌は、女性の飛天を詠んでいますよね。そうすると「飛天に両性がある」
 というのは詞書きか、別の部分に書いてあるのかしら?馬場の歌の「空なるほかの棲みどころな
 き」は、素直な接続だと思いますが。(鹿取)


     (まとめ)
 莫高窟であまたの飛天の絵を眺めていると、女性だけではなく髭のある美男の飛天がいた。絵に描かれて空を飛ぶ飛天には空の他には棲むところはない。地上にあれば恋をしたり家族を持ったりもするだろうが、飛天はわれわれのような生活を持たない。その精神的な存在の在り方に作者はかすかなかなしみを抱いたようだ。(鹿取)


コメント
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