かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 297(トルコ)

2019-07-11 18:12:48 | 短歌の鑑賞
      馬場あき子旅の歌40(11年6月) 【夕日】『飛種』(1996年刊)P132~
      参加者:N・I、鈴木良明、曽我亮子、藤本満須子、H・T、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:藤本満須子 司会とまとめ:鹿取 未放
                     
297 晩年の浪費のごとくエーゲ海の夕日しづかに沈むまで見る

       (レポート)
 エーゲ海と聞けばトルコを代表する高級リゾート地、港には数多くのクルーザーが係留され、真っ白い家並みが丘の斜面にまぶしく光る。紺碧のエーゲ海の深い色合い。どこかの城塞か、丘か、どこから眺めているのか分からないが、それは問題ではない。美しいエーゲ海に夕日が沈んでいく景をじっと見つめている作者。(藤本)


     (まとめ)
 「沈むまで見る」のだから、かなり長い時間、見ほれていたのだろう。そしてその景は作者の心を充たし豊かな気分になったのだろう。その喜びを「晩年の浪費のごとく」と形容したのだろう。エーゲ海の夕日を讃えた文章は無数にあるだろうが、見る位置は違うがたまたま手元にある本から引用しておく。(鹿取)

  私はパルテノン神殿の巨大な大理石の円柱のかげに立ち、エーゲ海にまっさかさまに落ちて行
  く太陽を望見した。息づまる美しさとは、あのような美しさを言うのであろう。美しさを通り
  こして、それは荘厳であり崇高でさえあった。太陽が姿を消すと同時に急速に寒さが加わって
  きたが、私は身じろぎ一つしないで、残照の空と海を見比べていた。
                          小田実『何でも見てやろう』

                          
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