かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 118

2020-11-04 19:48:39 | 短歌の鑑賞
   ブログ版 渡辺松男研究13【寒気氾濫】(14年3月)まとめ
     『寒気氾濫』(1997年)48頁~
      参加者:崎尾廣子、鈴木良明、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:崎尾廣子 司会と記録:鹿取 未放
 

118 ときに樹は凄まじきかなおうおうと火を吐くごとく紅葉を飛ばす

      (レポート)
 芽ぶき、新緑、夏の緑、紅葉とときに樹はその持つ力を現す。造形の美をきわめつくし樹は紅葉を散らす。その光景に噴火する火山を見ている。上の句は、「おうおう」と詠われているこの歌の力強い調べの前奏曲のようだ。「飛ばす」は樹の底力を詠っているのであろう。(崎尾)

           
      (発言)
★64頁に「紅葉を振り放てずに苦しめる樹に馬乗りになってやりたり」という歌があってこの歌
 と逆の表現になっている。紅葉を飛ばす凄まじい樹と作者が一体になっておうおうと泣き叫んで
 いるような感じ。(藤本)
★力強さ、ダイナミックな感じ、高揚感は感じますが、「おうおうと」というのは泣き叫んでいる
 のではなく雄叫びみたいなものかなあと思いますが。渡辺さんには紅葉に独特な思いがあるよう
 ですね。乳飲み子の時に母に抱かれて紅葉を見ていた、とか、廃棄物処理場で行き場をなくし
 て紅葉が舞ってるというような歌もあったし。(鹿取)

*紅葉の歌、正確には次のとおり
どの窓もどの窓も紅葉であるときに赤子のわれは抱かれていたり
       『寒気氾濫』
一生を賭けて紅葉が飛びてゆく廃棄物処理場の秋天
コメント
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