かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 155

2022-10-30 15:09:26 | 短歌の鑑賞
  2022年度版 渡辺松男研究2の20・21(2019年3月実施)
     Ⅲ〈薬罐〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P99~
     参加者:泉真帆、岡東和子、T・S、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆   司会と記録:鹿取未放


155 茎あかきほうれんそうを抱えもち祖父の顎にはコーカサスのひげ

       (レポート)
 茎の赤いほうれん草、というのが懐かしい。いかにも日をあびて育ち、土から収穫した肉厚のほうれん草のようだ。このごろスーパーで売られているほうれん草は土に育っていないものもあるらしく、ひ弱で、茎の根のほうが赤いものはあまり見当たらない。ひげをたくわえた祖父の、大地にたつ姿が想起される。(真帆) 


 抱え持っているのだから、この立派なほうれん草は自宅で食べる為に収穫してきたものだろうか。ここでコーカサスがどういう効果をもっているかよく分からないのだが、濃いあごひげを生やしたたくましい祖父像が浮かんでくる。
 ところで、コーカサスはプリニウスの『博物誌』には「白い雲」という語源だと出ているそうだ。現在、コーカサスと呼ばれるのはカスピ海と黒海に挟まれた、ジョージア、アゼルバイジャン、アルメニアなど旧ソ連から独立した国々で、国土は山岳地帯が多く、たくさんの民族が住んでいるという。この歌のコーカサスは白い雲が似合いそうな農業国のイメージだろうか。

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