かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 75 スペイン②

2024-08-10 10:03:50 | 短歌の鑑賞
 
 2024年度版 馬場あき子の外国詠9(2008年6月実施)
    【西班牙 2 西班牙の青】『青い夜のことば』(1999年刊)P52~
     参加者:N・I、M・S、崎尾廣子、T・S、藤本満須子、
       T・H、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:藤本満須子 まとめ:鹿取未放

  ※この項、『戦国乱世から太平の世へ』(シリーズ日本近世史①藤井譲治)・
   『ザビエルとヤジロウの旅』(大住広人)・講談社『日本全史』等を参照
   した。


75 いすぱあにあ ーーはるかなるものを呼ぶときの葡萄の香り薄雲の肌
   (「いすぱあにあ」と「はるかなる」の間は二マス分の実線です)

    (レポート)
 Hispania いすぱあにあ:南ヨーロッパイベリア半島の大部分を占める立憲君主国。15世紀末に統一王国が成立して栄え、長らく広大な植民地を持った。日本との修交は安土桃山時代に遡る(スペインの大航海時代、カソリックの布教と侵略、征服、コロンブス)
 「いすぱあにあ」と声に出して読んでみる作者、広大な自然の中の葡萄の香りとそこにくらす人々の肌の色を薄雲のような肌と表現した。ひらがな表記と実線を使うことによって2句以下の言葉を呼び出し何とも言えない甘く哀しい感興を呼び起こしているうた。スペインではなく「いすぱあにあ」とうたったところにこの歌の生命を感じる。(藤本)


      (当日発言)
★乾燥した大地と空の色(藤本)

  
      (まとめ)
 ザビエルが日本に来て伝えたものに、ガラス・めがね・ニット生地などとともにワインがあるそうだ。前の歌の鑑賞で「日本にはワインが無いので米のお酒を飲んでいる」という意味のザビエルの手紙を紹介したが、ザビエルにとっては葡萄から作るワインはキリストと切り離しては考えられない大切このうえない飲み物だったのだろう。ここでも「いすぱあにあ」と葡萄の香りは切り離せないものとして想われている。「薄雲の肌」は空にうっすらと浮く雲であると同時に、うすい皮を張った透き通る葡萄を思わせる壊れやすく繊細な比喩で、あこがれのスペインを象徴するものであろう。(鹿取)

コメント
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