かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 308

2024-08-26 08:24:40 | 短歌の鑑賞
  2024年度版 渡辺松男研究37(2016年4月実施)
    【垂直の金】『寒気氾濫』(1997年)124頁~
     参加者:S・I、泉真帆、M・S、鈴木良明、
         曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放

308 いたずらにからだを張りてしまいたる柘榴が口をあけて実れり

     (当日発言)
★童話で腹が裂けてしまった蛙の話がありましたが、それを思い出しました。いたずら
 に体を張ったりしない方がよいと。(慧子)
★私には柘榴って非常にグロテスクなイメージがあります。それが実っている状態。人
 間でしょうか?(S・I)
★無様ながら、それが世界に適応している形という。(慧子)
★仕事で成功しているんだと思います。(M・S)
★ふつう柘榴って口開けてはらわたを出してとか悲惨な感じですよね。それを体を張
 るという。それは成功したかしないかではなくて、ただ口を開けて実がなっている
 よという。(鈴木)
★ユーモラスに歌っていますよね。この歌は社会的な成功とか失敗とかは関係なくて、
 おまえ頑張っちゃたねって。滑稽だけど一生懸命で楽しい姿。(鹿取)
★私は、おいしい実りを得る為には体を張らないとダメだよと教えている歌と思いま
 す。(M・S)
★歌の解釈は個人の自由ですけど、歌は倫理とか教訓ではないので。まあ、啓蒙と勘違
 いして歌作っ ている人もいるかもしれませんが、松男さんの歌は倫理とか教訓とは
 無関係です。(鹿取)


    (レポート)
(解釈)無用に体を張って頑張ってしまった柘榴なのだろう。ぱっくりと口をあけて、実っている。
(鑑賞)上の句は、職場で精魂つかい尽くした作者とも、治療で苦しむ作者ともとれる。口を開けた放心状態でいながら、木に実っているのが切ない。(真帆)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする