2024年度版 馬場あき子旅の歌47(2012年1月実施)
【アルプスの兎】『太鼓の空間』(2008年刊)170頁~
参加者:N・I、K・I、井上久美子、崎尾廣子、鈴木良明、
T・S、曽我亮子、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:藤本満須子 司会とまとめ:鹿取 未放
343 にくげなく酔ひて足踏みうたふゆゑスイスの学生の群れに近づく
(レポート)
342番歌(スイスの夜の楽しき酔ひにまじらんと飲めば肩ふれて国境もなし)と同じく、異国での人との出会い。人恋しさ、開放感溢れる歌。飲んで歌ったり踊ったりしている「にくげな」き学生達のテーブルに近づいていって、自らその輪の中に入っている作者を想像する。「にくげなく」の初句が効いていて若さあふれる学生達を受け入れている作者がいる。どこを旅してもその土地の人々と親しみを込めて会話し、親近感を覚えている作者、「人間が好き」という作者の外国旅行での人々との出会いがじゅうぶんに詠われ、読者に伝わってくる歌だ。(藤本)
(当日意見)
★「にくげなく」は年上の人間からの見方。(曽我)
★作者を知らなくても年配の視線であることが分かる。(藤本)
★でも、可愛いというと歌はつまらなくなる。(鈴木)
★「にくげなく」は感覚として意味が分かりますが、辞書には無い詞です。古語辞典を引くと「にくげ なり」という形容動詞はありますが、「にくげなく」だと形容詞としての活用だから、文法的には間違いといえるのかな。憎らしい、醜いを打ち消している言葉ととっておきます。好もしい学生の群に交わりたくて自分から近づいている。たぶん、店全体が盛り上がっているのでしょうね。(鹿取)