2025年度版 馬場あき子の外国詠48(2012年2月実施)
【アルプスの兎】『太鼓の空間』(2008年刊)173頁
参加者:N・I、井上久美子、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、
渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部 慧子 司会とまとめ:鹿取 未放
347 乾燥トマト湯に戻しをり秋は来て想ふアルプスの村の家刀自
(当日意見)
★これは旅行から帰った歌。肉体的、感性で読まないと自分との関わりが出ない。(鈴木)
★土産に買ってきた乾燥トマトをお湯に戻しているところ。つましく工夫して家事を切り盛りしていたアルプスの村の「家刀自」のことを思い出している。ちなみに「刀自」は万葉仮名だそうだが、「戸主」の約で、家事を司る女性のことと辞書にある。(鹿取)
★「家刀自」の語がいきている歌ですね。(一同)
348 風疾(はや)きビルの谷間を行くときをアルプスの兎低く啼く声
(当日意見)
★ここは帰国して都会の殺伐としたビルの谷間を歩いている時、そのビル風をアルプスの兎が鳴いているようだと感じたのだろう。旅の途中、アルプスの兎の鳴き声を聞いたかどうかは不明だが、ビル風の音を聞きながら、アルプスの兎が鳴いたらこんな哀しい声ではなかろうかと想像しているのかもしれない。歴史について、人間についてスイスで様々な苦を見てきたとは言え、風景自体は夢のように美しかったスイスの旅、ここでは都会に戻ってきた現実の苦い感慨だろう。(鹿取)
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