2025年度版 渡辺松男研究46(2017年2月実施)
『寒気氾濫』(1997年刊)【冬桜】P154~
参加者:泉真帆、M・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:①曽我 亮子 ②渡部 慧子
司会と記録:鹿取 未放
380 絶叫をだれにも聞いてもらえずにビールの瓶の中にいる男
(レポート①)
声の限り大声で叫んでいるのに誰にも相手にしてもらえずビール瓶の中に隠れるしかないあわれな私です…底なしの悲しみが歌われている。(曽我)
(レポート②)
ビール瓶に映りこんでいるであろうを瓶の中にいる男とすることで想像の域が広くなる。生きている場はつづまり瓶の中しかなかったのか。井の中の蛙状態のような人物像を思ってみたりもする。いずれにせよいびつな状態の男の絶叫がビール瓶の中にむなしく響いている。ムンクの叫びを思う。 (慧子)
(当日発言)
★ビール瓶の中にいるのは作者だと思います。ぶくぶくとアワが上がってくるので、みんながいろいろぶつぶつとしゃべっている中で自分は何も言えない、そんな感じ。でも、このビール飲んだらまずそうですね(一同、笑い)(真帆)
★宴会の席にいるんだけど、どうも自分は分かって貰えない、そういう違和感や苛立ちや孤独感をこういうふうに歌っているのかな。あんまり理屈で考えるとつまらないので、ビール瓶の中で絶叫している小さな男の図を漫画チックに思い浮かべています。滑稽だけど哀れですよね。慧子さんのいう「井の中の蛙状態」というのは、ちょっと意味合いが違うと思います。(鹿取)
★ビール瓶の中にいると外からは自分は見えないけれど、外の人々の心が見えているんじゃないでしょうか。だからすごく面白いところに隠れたなと。(M・S)