かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 409

2025-02-26 15:00:27 | 短歌の鑑賞

  2025年度版 渡辺松男研究49(2017年5月実施)
     『寒気氾濫』(1997年)【睫はうごく】P164~
       参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、A・Y、渡部慧子、鹿取未放
          レポーター:泉 真帆               司会と記録:鹿取未放 
 

409 赤崩(く)えにまひるのひびく光さし山の顫(ふる)えはひそかになさる 

              (レポート)
 南アルプスの大きな崩壊斜面、赤崩(あかくずれ)をみつつ作者はいま山のこころになっている。遠目には聳える山であるが、白昼をくずれつづける震動がある。偉容を誇る山の内がわに秘かに震えるこころがあるように感じる。(真帆)


              (当日発言)
★「まひるのひびく光さし」のところ、どこにどうかかっていると読まれましたか?(鹿取)
★ここのところは随分入れ替えがしてあるのかなと思ったところです。「まひるの」は野原の野かとも思ったのです。後の方に光りが射す歌が次々と出てくるので、この歌も時間が今真昼であって、その光りが射していて、そんなふうに漠然と取りました。(真帆)
★「光さし」は「ひそかになさる」に掛かるのでしょうかね。「まひるの光」の形容として、その光りはひびくようだというのでしょうか。(鹿取)
★書いてあるとおりに読むとひびくような光線だったということですよね。(真帆)
★そうですね、光りって波動ですけど、それが音を出しているようだと。山は崩れ続けていて、ふるえているような感じなんですね。そのふるえが投影して山に射す光りまでがひびくように感じられているのではないでしょうか。僅かずつ崩れ続けている山に対する痛ましさでしょうか。(鹿取)
★「なさる」というのは尊敬ですか?(A・Y)
★いや、尊敬ではないです。「なす」+「る」で、「る」は自発じゃないですか。自然にそんなふうに進行しているって。(鹿取)

 

コメント
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