かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 161

2021-02-14 18:14:37 | 短歌の鑑賞
 ブログ版 渡辺松男研究 2014年9月 
   【夢解き師】『寒気氾濫』(1997年)67頁~
   参加者:石井彩子、泉可奈、泉真帆、崎尾廣子、鈴木良明、
       曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
                       

161 はるかなるあたたかき闇夢見ればうぼんうぼんと海亀が鳴く

         (レポート)
距離か年月なのかずっとずっと遠くにあるあたたかな闇。その闇を夢見るわたしの耳にいま「うぼんうぼん」と海亀の鳴く声が届いているよ。「うぼんうぼん」が海中で鳴く声のように響く。上の句にあたたかな冥界を思う。作者が冥界を肯定的に詠っているように感じた。(真帆)


       (意見)
★158番歌〈亀鳴くと君は目を閉ずうつうつととじこめられているものは鳴け〉に続いて亀が
 鳴く歌です。こちらは海亀ですけど。こちらの「はるかなるあたたかき闇」は冥界なのでしょう
 か?(鹿取)
★「はるかなるあたたかき闇」が全く分からなかったので、真帆さんの解釈を見て、そうか冥界と
 も考えられるなあと思いました。(崎尾)
★私は単純に南方のどこかかと思いました。(鈴木)
★南方の世界だと下の句がぐっと生きてきますよね。(崎尾)
★私はまじめに考え過ぎたのかも。皆さんがおっしゃるようにもっと楽しい世界かもしれないです
 ね。(真帆)
★やっぱり死後の世界なんじゃないですか。(曽我)
★私は帰って行きたい場所のように思いました。(石井)
★「うぼんうぼん」というこのオノマトペが凄いですね。(曽我) 
★松男さんじゃないと出てこないオノマトペですよね。(鹿取)
★海亀がこういった音で鳴くことはないんだけど、音的に惹かれますね。(鈴木)
★158番歌の「君は目を閉ず」から考えて「はるかなるあたたかき闇」を私は女体のようにも感
 じましたし、母の胎内のようにも思いました。暖かくて安心できる闇への回帰願望ですね。もち
 ろん、死後の平安のようにとることもできますが。(鹿取)
★いろんな解釈ができるのが、松男さんの歌のよいところですよね。(鈴木)
★「夢見れば」はどう解釈すればいいんですか?夢を見ておれば、ですか?(真帆)
★憧れじゃないですか。(鹿取)
★憧れですか。まあ、実際の夢の中で亀が鳴いているのも変かな。(鈴木)
★もう戻れないかもしれないけど暖かい闇に憧れる。158番歌より安堵感を感じます。(鹿取)
★よく歌会なんかで、この言葉が唐突に出てきているとか言われるけど、松男さんの歌は唐突のよ
 うで唐突ではない。(真帆)

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