かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 415

2025-03-04 09:07:35 | 短歌の鑑賞

  2025年度版 渡辺松男研究49(2017年5月実施)
     『寒気氾濫』(1997年)【睫はうごく】P164~
      参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、A・Y、渡部慧子、鹿取未放
            レポーター:泉 真帆               司会と記録:鹿取未放 
 

415 耳たぶのうしろのがわを冷やしくるひかりありけり橋わたるとき

              (レポート)
 結句の「橋わたるとき」が一首にリアリティーを与えている。作者の髪型は耳やうなじが出るような短い髪型なのだろう。高所が嫌いなのだろうか。いや、そんな単純な歌では無いだろう。こちら側からあちら側へ作者は渡ろうとしている。それが過去へ行くのか未来へ行くのか、明暗か、ただ茫洋と平たいのか。しかし怖い一首である。(真帆)
 

             (当日意見)
★ひかりなのに冷やし来るんですね。橋を渡るって哲学的な意味合いがあるから松男さんたくさん橋の歌歌っていますが。此岸から彼岸に渡る橋とか……、そう思うと怖いですね。(鹿取)
★前の歌で鹿取さんが自愛と言うことを言われましたが、葛藤いろいろ含めて自分を受け入れたいと思っているのかなと思いました。(A・Y)
★橋って下が空洞で隠れるところがないんですよね。だから橋を渡るときには不安がある。それをあからさまに言わないで「耳たぶのうしろのがわを冷やしくる」ということで言っているのではないでしょうか。(慧子) 
 ★橋を渡るとは何かを始める、今とは違ったところへ行く事じゃないかなと思いまし た。その時には恐怖のようなものがあるのかなと。(T・S)

 


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