かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞  108

2020-12-20 21:11:25 | 短歌の鑑賞
   ブログ版清見糺の短歌鑑賞 17  酔いどれ船 
                           鎌倉なぎさの会   鹿取 未放
           
108 左海正美にわれもの申す島にして酒におぼるも海におぼるな
               「かりん」97年6月号

 歌友、左海正美が八丈島に(司書として)赴任するのを見送る歌であることが一連を読むと分かる。八丈島は昔から流人の島で、当然ながら周囲は海に囲まれている。この歌は「万葉集」の大伴家持の「痩せる人をわらふ歌二首」が本歌である。

  石麿(いはまろ)にわれ物申す夏痩せによしといふものそ鰻(むなぎ)とりめせ
  痩す痩すも生けらば在らむをはたやはた鰻をとると河に流るな

 一首目は石麿という友人に夏痩せにいいから鰻をとって食べるといいよと言い、二首目では、がりがりに痩せこけていても生きているだけましだが、鰻をとろうとしてうっかり河に流されたりするなよ、とからかっている。もちろんからかいは気安い仲ゆえのものである。清見のこの歌は家持の「われ物申す」と「河に流るな」を合成させて、大酒飲みの左海に対して酒におぼれても海におぼれるなよ、海に溺れたら死んでしまうぞ、と言っているのだ。からかいつつも友に対する親しみや暖かい気分が伝わってくる。
 作者はここで「芸」を見せているわけで芸を分かってあげないと気の毒だろう。


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