かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 234

2024-04-03 10:42:06 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究28(15年6月実施)
   【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)97頁~
   参加者:S・I、泉真帆、M・K、崎尾廣子、M・S、鈴木良明、
       曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:曽我 亮子 司会と記録:鹿取 未放


234 山よ笑え 若葉に眩む朝礼のおのこらにみな睾丸が垂る

     (レポート)
 山よ、笑いなさい、若葉の力強い生命力に目がくらんで朝礼の男の子等の睾丸―みなしょんぼりと垂れ下がっている様子を(曽我)
 ・山笑ふ=俳句の季語=春。山の木々が芽吹き花が咲き色づいていく様子を、ほがら
      か に笑う人に例えて「山笑ふ」と言い表す。語源は「春淡冶にして笑ふ
      が如く (北宋の画家・郭煕の言葉) 『季節のことば』(自由国民社)


      (当日意見)
★しょんぼりと垂れているわけではないと思いますが。思春期前の少年達なんですね、
 若葉でいきいきと輝いている山を背景に、朝礼に並ばされている少年達がいる。若葉
 の照り返しで眩しくてくらくらとしている少年達にはみんな睾丸が垂れている。何か
 かわいらしい感じがしますけど、思春期ちょっと前あたりの少年達の恥ずかしさ、滑
 稽さも見ているのかな。「山よ笑え」はおかしいから笑いなさいと言うのではなく
 て、引用してくれている「山笑ふ」という季語の命令形ですね。山よ、もっともっ
 と力強く芽吹け、生命力を全開せよって。(鹿取) 
★「若葉に眩む」で全体が肯定的な輝かしい感じになっていると思います。さわさわと
 した中に、男の子達がいっちょうまえに睾丸を付けていて、楽しい感じ。(真帆)
★「眩む」というのが曽我さんの意見の裏付けになると思います。眠たいわけですよ、
 だから睾丸もしょんぼりしている。しかし山よ笑えは季語ですけど、滑稽と言えば滑
 稽ですよね、服を透明にしてみたらみんな睾丸が垂れているんだから。アパートを縦
 に割って透明にしてみているような視点です。人間のそれぞれの行為って滑稽じゃな
 いですか。そんな舞台の書き割りを見ているような滑稽さがある。(鈴木)
★山にはもっともっと萌えて欲しいと願っている。そして男の子達のこれからの活躍を
 秘めているよと言っていると思いました。(M・S)
★未来を包含しているような歌で、いい歌だと思います。子ども達にエールを送ってい
 るようで。(S・I)
★睾丸が「ある」ではなく「垂る」がいいですね。(崎尾)

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