かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  284

2021-08-15 17:26:16 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究35(16年2月実施)
    【ポケットベル】『寒気氾濫』(1997年)118頁~
     参加者:石井彩子、泉真帆、M・S、曽我亮子、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:石井 彩子 司会と記録:鹿取 未放


284 蛍光灯多すぎるほど灯しいて謀反をゆるすことなき庁舎

      (レポート)
 煌々と蛍光灯が燈っていると、微妙な陰影が排除され、すべての事物が余すところなく光に晒される。白日のもとに晒されるとはこのことだ。そのような庁舎で物事を均一で均等に扱うことに慣らされてしまった公務員には内部告発や謀反など及びもつかない。
日本の夜は明るすぎる、と谷崎潤一郎が「陰翳礼讃」で嘆いたのは昭和8年だった。光と闇が綾なす陰翳の微妙な濃淡のゆらめき、ひかりの戯れはすべの物を詩化する、が、公務員にはそのような詩性は不用である、煌々と蛍光灯が燈る下で働いている姿は、いかにも誠実な公僕というイメージを与える。(石井)


      (当日意見)
★蛍光灯を多すぎるほど灯すって、エコだとか資源節約とかは一切考えずにどこもかしこも
 明るく灯していることで監視されているような状況下で仕事をされていて、謀反をしよう
 と思ってもで きないようなことを言っている。(真帆)
★松男さん、詩人としての感性を持った人だから、いわゆるバリバリ働く公務員ではなかっ
 たと思うし、もっとひろやかな心を持っていて…だから庁舎での居心地はあまりよくなか
 ったのではないか。そういう違和感の表明の歌だと思います。(鹿取)


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