2025年度版 渡辺松男研究47(2017年3月実施)
『寒気氾濫』(1997年)【睫はうごく】P157
参加者:泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、
A・Y、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:鈴木 良明 司会と記録:鹿取 未放
397 細き君おともなく来てありつるを鮠(はや)のごとしとおもう夕映え
(レポート)
鮠は細長く流線型をした小魚。夕映えのなかを音もなく現れるスリムな君は、まるでこの鮠のようにすばしっこいひとだと思う。現実に目にしているのではなく、夕映えの中に幻視のように立ち現れるのかもしれない。(鈴木)
(当日発言)
★「女の子は鮠…」って歌がどこかにありましたよね。(鹿取)
★私はすばしっこいとは思わなくて、鮠のように細い、夕映えのように綺麗な人。(曽我)
★おともなくだからお上品な人。それを鮠のようだと例えている。(M・S)
★枕草紙の「すさまじきもの」に「ありつる文」って出てきて、それは先ほど自分が使いに持たせた手紙なんだけど、留守だったり物忌みだったりして持ち帰ってきたって場面があるのですが、「さきほどのあの手紙」ってすごくリアルで、「ありつる」って完了だから、さっきまで傍らにいたというまざまざと気配が残っている感じと読みました。鮠のようだったのは傍にいた時のほっそりしたみずみずしい感じの女性の余韻を美しい夕映えのなかで味わっている場面。(鹿取)
★じゃあ、実際いたんですか。(鈴木)
★ええ、歌の上ではそういう設定ですね。君という人があっという間に来て去っていく歌もありましたね。(鹿取)
★幻視かもしれないというのは、それでも残りますね。(鈴木)
(後日意見)
当日の鹿取発言の「女の子は鮠…」は、第2歌集『泡宇宙の蛙』にある歌だった。「あっという間に来て去っていく歌」という発言の歌は既に鑑賞した。(鹿取)
おんなのこは鮠(はや)おとこのこは鯰鯰のゆめはどきどきと鮠 『泡宇宙の蛙』
夏の日の黄揚羽・電話そして君 突然に来て簡単に去る 『寒気氾濫』
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