かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 62

2023-06-19 14:10:27 | 短歌の鑑賞
  2023年版渡辺松男研究⑧(13年9月)
     【からーん】『寒気氾濫』(1997年)30頁~
     参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、高村典子、渡部慧子、鹿取未放
     司会と記録:鹿取 未放


62 電車から黒く見られているならんかがやく雪の野を行くわれは

      (当日意見)
★まあこういう光景は、例えば作者が出勤途中で雪が降った朝なんか、駅へ向かって歩
 いている姿を客観的にこう電車から見られているのを詠んだのかな。こういったもの
 って映像で見たことがあるような気がする。映画かなんかで犯人が逃げていくとき
 (笑)。実にありふれた分かる歌だし、だからそんなに深く詠んだのではないのかな
 とこの白と黒のコントラストが鮮やかですよね。それが面白さなのかな。でも物語的
 という感じもするし。(鈴木)
★真っ白な雪の原に人間がいたら、当然黒く見えるし。でもそれだけじゃない何かここ
 から始まっていきそうな物語性も感じる。写実のようでいて、異次元空間みたいな気
 もするし、死後の世界のような気もする。他の歌集だったかもしれないけど、人が死
 んで野の向こうの樹にひかりが集まって来るという意味の歌もあったし。(鹿取)
★うん、次の歌「白光にめつむりている白き猫ほあほあと死はふくらみてくる」はまた
 切れているし。これだけだとちょっとどう膨らましていくかが出てこなくて。(鈴木)
★初出の並び順はどうだったのかなあ。意識の繋がりみたいなものを、ちょっと調べて
 みたいですね。(鹿取)
★この歌は好き。渡辺さんは自然というものをとても好きだった。黒く見られているの
 は悲しいとかそういうことではなくて、雪の野を行くこと自体が楽しい。むしろいつ
 も追いつめられる心みたいなものが現実には多いけど、そこからほどかれる方向に行
 っているように思えて、そうすると安心できる、すごく大切な世界の感じがする。
   (高村)
★面白いですね、高村さんの今の意見は。私もこの歌大好きです。(鹿取)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 渡辺松男『寒気氾濫』の一首... | トップ | 渡辺松男『寒気氾濫』の一首... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事