かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 122

2020-11-24 17:14:56 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究14(14年4月)まとめ 『寒気氾濫』(1997年)50頁~
  参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、N・F、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
  レポーター:鈴木良明 司会と記録:鹿取 未放
             

122  雪の樹を仰ぎおるとき口あけてみだらなりわがまっ赤な舌は

       (レポート)
 物を見上げる時、人はどうしても口もとが緩んでしまい、口から舌、喉奥にかけて大気に晒される。雪の樹を見上げた時に、作者は一瞬我に返って、その姿が意識にのぼり、清浄な真っ白な雪に対して、自らのまっ赤な舌が強く意識されたのだ。自然の中にあって、自然の一部である動物にすぎない人間の、「みだらな」存在を強く意識したのである。(鈴木)


         (発言)      
★本人のことだけならともかく人間みながみなみだらな存在だと言って欲しくない。(曽我)
★いや、生きているものはみんなみだらなんでしょう。サルトルの口のことをやはり赤いと渡辺さ
 んがうたっていましたが、私はこの通りと思います。(鹿取)
★鹿取さんに聞きたいけど、これは渡辺さんのエロスとしての見方なの?(N・F)
★ここのみだらというのはエロスとは違うものだと思います。生きるものは動物でも植物
 でも他者を侵して生き得ている訳でしょう、原罪というような言い方もありますけど。
 ここでいうみだらって、そういうものだと私は読んでいますが。(鹿取)
★滅びた狼の目が真っ赤だという歌もありましたが、生きようとする欲望が(普通日常的
 にはそれを意識していないでしょうけど)欲望として赤という色と結びつくのではない
 ですか。「生きる意志」のようなものが赤。(鹿取)
★雪が白で舌が赤、赤と白の対比。(N・F)
★色の対比は確かにあるけど、それが狙いではなくて、主眼は雪の清浄さに対して生きる
 ものが持っている赤に象徴されるみだらさかなと。(鹿取)
★このあたりの歌はとても素直ですよね。(藤本)

 ※発言で鹿取が述べた歌は次の通り。
  無際なる体内の靄吐き出だす赭(あか)きジャン=ポール・サルトルの口
                『寒気氾濫』
狼は滅びたりけり山駆けるまっ赤なる目のようなゆめゆめ
       『泡宇宙の蛙』(1999年)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 渡辺松男の一首鑑賞 121 | トップ | 渡辺松男の一首鑑賞 123 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事