かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 154

2023-12-09 11:27:43 | 短歌の鑑賞
 2023年版 渡辺松男研究 19  2014年9月 
   【夢解き師】『寒気氾濫』(1997年)67頁~
   参加者:S・I、泉可奈、泉真帆、崎尾廣子、鈴木良明、
       曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
                       

154 全身がねずみのように雨に濡れもうれつに隠れたき昼下り 

      (レポート)
 ある昼下がりのこと。折からの雨に全身がずぶ濡れになってしまった私は、濡れ鼠でいることにいたたまれず、どこかへ隠れたいと猛烈に思っている。
 朝夕とちがい「昼下がり」は、一日のなかで人々の意識がもっとも社会的に常識的になる時間帯だろう。そんな場に、濡れ鼠になってしまった「われ」は居る。ひとり風変わりな寂しさといったら無いだろう。一首には、「われ」が一体何から「隠れたい」のかが書かれていないが、私は常識を持った人々の目から隠れたいのではないかと思った。悲壮感へ突き進むような詠いようではなく、幻想的な余情が魅力的だと思った。(真帆)


     (当日意見)
★この作者、ファンタジーの世界を作りながら新しいものを作っているという気がす
 る。ただ、「隠れたき」に拘ったんですね。何から隠れたいのか?だから社会との関
 わりを考えたんですけど。(真帆) 
★何か少し違うような気がする。常識にまみれた世界からむしろ逃げたいのではない
 か。この一連、ねずみ、犀、亀、牛、海亀、河豚などと次々に生き物が登場して、む
 しろ人間のみでなくそれらの生き物と繋がる世界に逃げたいのかもしれないと思わ
 せられる。(鹿取)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 馬場あき子の外国詠 396... | トップ | 渡辺松男『寒気氾濫』の一首... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事