かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 40

2023-05-08 10:00:16 | 短歌の鑑賞
 2023年版渡辺松男研究5(13年5月実施)
    『寒気氾濫』(1997年)橋として
     参加者:崎尾廣子、鈴木良明、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター  鈴木良明 まとめ  鹿取 未放


40 表層を皮剥けばまた表層の表層だけのキャベツが重い

      (レポート)
 キャベツも葱とおなじように、芯がない。表層を剥けば表層があらわれて、剥けども剥けども表層がでてくる。結局、たどり着いたところには何もない。しかし、何もない、表層だけのキャベツがずしりと重いのである。不思議であるが、実感である。  (鈴木)


    (当日意見)
★キャベツの歌は前にも作っていた。この歌は単に事実を言っている。(鈴木)
★前の歌(組織へとひっそりと沈みはじめしがぬらぬらとやがて見えなくなりぬ)
 から読むと、組織べったりになった人間の、どこまで剥いても中身がない、誰と
 でも取り替えがきく気味悪さを言っている。そういう人間なのにずっしりとした
 重みとして自分の心にはのしかかってくる。あるいは、組織全体としても重いの
 かもしれない。人間性を失った組織体に対して違和感とか嫌な感じを歌っている。
 前の歌の霞が関の政治家も同じかも。ただキャベツを人間に例えているとかいう
 と歌の幅が狭くなって全体が理屈になってつまらない。あくまでキャベツの歌な
 んだけど、こんなふうな揶揄としても読めるよね、ということ。(鹿取) 

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